中国のロボットメーカー Unitree Roboticsは、2026年5月に東京・高輪で開催された「Humanoids Summit Tokyo 2026」において、APEC DirectorのXiaoli Chen氏が登壇し、「Unitree Robotics: Scaling Agile and Intelligent Robots」と題して講演を行った。

四足歩行ロボットで世界的な知名度を獲得したUnitreeだが、現在はヒューマノイドロボットとエンボディードAI(身体性を持つAI:フィジカルAI)を成長戦略の中心に据えている。
講演では、ロボットの身体能力向上だけでなく、AIモデル、データ、量産体制、オープンソース戦略を統合した同社の将来像を紹介。さらに「ロボット版GPTモーメント」が今後2~5年で到来するとの見通しを示し、ヒューマノイド産業が次の巨大市場へ発展する可能性を語った。

■PC、スマホ、EVに続く次の巨大市場はロボット
講演冒頭でChen氏は、「1990年代はパソコン、2000年代はスマートフォン、2010年代はEVの時代だった。そして2020年代はインテリジェントロボティクスの時代になる」と語った。
Unitreeは2013年の試作機「XDog」からスタートし、「Laikago」などの四足歩行ロボット「Goシリーズ」を展開。その後、ヒューマノイドロボット「G1」(2024年)、さらに次世代機「R1」「H2」(ともに2025年)へと製品ラインアップを拡大している。

同社はロボット製品を、PCやスマートフォン、EVに続く次世代プラットフォームとして位置付けている。

Unitreeは「PC→スマートフォン→EV→インテリジェントロボティクス」という産業進化の流れを示した
■ロボット普及は危険が伴う作業から始まる
Chen氏はロボット市場を5段階のピラミッドで整理した。
最初に導入が進むのは、鉱山、災害対応、変電設備点検、原子力施設などの危険環境だ。続いて高温・高湿度環境などの過酷な現場、物流・工場、商業施設へと広がり、最後に家庭向けロボットへ到達すると予測する。
「特に若い世代は、危険で過酷な仕事を望まなくなっている。ロボットはそうした現場から普及していくだろう」と説明した。

■Embodied AIはまだ「Pre-GPT Era」
講演の中心テーマとなったのがEmbodied AI(エンボディードAI)だ。
Chen氏は現在の大規模言語モデル(LLM)について、「身体から切り離された知能」であると説明した。人間の知能は脳と身体の相互作用の中で進化してきた。一方でLLMは現実世界との接点を持たず、身体を持たないまま学習している。
同氏は、ヒューマノイドロボットこそがAIを現実世界へ接続する媒体になると語った。
さらにEmbodied AIはまだ「Pre-GPT Era」にあり、ChatGPT登場前の生成AIと同じ段階にあるとの見方を示した。

■本当の課題は『派手なデモ』ではなく実運用
一方でChen氏は、ヒューマノイド業界の現状についても冷静な分析を示した。
ヒューマノイド分野全体について、現在の課題として、
・注目を集めるデモと実際の生産性のギャップ
・実証実験(PoC)止まりで量産導入が進まないこと
・長時間にわたる複雑作業が難しいこと
の3点を挙げた。
同社が公開した、春節ガラで披露したカンフーパフォーマンスや大規模な群制御デモは技術力を示す上で重要だが、最終的に評価されるのは実際の現場でどれだけ作業を完遂できるかだと語った。

同社は2025~2026年を実証導入フェーズ、2027~2030年を本格商業化フェーズと位置付け、その先に一般労働市場への展開があると予測している。
■AI投資とオープンソースでEmbodied AIを加速
今回の講演で特に印象的だったのは、UnitreeがAIへの投資を強く打ち出していた点だ。身体的性能で驚きを与えながらも、軸足をエンボディードAIやフィジカルAIに置いていることに注目だ。

Unitreeは資金配分の優先順位として、総額4.2B(スライド表記)の調達資金のうち48.1%を「AI & Embodied Intelligence」に割り当てる方針を示した。(スライド表記では総額4.2Bとあるが、Unitreeに関する報道では42億元規模の資金調達がされており、本スライドも人民元ベースの金額を示している可能性が高い)
スライドでは「調達資金のほぼ半分をハードウェア製造ではなくAIモデルに配分することは、『ロボットを作る』から『ロボットの脳を作る』への転換を示す重要なシグナル」と説明しており、UnitreeがAIモデル開発を経営上の重点領域に位置付けていることがうかがえた。
Unitreeはこれまで四足歩行ロボットやヒューマノイドのハードウェア企業として知られてきた。しかし今回の説明では、資金配分の最大項目をAIに置き、『ロボット本体』から『ロボットの知能』(Embodied AI)へ重心を移しつつある姿勢を鮮明にしたように見える。
また、
・四足ロボット関連論文 440本以上
・ヒューマノイド関連論文 約300本
・世界200以上の研究機関
による研究エコシステムを形成しているという。
さらにテレオペレーションデータセットやVision-Language-Action(VLA)モデルも公開し、研究コミュニティ全体でEmbodied AIを加速させる戦略を進めている。
Chen氏は「データは燃料、モデルはエンジン」と表現し、「より多くのデータがより優れたモデルを生み、より優れたロボットがさらに多くのデータを生み出す」と説明した。
■ロボット版GPTモーメントに向けて
講演の締めくくりでChen氏は、今後2~5年の重要テーマとして、
・Brain-Body Co-evolution(脳と身体の共進化)
・Manufacturing Leap(量産革命)
・Edge Compute Decentralization(エッジコンピューティングの分散化)
の3つを挙げた。

これらが同時に進展することで、ロボット業界にも生成AIにおけるChatGPTのような転換点が訪れるという。
Unitreeが目指しているのは、ヒューマノイドメーカーだけでなく、データ、AIモデル、量産技術、オープンソースを統合した「Embodied AI時代のプラットフォーム」の構築であり、その先にロボット産業の爆発的成長を見据えている。
インタビュー記事へ続く(近日公開)







