オリエント工業40周年記念展「今と昔の愛人形」が渋谷のアツコバルーで5月20日~6月11日までの期間限定で開催されています。今回の記事では、こちらの企画展をご紹介していきます。
昨年ヴァニラ画廊で開催された「人造乙女美術館」も記事としてのかなりの反響がありましたが、今回ご紹介する企画展も、すでに多くの来場者が訪れており、まだ開催から2週間しか経過していませんが、4,000名以上の方々がこちらの展示会に訪れているとのことです。しかも男女比率は4:6と、女性の方が多く訪れているというから驚きです。
中に入ると、まずラブドールの数々に圧倒されます。肌も綺麗で、訪れる女性の方々も「憧れ」を持って眺めていくと言います。
オリエント工業、40年の進化
オリエント工業40周年記念展「今と昔の愛人形」という名前の通り、今回の展示会では過去のラブドールから現在のものまでの進化を見ることができます。それでは古い順にまず4種類を紹介していきます。
こちらが展示されていた中では一番古いラブドール。目の開き方や顔のバランスに怖さを感じます。
続いて、少しだけ顔が穏やかになったもの。やはりまだどこか怖さを感じてしまいます。体のバランスも違和感があります。
ここからは、すでに不気味な印象はありません。顔の作りも人間と見間違うほど。しかし、完全に人間に寄せているというよりは、少しデフォルメされている印象もあります。
最新のものは非常に美しい仕上がりとなっています。顔のバランスから、肌の質感まで、細かいポイントに進化を感じます。
展示会ということで、アート寄りの展示も複数見られました。こちらは性玩具と一緒に飾られているラブドール。色味が鮮やかなため、卑猥な印象はありませんでした。
水槽の中に入っているラブドールの展示。こちらは展示スペースのテイストにあわせて特注されたディスプレイセットとのこと。
写真家の篠山紀信さんが撮影した「写真集」で使われたラブドールも2体セットで展示されていました。
とにかく、最近の作品からは「怖さ」を感じることは一切ありませんでした。
めったに見られない製造工程の写真の展示も
会場奥には、ラブドールの製造工程を示した写真や、顔が出来上がるまでの工程が展示されていました。以下の写真が顔を作る工程なのですが、工程を進むにつれて人間のようになっていく様子がわかります。単なるドールの制作ではなく、命を吹き込む職人たちの技術を感じることができます。
実際の工程はさらに細かいはず。これらのドールは全て職人さんたちの手作業で作られているといいます。
展示の中には、音声が出るものも
展示の中にあったバニーガールの衣装を着た作品は、音声が出るような仕組みになっていました。構造は当サイトの性質上あまり詳しくは書けないのですが、タッチセンサーのようなものを備えていて、音声と連動しているようでした。
音声といっても、音声合成をしている訳ではなく、ただMP3ファイルを再生しているといったものです。
オリエント工業の先に見る、不気味の谷のありか
しかし、例えばこのドールが音声合成で喋るとしたら、私たちはどのように感じるのでしょうか。違和感をなくすためには、まず口元を動かす必要があるでしょう。そしてその動かし方は非常にセンシティブで、例えば口の動きと音声のタイミングが連動していなければ、人間に似ている分、私たちはさらなる奇妙さを感じるのかもしれません。
さらに、オリエント工業のラブドールは、手足の関節を人間と同じような可動範囲で動かすことができます。もちろん今は自動ではないので人間が動かす必要がありますが、もしこれらが自律的に動くようになったらどのように感じるでしょうか。
不気味の谷という現象は、人間でないものが人間に近づきすぎると、とある段階で私たちが奇妙さや恐怖を感じるという現象です。
そして、その谷の深さや勾配は、「動くもの」か「動かないもの」かで違うといいます。動かない中での人間への近しさは、オリエント工業のそれは既に不気味の谷を超えていることでしょう。
しかし、これらが動き出したとき、そこで私たちは再び不気味の谷を体感するのかもしれません。