葛飾区とタカラトミー、NTTドコモがプログラミング教育で連携 ダンボールロボットキット「embot」(エムボット)を小学校等で採用へ

2020年4月から小学校で必修化されるプログラミング教育の実施に伴い、葛飾区はNTTドコモが開発し、タカラトミーが販売するダンボールロボットキット「e-Craftシリーズ embot」(エムボット)を活用する。葛飾区の定例記者会見で発表した。発表会では、葛飾区ではembotを使ってどのような教科で授業を実施したかも紹介された。葛飾区がプログラミング教育にロボットキットを採用するのは初めて。

葛飾区役所で行われた定例記者発表会で、タカラトミーとドコモとの連携を発表。embotは音楽や理科、算数など、さまざまな教科でプログラミング教育のひとつとして活用できるように作られているが、今回、葛飾区ではどのような教科で授業が実施されたかも発表された(後述)

タカラトミーとドコモは商品の提供に留まらず、教員研修や出張授業などを行う協力体制を実施していく。今年度中に先行して一校の導入を行った上で、以降は区内のすべての小学校や特別支援学校に拡げていく考え。
予算としては各学校に行き渡るように1,980セット分、合計1300万円強と、小学校5年生全員に行き渡るよう追加の組立ダンボール174組、95万7千円、合計約1400万円を計上する。


まずは年度内に1校導入、次年度より拡大

定例記者発表会では、葛飾区区長の青木克徳氏が登壇し、2社との協働事業として小学校等プログラミング教育に「embot」を採用し、配布することを発表した。

葛飾区の区長 青木克徳氏「ICT教育はどんどん進んでいっている。プログラミング教育も必修化に合わせて迅速に支援していきたい。教員がついていけるかという課題もあるが、embotでは教員研修や出張授業も予定している」

青木区長は「世界的な玩具メーカーであるタカラトミーはおもちゃづくりで培ってきた子ども達の興味を引き出すノウハウがある。ドコモは教育研修や出張授業を実施してきたノウハウがある。それらを生かしてプログラミング授業の推進を進め、子どもたちには地元への愛着を高めてもらいながら、世界で通用する「ICT力」を育てていきたい」と語った。

embotはダンボールを使ったロボットを組立て、タブレットでロボットを動作させることができるプログラミング・キット

ダンボールを使うため、色づけをしたり、紙で装飾を貼ったりと子ども達には親しみやすい

完成したロボットはタブレットで楽しみながらプログラミングできる

ダンボールの自作品を作るのも工夫とアイディア次第。これはLEDライトを使った信号機


区長もプログラミングを体験

embotはダンボールでロボットを組み立てる楽しさからブログラミングして動かす楽しさに繋げられる点が大きな特長だ。図画工作や技術の授業だけでなく、さまざまな教科が活用することを、ドコモの開発陣は予め考慮して開発に当たった。実際に葛飾区では次のような教科でプログラミング教育の実践が行われた。

【葛飾区西小菅小学校で実施したプログラミング教育の例】
1年生 国語「むかしばなしがいっぱい」話の順序に沿って簡単な構成を考える
2年生 生活「うごくうごくわたしのおもちゃ」おもちゅの動きを組み合わせる
3年生 音楽「ドラムで音遊び」リズム・パターンを組み合わせて音楽を作る
4年生 音楽「かえるのうた」リズム・パターンを組み合わせて音楽を作る
5年生 算数「正多角形と円周の長さ」図形の性質を見つける
6年生 理科「電気の性質」電気の性質を知り、その利用方法を考える

発表会ではイメージ動画のほか、プログラミングの実演が行われ、区長も実際に体験した。

embotのプログラミングを区長も体験

■動画 embotでプログラミングの実演




さまざまな教科で活用できる点を評価

葛飾区では現在、一校あたり約40台の共用タブレットを配布している。プログラミング教育全般について区役所から各校に支援している状況については、今までは主にタブレットで利用できるアプリの配布と推進によってICT力をつけることを支援を発表してきた。今回のembotのプロジェクトでもプログラミングにはタブレットが必要になるが、各校に配布しているものが活用できる。embotのようなロボットキットを採用をするのは今回が初めてとなる。

embotを選択した理由としては「現場目線では汎用性が高い点を評価した」という。デモのように音楽に活用したり、理科や算数など様々な授業で活用できることがポイントになった。また、タカラトミーが葛飾区にあることも採用の理由にあげた(タカラトミー本社は葛飾区役所のすぐ近くにある)。

葛飾区では、年度内に試験的に導入したあと、新年度には葛飾区区立小学校や特別支援学校で実施するプログラミング教育に関する授業に積極的に取り入れていきたい考えだ。
また、タカラトミーはロボット玩具をはじめ、ICT技術を活用した玩具の開発・販売にも積極的だ。embotはセンサーなどの連携したプログラミングも可能なので、今後はタカラトミーの玩具との連携なども期待できそうだ。

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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