ヒューマノイドとフィジカルAIがテーマ「Humanoids Summit Tokyo」が開幕 基調講演は石黒教授「2050年のCybernetic Avatar社会」を語る

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ヒューマノイドロボットとフィジカルAI(Embodied AI / Physical AI)に特化した国際カンファレンス「Humanoids Summit Tokyo 2026」が5月28日に開幕した。このカンファレンスは米シリコンバレー発、2026年に初めてアジアに進出し、東京開催が実現しました。主催は米VCの ALM Ventures、日本開催はAIロボット協会(AIRoA)が支援している。

大阪大学の石黒浩教授が基調講演に登壇

基調講演には、大阪大学の石黒浩教授が登壇。自身そっくりのアンドロイド(ジェミノイド)も登場した。

石黒氏は「ロボット研究の目的は、人間を理解することにある」と説明した。また、日本の人口減少や高齢化を背景に、ヒューマノイドやアバターを活用した「Cybernetic Avatar(CA)社会」構想を提示。遠隔就労、医療、介護、障害者支援、グローバル労働ネットワークなど、フィジカルAIが支える未来像を描いた。

■「人間を理解するためにロボットを作る」

石黒氏は25年以上にわたり、「アンドロイドサイエンス」に取り組んできた。最終目的はロボットの開発ではなく「人間とは何か」を理解するため。講演では、「人間の脳には、人間を認識し、人間と対話するための機能がある。だから人間らしいロボットを作ることで、人間そのものを研究できる」と説明した。

また、自身そっくりのアンドロイドを紹介し、「アンドロイドも独自の経験を蓄積し始めている」と語った。会話履歴や周囲との関係性によって、人間とは別の“人格”や“経験”が形成され始めているという。

さらに、近年の大規模言語モデル(LLM)の進化にも言及。「ロボット研究で最も難しかったのは会話だったが、LLMによって人間らしい対話が大きく前進した」と説明。その上で、今後は“身体性(Embodiment)”が重要になるとの考えを示した。

■人口減少社会を「アバター」で支える

石黒氏は、日本社会が直面する人口減少と高齢化についても触れた。
講演では「Social Transformation Through Avatars」と題したスライドを提示。2050年に向けて労働人口が減少する一方、アバターによって高齢者や障害者の労働参加を拡張し、生産性を維持する構想を示した。
「アバターが高齢者の労働参加を支え、生産性を拡張する」という考え方だ。

また、日本は欧米のような大規模移民政策を取りにくい一方、ロボットやAIへの社会的受容性が高い点を、日本独自の強みとして挙げた。

■2050年の“Cybernetic Avatar社会”

講演では、日本のムーンショット型研究開発制度にも触れ、「2050年までに身体・脳・空間・時間の制約から解放された社会を実現する」という目標を紹介した。

石黒氏は、この未来社会を「Cybernetic Avatar(CA)社会」と表現。教育、医療、仕事、日常生活などをアバターで接続する未来像を描いた。

「Future Society in 2050」と題したスライドでは、高齢者や障害者を含め、誰もが自由に働き、学び、社会参加できる社会像を提示。遠隔操作型アバターを活用することで、通勤を最小化し、場所や身体的制約を超えた働き方が可能になると説明した。

また、「人間は身体を持つがゆえに差別を生み出している。しかしアバターは身体的制約を超え、多様性と包摂性のある社会を実現できる」と語った。

■まずは“CGアバター”から市場を作る

石黒氏は、いきなりヒューマノイドを社会へ大量導入するのではなく、まずCGアバターから市場を形成するべきだとの考えも示した。

講演では、「First, Open up the Market with CG Avatars」というスライドを提示。ECサイトや接客サービスなどでCGアバターを先行普及させ、その後、Physical Avatar(物理アバター/ヒューマノイド)へ発展させるというロードマップを説明した。

実際に、アバター接客や遠隔就労の事例映像も紹介。障害者がアバターを通じて接客業務へ参加するケースなどを取り上げた。

■遠隔医療、介護、危険作業へ

石黒氏は、比較的早期に実現可能な用途として、「介護アバター」「危険作業アバター」「Expert Avatar」なども紹介した。

介護分野では、ヒューマノイドが高齢者と対話しながら、複数のモバイルロボットを制御する構想を提示。

また、災害現場や危険工場での遠隔作業、クリーンルーム設備保守などへの応用も説明した。

さらに、医師がヒューマノイドアバターを通じて患者宅を訪問する遠隔医療構想も紹介。単純作業は徐々に自動化される一方、高度な判断を必要とする作業は、人間とヒューマノイドの協調によって進化すると語った。

■障害者も“身体制約”から解放される

講演では、重度障害者がヒューマノイドを遠隔操作し、社会参加する未来像も紹介された。スライドでは、障害者がヒューマノイドを操作して買い物や外出、調理、仕事などを行うイメージが示された。

石黒氏は、「アバターは身体の制約から人間を解放する」と説明。高齢者や障害者も、自由に社会参加できる未来社会への期待を語った。

■ “グローバル・アバターワークフォース”構想

さらに石黒氏は、時差を活用した「グローバル・アバターワークフォース構想」にも言及した。南米や欧州の人材が、日本の夜間業務を遠隔アバターで担うことで、国境を越えた新たな労働ネットワークを構築できると説明。

これは遠隔操作ロボットとしてだけでなく、“世界規模の労働インフラ”としてアバターを位置づける考え方とも言える。

■アンドロイドとの会話デモを披露

講演の最後には、石黒教授自身のアバター、アンドロイドと会話するデモも披露した。最新の技術では、生成AIを活用することで、高度な会話技術が実現できる。


石黒教授は、アンドロイドは「ロボットは人間を映す鏡だ」と語り、「技術が進化するほど、人間と機械の境界は曖昧になる」と説明。石黒氏は、来場者へ向けて「ぜひ私のアンドロイドとも会話してほしい」と呼びかけ、講演を締めくくった。

《神崎 洋治》

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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