NNVIDIA、フィジカルAI開発を次の段階へ 「Cosmos 3」「Cosmos 3H」「Cosmos Dreams」を発表 「SIGGRAPH 2026」基調講演

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NVIDIAは2026年7月19日~23日に米国LAで開催された「SIGGRAPH 2026」で、フィジカルAIの開発基盤「Cosmos」の最新技術を公開した。今回の発表では、ワールドモデルを統合した「Cosmos 3」、JetsonなどのAIエッジデバイス向けモデル「Cosmos 3H」、そしてクローズドループシミュレーションを実現する「Cosmos Dreams」などが披露され、フィジカルAI開発を次の段階へ進める構想が示された。

ロボットや自動運転AIが普及するうえで最大の課題は、学習に必要な膨大なデータをどのように集めるかという点だ。NVIDIAは、その課題を「世界そのものをAIが生成する」ことで解決しようとしている。

■「データを集める」から「世界を生成して学習する」時代へ

これまでロボットの頭脳となるAIは、遠隔操作(テレオペ)による実データやシミュレーション、あるいはインターネット上の動画などを学習データとして利用してきた。

しかし、実機データは収集コストが非常に高く、従来型シミュレーションでは人間が用意したシナリオしか再現できない。また一般の動画は人間視点で撮影されているため、ロボットが学習するには十分とは言えない。

NVIDIAは、この課題を根本から解決する技術として「ワールドファンデーションモデル(World Foundation Model:世界基盤モデル)」を位置付けている。これが「Cosmos」の本質だ。
AI自身がロボット視点で世界を生成できれば、現実世界でデータを収集する量を大幅に減らせるという考え方に基づいている。

■「Compute is Data」という発想の転換

今回の講演で繰り返し語られたキーワードが「Compute is Data(コンピュートはデータである)」という考え方だ。

これまでAI開発では、まず現実世界から大量のデータを集め、それを使ってAIを学習させてきた。一方「Cosmos」では、高性能GPUによる計算能力を使ってAI自身が多様な世界を生成し、その世界の中でロボットを学習させる。

つまり、「データを収集する」のではなく、「計算によってデータを生成する」という発想への転換である。NVIDIAは、この考え方こそが「フィジカルAI」時代の新しいデータエンジンになると説明した。

■Cosmosが提供する3つの価値

Cosmos Labのバイスプレジデント、ミン・ユー・リウ氏は、Cosmosが開発者へ提供する価値を3つ挙げた。

1つ目は「より良いデータ」。シミュレーションや世界生成によって大量の学習データを生み出す。

2つ目は「より良い環境」。1000種類のキッチンや1000種類の倉庫、さまざまな天候など、現実では用意できない多様な環境を仮想空間で再現できる。

そして3つ目は「より良い出発点」。事前学習済みのCosmosを利用することで、ゼロからAIモデルを開発する必要がなくなり、開発期間を大幅に短縮できる。

■ロボットも自動運転も共通の「世界モデル」で学習する

Cosmosは言語、画像、音声だけでなく、ロボットの「行動(Action)」もAIが理解・生成する対象として扱う点が特徴だ。

Cosmosでは、考えるAIと生成するAIを組み合わせた「Mixture of Transformers」を採用している。推論を行う自己回帰モデルと、画像や音声、行動を生成する拡散モデルが連携することで、現実世界をより自然に表現できる。
さらに、人型ロボット、自動運転車、人間視点の映像など異なる身体構造を共通の表現へ変換することで、ロボット間で知識を共有できる設計になっている。

■新発表(1) Jetsonでも動く「Cosmos 3H」

今回最も注目された新発表の一つが「Cosmos 3H」。
40億パラメータで構成されるこのモデルは、JetsonやRTX、DGX Sparkなどエッジデバイス上でリアルタイム動作することを目的として設計された。

デモでは、Jetsonに接続されたロボットアームがCosmos 3Hによってリアルタイムに制御される様子が披露された。

これまでクラウド側で実行していた推論をロボット本体で処理できるようになり、応答速度や運用コストの面で大きなメリットが期待される。

■新発表(2) 「Cosmos Dreams」で現実世界をシミュレーション

もう一つの注目技術が「Cosmos Dreams」だ。

これは1枚の画像を起点に、その先の世界を物理法則に従って連続的に生成するニューラルクローズドループシミュレータ技術。
自動運転では、現実ではめったに遭遇しない危険なシーンも大量に生成することで、経験を積むことができる。また、安全性の検証もできる。

さらに講演では、従来64台のGB300 GPUが必要だった処理が、RTX Pro 6000ワークステーションGPU一枚で動作するようになったことも紹介され、性能向上の大きさが示された。

■Cosmosは統合型ワールドモデルへ進化

Cosmosは2025年の初公開以来、「世界生成(Predict)」「世界理解(Reason)」「行動生成(Policy)」という3つの技術を段階的に発展させてきた。

今回発表されたCosmos 3では、これらを単一モデルへ統合。さらにCosmos 3.5ではマルチビュー対応など新たな機能も開発が進んでいるという。

講演では、Cosmosが生成・推論・ポリシーなど8つのベンチマークでトップ性能を達成したことや、オープンモデルやオープンデータセットなども提供されていることが紹介された。

■フィジカルAIは「学習方法」が変わる時代へ

Cosmos 3HやCosmos Dreamsは、その構想が研究段階から実用段階へ近づきつつあることを示す技術と言える。SIGGRAPH 2026では、その構想が研究段階から実用段階へ近づいていることが具体的に示された。
ロボット、物流、自動運転、産業機械など、フィジカルAIが活躍するさまざまな分野で、その影響は今後さらに広がっていきそうだ。

※本記事は、NVIDIAが公開したSIGGRAPH 2026基調講演動画の内容を基に編集部が構成・解説した。

■Inside NVIDIA Cosmos | SIGGRAPH 2026 Keynote


《神崎 洋治》

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神崎 洋治

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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