株式会社ワールドエリアネットワークス(WAN)は2026年10月5日、フィジカルAIの研究開発を本格的に始動し、ともに取り組む共同研究・実証パートナーの募集を開始したと発表した。あわせてブランドを刷新し、新しいコーポレートサイトを公開した。
WANは2010年の創業以来、3DCG・XR・シミュレーション・映像・WEB/システム開発を通じて、現実の空間を仮想空間に写し取る仕事を続けてきた。今後はその技術を、AIが現実を理解し、学び、機械を動かすための基盤として生かす。既存事業は継続しつつ、フィジカルAIを新たな成長の柱に据える考えだ。
建設現場の担い手不足を背景に
フィジカルAIは、AIがカメラやセンサーを通して現実世界を理解し、ロボットや機械を動かす技術を指す。WANは取り組みの背景に、現場の担い手不足を挙げている。建設業の就業者数は2024年平均で477万人と、1997年の685万人から約30%減った。55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまり、熟練者の技能の継承が課題になっている。
AIが機械を安全に動かせるようになるには、現場を写し取ったデータと、失敗しても危険のない仮想空間で何度でも試せる環境が欠かせない。WANはそれを16年間つくり続けてきたとする。具体的には、写真や動画から現場を3Dにする3DGSビューワー「Machica」(2026年6月β版公開)、建設現場を3DCGと物理シミュレーションで再現する建機シミュレーター「メタトレ」(2026年6月販売開始)、そして3DCG・映像・XRの制作が土台になる。

第一弾は「メタトレ+」 技能評価と訓練提案にAIを活用
第一弾は、2026年7月に中小企業庁のGo-Tech事業に採択された建機訓練システム「メタトレ+」だ。広島市立大学・安田女子大学との共同研究で、公益財団法人ひろしま産業振興機構を事業管理機関に、令和8年度から3年間にわたり研究開発を進める。
熟練者・初心者・未経験者が仮想空間で建機を操作したデータを記録し、AIが「操作」「安全」「施工」の3つの観点から技能を評価する。その結果をもとに、一人ひとりに合った次の訓練を提案する仕組みだ。

令和8~10年度の研究開発の目標は次のとおり。なお、これらは研究開発上の目標値であり、現在提供中の製品性能を示すものではないという。
掘削・積込・整形を中心とした300シナリオ以上の整備
AI技能評価に活用する10指標以上の設計
熟練者と初心者を高い精度で見分けるAIモデル
複数の建設関連企業での実証・導入検証
ここで蓄積する「熟練者の操作」と「現場の変化」を対応づけたデータは、建設機械の遠隔操作や作業の自動化といったフィジカルAIへの応用を見据えたものだ。
建設からインフラ、産業機械へ展開
WANは建設機械を入り口に、次の分野へ広げていく方針だ。
建設:建機の操作訓練、技能評価、遠隔操作・作業支援
インフラ:橋梁などを3Dで記録し、点検・維持管理や計画の検討に生かす
産業機械:クレーンやフォークリフトなど、ほかの機械の訓練や作業支援への展開
教育:教育機関や企業の研修で使える訓練環境
死角の警告や危険箇所の表示、適切な操作の提案といった作業支援から、人の監視下での一部作業の自動化へと進める。WANが目指すのは、人に代わるAIではなく、人の判断と技能を支えるAIだと説明している。

共同研究・実証パートナーを募集
現場で使えるフィジカルAIは一社では実現できないとして、WANは次のパートナーを募集する。
現場の知見・データ:訓練シナリオや評価基準づくりに、知見や操作データを提供できる企業
実証の場:現場での実証・導入検証に協力できる企業・自治体・教育機関
共同研究:AI・ロボティクス・人の技能に関する研究を進められる大学・研究機関
技術:センサー・ロボット・AIなどの技術を持ち、組み合わせを検討できる企業

ブランドを刷新 メッセージは「現実世界を、まるごと仮想空間へ。」
今回のリブランディングでは、3DCG・XR・シミュレーション・映像・WEB/システム開発に加え、AIで現実の現場を支える会社であることを言葉とデザインで明確にした。
新しいコーポレートサイトのトップページでは、実際の映像が青い走査線を境に白い建築模型へ書き換わっていく。模型はすべてプログラムで組み上げ、ブラウザ上でリアルタイムに描画しているという。英語版も同時に公開した。

代表取締役の三谷歩氏は「フィジカルAIは、WANの16年間がそのまま生きる領域です。人に代わるAIではなく、現場で働く人を支えるAIを、大学やパートナー企業の皆さまと一緒に広島から形にしていきます」とコメントしている。

WANはあわせて、フィジカルAIの研究開発と3DCG・XR・シミュレーション開発を担う人材(ゲームエンジンエンジニア、3DCGデザイナー、企画・ディレクター)の募集も行っている。
ロボスタオンラインセミナー情報
ロボスタでは、国産のヒューマノイドや四足歩行ロボットの開発・量産を目指すHighlandersの増岡宏哉CEOをお招きし、オンラインセミナー「国産ヒューマノイド『N』量産と知能化への挑戦 Highlandersが描くフィジカルAIと実世界データ戦略」を10月22日(木)に開催します。

Highlandersは、三菱自動車の工場で活用するヒューマノイドロボットの共同開発と、京都製作所京都工場におけるHighlanders製品の量産化について協議を進め、2027年の早い時期の生産開始を検討しています。
また、ロボットを製造、物流、インフラなどの現場で稼働させ、視覚、力覚、触覚、遠隔操作などの実世界データを蓄積。そのデータを独自のフィジカルAI基盤モデルの学習に活用し、進化したAIを再びロボットへ展開する「データフライホイール」の構築を掲げています。
セミナーでは、国産ヒューマノイドの社会実装と量産、日本発のフィジカルAI産業の可能性などについて深掘りしていきます。ぜひご参加ください。
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