富士ソフトが異なるメーカーの搬送ロボットを統合管理 「MixFlit」の実機デモを新設「名古屋Lab」で公開

富士ソフトが異なるメーカーの搬送ロボットを統合管理 「MixFlit」の実機デモを新設「名古屋Lab」で公開
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富士ソフトは2026年10月14日、愛知県名古屋市に新設したロボット開発・実証拠点「名古屋Lab」を報道関係者に公開した。同社が開発したAMR(自律走行搬送ロボット)統合管理プラットフォーム「MixFlit(ミックスフリット)」を活用し、異なるメーカーの複数の搬送ロボットやロボットアーム、工場設備を連携させる実機デモを公開した。

デモには、FANUC、安川電機、Universal Robots(UR)、Preferred Robotics、YOUIBOTなどのロボットを活用。複数メーカーのロボットを組み合わせ、工場内の部品搬送や通い箱の回収を自動化する仕組みを紹介した。

MixFlitは、メーカーごとに異なるロボットの運行管理を一元化し、工場内の設備や生産管理システムとの連携を支援するプラットフォーム。富士ソフトは10月15日、エクセディと販売店契約を締結したことも発表しており、製造・物流現場への展開を加速する。

ロボスタでは、初公開された「名古屋Lab」と、そこで公開された「MixFlit」の仕組みと実機デモ、開発・検証拠点としての取り組みを取材した。今回のMixFlitの説明と実機デモは、富士ソフトの岡村直樹部長が担当した。

富士ソフト株式会社 組込/制御ビジネスユニット エリア事業本部 スマートビジネス部 部長の岡村直樹氏

■異なるメーカーのAMRを統合管理する「MixFlit」

製造現場では、工程間の部品搬送や完成品の運搬、空箱の回収など、さまざまな搬送作業が発生する。こうした業務の自動化に向けてAMRの導入が進む一方、メーカーごとに制御システムや管理画面が異なることが、複数機種を運用する際の課題となる。

富士ソフトが2025年11月に発売したMixFlitは、異なるメーカーのAMRやAGV(無人搬送車)を統合管理するフリート管理システムと、工場内の設備・上位システムとの連携機能を組み合わせたプラットフォームだ。

複数の搬送ロボットの位置や稼働状況、実行中のタスク、バッテリー残量、異常情報などを一元的に監視できる。さらに、搬送指示や走行ルートの設定、設備との連携を通じて、工場内の搬送業務全体の効率化を支援する。

例えば、ある工程ではA社のAMR、別の工程ではB社のAMRを使用している場合でも、MixFlitを介して統合管理できる。ロボットメーカーを統一する必要がなく、用途や搬送物、既存設備との適合性に応じて機種を選択できる点が特徴となる。下記の図でいえば、「Kachaka Pro」「KeiganALI」「Neibo」などの異なるメーカーのAMR機種を統合管理することが可能になる。

MixFlitのシステム構成を見ると、上位には生産管理システムやERP(統合基幹業務システム)、MES(製造実行システム)、WMS(倉庫管理システム)などが位置する。MixFlitはこれらのシステムから搬送指示を受け、AMRの運行管理、タスク管理、充電管理などを行う。

各メーカーのAMRとの接続には、機種に応じたブリッジやアダプタを使用する。カチャカプロ、KeiganALI、Neiboには標準の接続ブリッジが用意され、ROS 2対応AMRにも対応する。その他の機種については、カスタムブリッジや各社のロボット制御システム(RCS)との連携によって対応する構成だ。

このため、すべてのロボットが接続するだけで直ちに利用できるわけではないが、対応する機種を組み合わせることで、メーカーごとに独立していた搬送システムを共通の管理基盤に集約できる。
富士ソフトの担当者は、異なるメーカーのロボットを一つの仕組みで動かすことは通常難しいと説明し、MixFlitによって比較的容易に統合制御できることを強調した。

■搬送ルートの設計から運行管理、実機制御まで対応

MixFlitは、AMRの運用管理に加えて、導入前の搬送ルートの設計や運用条件の設定にも対応する。

走行ルートは、地図上に頂点や仮想レーンを配置して作成する。自動充電、タスク割り当て、特定エリアでの運行条件なども設定でき、工場内の設備やレイアウトの変更にも対応する。

また、製造実行システム(MES)や倉庫管理システム(WMS)、工場設備などと接続し、搬送指示からロボットの運行までを連携させることができる。ロボットの位置や稼働状況、タスクの進捗、バッテリー残量、異常情報なども共通の管理画面で確認できる。

富士ソフトによれば、標準アダプタや連携機能の活用により、システム開発期間を約50%短縮できるとしている。ただし、これは同社の試算値であり、導入環境や連携する機器によって効果は異なる。

MixFlitによるAMRの運用管理とシミュレーション、走行ルートの設定画面

■異種ロボットが連携する「通い箱搬送」の自動化デモ

今回の名古屋Labでは、工場で使用する通い箱の搬送・回収を想定したデモを披露した。

製造現場では、棚から部品を取り出して作業場所まで運び、使用後の空箱を回収する作業が発生する。富士ソフトは、こうした搬送工程を複数のロボットと設備の連携によって自動化する仕組みを構築した。

デモには、オリエンタルモーター製のモバイルマニピュレータ、YOUIBOTのAMR「L300」にFANUCの協働ロボット「CRX」を搭載したモバイルマニピュレータ、Universal Robotsの協働ロボット「UR5e」が登場。コンベアやパイプシューターなどの設備とも連携する。

まず、オリエンタルモーター製のモバイルマニピュレータが通い箱置き台へ移動し、ロボットアームで通い箱を取り上げる。続いてパイプシューターへ通い箱を投入し、元の位置へ戻る。

オリエンタルモーター製モバイルマニピュレータが通い箱をピックアップし、パイプシューターへ搬送

次に、YOUIBOTのAMR「L300」にFANUCの協働ロボット「CRX」を搭載したモバイルマニピュレータが、パイプシューターから通い箱を取り出す。コンベアまで移動して通い箱を載せる。

YOUIBOT L300に搭載したFANUC CRXが通い箱を把持
コンベアまで自動運搬
通い箱をコンベアに載せる様子

コンベアは通い箱を搬送し、終端ではUniversal Robotsの協働ロボット「UR5e」が通い箱を取り上げ、所定の場所へ移す。

URのロボットが通い箱を所定の位置に戻して一巡。この後、オリエンタルモーター製モバイルマニピュレータが通い箱をピックアップしに来る

こうして、異なるメーカーのモバイルマニピュレータ、協働ロボット、コンベア、パイプシューターが連携し、通い箱の循環搬送を再現している。

■安川電機のロボットとカチャカプロ2台による段ボール搬送

もう一つのデモでは、安川電機の「MOTOMAN NEXT NHC12」とPreferred Roboticsの「カチャカプロ」2台を組み合わせ、段ボールの循環搬送を披露した。

まず、段ボールを載せた台車をカチャカプロの1台が運び、安川電機のロボットアームの左側に移動する。NHC12は吸着ハンドで段ボールを持ち上げ、反対側で待機するもう1台のカチャカプロの台車へ載せ替える。

安川電機の「MOTOMAN NEXT NHC12」が吸着ハンドで段ボールを持ち上げて、もう一方のカチャカプロの台車に載せ替える

段ボールを受け取ったカチャカプロは搬送を行い、2台のカチャカプロが次の搬送に備えて待機位置へ戻る。これを繰り返すことで、ロボットアームによる荷物の受け渡しとAMRによる搬送を連携させる。

もう一方のカチャカプロが台車ごと、段ボール箱を所定の位置に自律搬送

担当者は、通い箱搬送と段ボール搬送という2系統のデモを、同じMixFlitで同時に制御していることを強調した。

複数メーカーのロボットを組み合わせる場合、機種ごとの制御システムや設備連携を個別に開発する必要が生じる。MixFlitは、こうしたシステム間の連携を共通のプラットフォームに集約し、搬送システムの構築や変更を容易にすることを目指している。

■Unityで事前検証したシステムを実機で動作確認

今回の名古屋Labでは、実機デモとあわせて、Unityを用いた3Dシミュレーションも紹介された。

MixFlitと連携する3Dシミュレーションについて説明する富士ソフトの岡村直樹氏

シミュレーションでは、Blenderなどで作成したGLB形式の3Dモデルを取り込み、工場内の設備やロボットの配置、搬送ルートを仮想空間に再現する。ロボットの必要台数や搬送時間、タクトなどを事前に検討できる。

Unityによる3Dシミュレーション画面。通い箱搬送と段ボール搬送の2系統を再現し、複数のロボットの位置や動作状況を可視化している

今回のデモでは、MixFlitからUnityのシミュレーション環境と実機の双方に接続する構成を紹介した。事前検証で確認した搬送システムを実機環境でも動かし、異なるメーカーのロボットや工場設備が連携する一連の流れを確認できる。

工場への導入にあたっては、実機を設置する前に仮想空間でレイアウトや搬送ルートを検討し、その結果を実機検証につなげられる。こうした開発・検証の環境を提供することも、名古屋Labの役割となっている。

■動画「富士ソフトがAMRフリート管理システム「MixFlit」をデモ」

■ロボット開発・実証の専用拠点「名古屋Lab」を開設

名古屋Labの開設背景や役割については、富士ソフトの常務執行役員、南川勝氏が説明した。

富士ソフト株式会社 常務執行役員 組込/制御ビジネスユニット エリア事業本部長の南川勝氏

今回のデモが行われた名古屋Labは、富士ソフトが2026年10月1日に開設した、同社初のロボットシステム開発・実機検証の専用拠点だ。
所在地は名古屋市中区錦1丁目のKDDI名古屋ビルで、面積は376平方メートル。AMRや協働ロボット、産業用ロボットなどを設置し、実際の機器を使ったシステム開発や導入前検証を行う。

施設にはカチャカプロ、KeiganALI、YOUIBOT L300、FANUC CRX-10iA、安川電機MOTOMAN NEXT NHC12、Universal Robots UR5eなどが導入されている。

名古屋Labが担う役割は、ロボットシステムの開発・実機検証、顧客との共同検証、エンジニアの人財育成、開発・検証体制の強化の4つだ。

製造現場では、ロボット単体の動作に加えて、搬送設備や生産管理システムとの連携、安全性、運用条件などを確認する必要がある。富士ソフトは名古屋Labを活用し、設計・開発から実機検証までを一貫して進める体制を整える。

また、同施設はNEDO事業におけるロボットシステムの研究開発や検証にも活用される。今後はフィジカルAIに関連する技術開発にも取り組む方針だ。

■エクセディと販売店契約、AMR「Neibo」と組み合わせて展開

MixFlitの事業展開も進んでいる。富士ソフトは2026年10月15日、エクセディとMixFlitの販売店契約を締結したことを発表した。

エクセディが展開するAMR「Neibo」とMixFlitを組み合わせ、搬送ロボットの導入から統合管理までを一体的に提案する。
富士ソフトによると、MixFlitは2026年3月にNEDOプロジェクトで採用され、7月にはエクセディへ開発用ライセンスを販売した。その後、9月に販売店基本契約を締結し、今回の発表に至った。

同社は今後も対応するAMRメーカーや連携先を拡大し、製造・物流現場における搬送業務の自動化を進める方針だ。異なるメーカーのロボットや既存設備を連携させるMixFlitと、その開発・検証を担う名古屋Lab。富士ソフトは、ソフトウェア開発とロボットシステムの構築を組み合わせ、スマート工場の実現に向けた取り組みを強化している。

製品名:MixFlit(フリート制御マネジメントシステム)

ライセンス価格:一括6百万円(税別)、月額18万円(税別)
※導入費、カスタマイズ、保守費は別途

主な特長:複数メーカーのAMRを1画面で統合制御/Web画面からのルート変更(PLC不要)/Unityによる導入前の3Dシミュレーション/AMRは最大50台まで接続可能/ヒアリングから最短2か月で導入

標準で接続できる主なAMR:kachaka Pro(株式会社Preferred Robotics)、KeiganALI(株式会社Keigan)、Neibo(株式会社エクセディ)

製品サイト:https://www.fsi.co.jp/mixflit/index.html

《神崎 洋治》

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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