AIロボット住宅が「100年ぶりに家を変える」 MWが家事を支援する「MW bot」を初公開、2028年販売へ

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住宅そのものが人や環境を知覚し、AIが状況を判断し、ロボットが家事を行う。そんな「生きた家(Living Home)」を目指すMW(ムウ)が2026年9月10日、東京・豊洲でブランド発表会を開催し、次世代住宅「MW Living Home」の全体像を報道関係者向けに初公開した。

東京・豊洲で開催された「MW “Living Home” Launch」。会場にはMW botの開発・実験に使われているトレーラーハウスも公開された

MWは建築、ソフトウェア、ロボティクスを一体で開発し、「100年ぶりに家を再発明する」ことを掲げる。会場には開発&デモ用のトレーラーハウスを丸ごと持ち込み、天井を移動する住宅ロボット「MW bot」が家事を支援するデモも披露した。

住宅の内部を模したトレーラーハウスを会場に丸ごと持ち込み、デモが実施された。来場者はロボットが家事を支援する未来感を実感した。

なお、今回のデモはAIによる自律動作ではなく遠隔操縦で行われた。MWは2027年にロボットを搭載した実証住宅を完成させ、2028年の販売開始を目指す。

発表会には株式会社MW Co-Founder & CEOの成田修造氏が登壇。「家を再発明する」MWのコンセプトを力強く語った。

同社の顧問には早稲田大学の尾形哲也教授(一般社団法人AIロボット協会(AIRoA)理事長)が就任している。

■「100年ぶりに家を変える」MWが描くLiving Home

発表会に登壇したMW Co-Founder & CEOの成田修造氏は、住宅産業が大きな変革を経験したのは産業革命期まで遡るとの考えを示した。鉄やコンクリートなどによる建築の工業化が進み、現在の住宅の原型が形成された一方、その後約100年間、住宅の基本的なあり方には大きな変化が起きていないとする。

そこでMWが掲げるのが「100年ぶりに、家が変わる」というテーマだ。

現在のスマートホームでは、照明、エアコン、スマートロック、ロボット掃除機など個々のデバイスがネットワークにつながる。しかし成田氏は、これを「スマートデバイスの集合」と捉える。

MWでは住宅内のデバイスを独自のシステムに統合し、ユーザーが外出すれば鍵を閉め、照明やエアコンを停止するなど、複数の機器が連携して動作する住宅を目指す。操作系も統合し、住宅内の壁面に組み込んだタブレットやスマートフォンから家全体をコントロールする。

個別のスマートデバイスを導入するだけでなく、住宅全体をひとつのシステムとして統合する

■家に「知覚」「知性」「身体」を持たせる

その先にMWが描くのが「Living Home」、すなわち「生きた家」だ。
成田氏は、家を生命体のように機能させるために必要な要素として、「知覚」「知性」「身体」の3つを挙げた。

MWが考える「Living Home」の3要素。「知覚」「知性」「身体」を住宅に統合する

「知覚」では、MWが独自開発したセンサーモジュールを建築に組み込み、人の存在や住宅内の状態を取得する。独自の音声AIも開発し、どの部屋から誰が話しかけているのかといった情報を把握する。

「知性」は、得られた情報をもとにAIが状況を判断する部分だ。たとえばユーザーがいる場所を認識したうえで「照明を消して」と言えば、その場所に対応する照明を判断する。天気予報や室内の湿度などをもとに空調を制御するといった利用も想定している。

そして3つ目が「身体」。現在の住宅には、人間に代わって物を持ったり、運んだりする「手足」がない。そこでMWが開発しているのが住宅ロボット「MW bot」(ムウボット)だ。

ここで重要なのが、住宅を購入した時点で機能が固定されるのではなく、ソフトウェアの更新によって住宅そのものが進化していくという考え方だ。

成田氏はスマートフォンや自動車のOSを例に挙げ、MWの住宅でもソフトウェアをアップデートすることで、AIの機能やMW botができる家事を増やしていく構想を示した。

■建築そのものから作る 都市・海・山の3シリーズを展開

MWの特徴は、AIやロボットだけを既存住宅に追加するのではなく、建築そのものを自社の住宅プロダクトとして設計していることにもある。

成田氏は、便利な機能だけでは豊かな住環境にはならないとして、光や風、開放感、素材、デザインなど建築としての体験を重視すると説明した。
自動車メーカーが車体とソフトウェアを一体で開発し、スマートフォンメーカーがハードウェアとOSを一体で設計するのと同様に、住宅も建築から作る必要があるという考えだ。

MWでは現在、都市型の「Urban」、海辺の「Ocean」、山間部の「Mountain」という3シリーズを展開している。発表会では、目黒、福岡、横浜、恵比寿、代々木上原、成城学園、富津、軽井沢などで進めている住宅プロジェクトが紹介された。

MWは都市型の「Urban」、海辺の「Ocean」、山間部の「Mountain」の3シリーズを展開する

目黒のファーストモデルは販売開始時に1,000件を超える問い合わせがあり、買付申込を受領。横浜では3棟を展開し、発表時点ですでに完成した住宅の内覧も始まっている。

MWが進めている住宅プロジェクト。都市型を中心に20件が進行している

質疑応答で成田氏は、進行中のプロジェクトについて都市型16件、海型2件、山型2件の計20件と説明した。現在の住宅の販売価格は土地を含めて2億~4億円程度としている。

海辺「Ocean」の例
山間部の「Mountain」の例

■MW住宅にロボットが入るのはこれから

現在、完成して販売が始まっているMWの住宅には、MW botはまだ導入されていない。

質疑応答で成田氏は、完成した横浜の住宅について、ソフトウェア、センサー、音声AIなど「MW Intelligence」に相当する機能を組み込んだ住宅である一方、「ロボットはまだ入ってない」と明言した。

MW botを住宅に組み込むのは次の段階となる。MWは2027年、横浜市の日吉エリアに2階建てのロボット搭載住宅を建設し、実証を行う計画だ。そして2028年にはMW botを搭載した住宅の販売を目指している。

MWは2027年にMW botを組み込んだ住宅を公開し、2028年にはロボット搭載住宅の販売を目指す

■天井を移動する「MW bot」が家事を実演

発表会後半では、住宅ロボット「MW bot」の実機デモが公開された。

会場には、MWが実際にロボット開発・実験に使用している約30平方メートル、重量約12トンのトレーラーハウスが移設された。キッチンやランドリースペースなど実際の住宅を想定した空間が設けられている。

MW botの大きな特徴は、床を走行するのではなく、天井側に設置したレールを使って住宅内を移動することだ。
MW Head of AI / Roboticsの浅谷学嗣氏は、住宅では床面積が限られる一方、天井はデッドスペースになっていることに着目したと説明。人間とロボットの移動経路を分離できることも利点となる。

AIロボティクス開発リーダーの浅谷学嗣氏によるデモが公開された。トレーラーハウス内で公開された住宅ロボット「MW bot」は天井のレールを使って移動する

また、住宅とロボットを一体で設計できるため、ロボットが作業しやすい高さや動線をあらかじめ住宅側に設けることができる。汎用ヒューマノイドを既存住宅に持ち込むのとは異なり、ロボットに合わせて環境側も設計できることがMWのアプローチの特徴だ。

デモではまず、買い物から帰宅した場面を想定し、購入した商品を仕分けして棚や冷蔵庫にしまうタスクを披露した。

購入したものを仕分けしてしまうタスク。住宅とロボットを一体で設計することで、ロボットが作業しやすい環境を作ることができる

更には、洗濯したタオルや衣服を畳むタスクも実施された。

(再掲)洗濯物を畳むタスク

デモでは、買い物から帰宅した場面を想定し、MW botがキッチンやランドリーなどを移動しながら家事を支援する様子を披露した。

■今回のデモはAIではなく「遠隔操縦」

ただし、今回披露されたMW botはAIによる自律動作ではなく、デモはテレオペレーション(遠隔操縦)によって行われており、離れた場所にいるオペレーターがロボットを遠隔操作していた。

したがって今回のデモは、MW botのAIによる自律家事を実証したものではなく、Living Homeにロボットが組み込まれた場合、どのように住宅内を移動し、どのような家事を支援できるのか、その具体的なイメージを実機で示したものとなっていた。それでも、来場者はロボットが家事をする家の具体的なイメージを共有し、体験することができただろう。

MWは、ロボットを自律化するための学習データ収集にも着手している。発表会では、MW botと同じ関節構成やハンドを持つデータ収集装置を使い、人間の操作による家事データを収集していることも紹介された。

データファクトリーの様子

このAI開発については、ロボスタでは浅谷氏への個別インタビューも実施した。詳細は別の記事で紹介する予定だ。

■なぜヒューマノイドではなく天井走行型なのか

MWは発表会で、MW botと人型ロボット(ヒューマノイド)の違いについても説明した。

成田氏は、一般的なヒューマノイドは人と同程度の大きさがあり、日本の住宅に導入した場合には居住空間を圧迫する可能性があると指摘する。また、床を移動するロボットの場合、子供や高齢者、ペットなどと同じ動線を使うことになり、接触や転倒のリスクも考慮する必要がある。

これに対してMW botは、通常は使われていない天井付近の空間を移動するため、居住者の床面積を占有しない。またMWはロボットだけでなく住宅自体を設計するため、ロボットが通る動線や作業する高さなどをあらかじめ最適化できる。

発表資料では、ヒューマノイドに比べてタスクの自由度では劣るものの、セットアップ、安全性、住宅間での親和性などをMW botのメリットとして挙げている。さらに成田氏は、ロボットを住宅設備の一部として組み込むことで、単体のロボットを購入する場合に比べて住宅ローンとの親和性も高められるとの考えを示した。

MWが示したMW botと人型ロボットの比較。MW botはタスク自由度では人型に及ばない一方、床面積を占有しないことや安全性、住宅との親和性などをメリットとして挙げる

■「家の自動運転」を目指す

成田氏は、MWが目指す世界を「家の自動運転」と表現した。

自動車が自動運転によって人を運転から解放しようとしているように、住宅では人を家事から解放する。MWはそのために、住宅という空間そのものとAI、ロボットを一体で設計する。

成田氏は、2027年に日吉でMW botを搭載した住宅を公開し、2028年には販売を開始する計画を示した。さらに2029年以降は年間数百棟規模へと量産し、将来的な海外展開も視野に入れる。

また今回の発表会に合わせて、MWが経済産業省・NEDOの生成AI開発支援プロジェクト「GENIAC」に採択されたことも発表された。MWは住宅ロボットの基盤モデル開発などを進めていく。

MWが示したのは、AIロボットを製品化するという構想ではなく、ロボットが働くことを前提に住宅そのものを設計し、建築、AI、ロボティクスをひとつの住宅プロダクトとして提供するという考え方だ。住宅環境は千差万別で、すべての環境に適用したAIロボットの実現は困難だ。しかし、AIロボットに適する環境を家から設計するとなると実現のハードルは低くなる。

豊洲に実際のトレーラーハウスを持ち込み、天井を移動するMW botがキッチンやランドリーで動く姿を公開したことで、4月のロボスタのインタビューで語られていた「Living Home」の構想は、少なくともその具体的な姿を見せ始めた。

MWが掲げる「家の自動運転」は、2027年の実証住宅、そして2028年の販売に向けて、ここから実装の段階へと進むことになる。

後編「MW botの現在と開発のマイルストーン 浅谷氏に聞く」につづく(近日公開)

《神崎 洋治》

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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