メルセデス・ベンツの店舗に「NVIDIA Jetson Nano」を使った顧客分析AIシステムを導入 レイアウトやキャンペーンの効果測定に

NVIDIAは超小型のAIコンピュータボード「Jetson Nano」によるリアルタイム分析を店舗に導入する事例として、Mercedes-Benz Consulting(以下、メルセデス)がModcamの店舗分析を使用して販売店のレイアウトを最適化したユースケースを発表した。

メルセデスはドイツのシュトゥットガルトにある本社近くのコンセプトストア(店舗)にて、さまざまなフロアレイアウトやタッチスクリーンによるプロモーション、商品情報を表示するサイネージなどをテストしている。この店舗にModcamのエッジAIシステムを導入することで、メルセデスはレイアウトやキャンペーンの効果測定を行い、どのモデルにどれくらいの人が流れ、また異なる店舗構成に対して顧客がどのように反応するかを判断できるようになる。


Modcamと連携して次世代の自動車販売体験を加速

スウェーデンに拠点を置くAIスタートアップのModcamはスマートセンサーを使用して、小売店、ショールーム、オフィススペースにおける人の流れの詳細なデータを提供している。スマートセンサーには「NVIDIA Jetson Nano」モジュールが搭載されていて、エッジ側でAIアルゴリズムのリアルタイム演算処理を行う。これにより、小売業者は顧客の購買嗜好に関する有益な分析を安全に引き出せるようになる。


自動車メーカーの販売の成功はショールームでの体験に大きく依存

ほとんどの人にとって自動車はめったにない大きな買い物だ。そのため自動車メーカーの販売の成功はショールームでの体験に大きく依存する。自動車会社は自動運転技術やインテリジェントな運転技術に投資するのと同じように店頭にも目を向け、見て回りやすい最適化されたレイアウトを実現しようとしている。

Modcamのエッジコンピューティング用AIアルゴリズムの支援によって、メルセデスは展示フロアと接客エリアの両方で消費者の行動に関する有益な洞察を得ることができる。


個人情報を収集することなく、顧客の行動を分析

ModcamのインテリジェントなAIは、空間の中で人がどのように動くかを分析する。それをもとに小売業者は特定のレイアウトやサイネージが効果的かといったパターンを判断し、顧客が商品のどこに興味を持ち、時間をかけてもよいと思っているかを突き止めることができる。

これは個人情報を収集、保存することなく行われる。具体的にはエッジで実行されているDNN(ディープニューラルネットワーク)は顧客の検知に際して個人を特定しない形で人を特徴づけ、スマートセンサーは分析する画像を一切保存しない。


Jetson Nanoを活用し、わずか5ワットで動くプラットフォームを実現

Modcamは高性能でエネルギー効率に優れたJetson Nanoを活用し、リアルタイムに計算を実行するためにNVIDIA Metropolisアプリケーションフレームワークを使って最適化している。MetropolisはAIカメラ等によるスマートシティを高度に実現するプラットフォームだ。
小型でパワフルなコンピュータでModcamは物体検出、セグメンテーション、トラッキングなどのアプリケーションのための複数のDNNを並列に実行し、そのすべてが、わずか5ワットの電力で動く、使いやすいプラットフォームで稼働している。

Modcamの最高執行責任者であるアンドレアス ノードグレン(Andreas Nordgren)氏は次のように述べている。

「当社では前世代のセンサーとプロセッサのパワーが足りなかったため、コンピュータボードをNVIDIA Jetson Nanoにアップグレードしました。すると、次世代のシステムが必要とするニューラルネットワークの性能が60倍に向上しました」

この高性能でインテリジェントなエッジソリューションによって、Modcamは世界中の小売業者がマーチャンダイジングをさらに最適化し、より良い買い物体験を提供できるように支援している。

なお、ModcamはNVIDIA Inception Programのメンバーだ。このプログラムは初期段階にある企業を対象としたバーチャルアクセラレータープログラムとなっている。NVIDIAは基本的なツール、専門知識、市場参入サポートを提供することでこれらの企業を支援している。


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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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