踏切事故は年間240件超 AIが踏切内の人を検知して運転士へ通知、事故を防ぐ オプテージが山陽電車らと実証実験

株式会社オプテージは山陽電気鉄道(以下、山陽電車)、山電情報センターとともに、監視カメラによる遠隔監視およびAI画像解析技術の活用による踏切遮断中の異常検知に向けた実フィールドでの実証実験を2020年8月上旬より開始したことを発表した。(冒頭の写真はイメージ)

実証実験ではオプテージのAI技術や通信技術、Web技術を活用し、山陽電車の踏切の「人」の往来の映像をリアルタイムに解析。危険を察知した際にはエッジデバイスから信号を送出し、特殊信号発光機(停止信号)を発光させることで、接近する列車の運転士への通知を行い、列車を安全に停止させることで踏切における人身事故の抑制を図る。また、並行して運転指令室に危険の通知を行う仕組みを検証し、2021年春の本格運用の開始を目指す。実証実験は2020年10月中旬まで。



実証実験のポイント

■AI画像解析による「人」の検知の実現
従来の障害検知システムでは検知できなかった歩行者やベビーカー、車いすといった「人」を検知できるようAIを活用した画像解析による実地検証を行う。また、画像解析で課題となる雨天時や夜間についても精度が保てるかなど、実フィールド環境での有効性を検証する。なお、検証にあたっては同分野での実績を保有するK4Digital株式会社の協力のもと実施。

■特殊信号発光機(停止信号)と連動した運転士へのアラート発報
異常検知した際には接近する列車の運転士に即時発報を行えるよう、現場設備(特殊信号発光機など)との連動性について検証を行う。処理方式については検知精度と処理時間の関係を考慮し、よりリアルタイムでの処理を実現するエッジデバイスによる画像解析技術を用いて検証を行う。

■セキュアなネットワークで運転指令室へ連携
上記と並行して運転指令室でのアラート認知、状況確認ができる仕組みも開発し検証する。現場のエッジデバイスから運転指令室までのネットワークにはオプテージのIP-VPNを採用し、セキュアなネットワーク環境を構築するとともに、低遅延で情報収集ができるシステムを目指す。

■各社の主な役割

オプテージ ・IT基盤(クラウドカメラ、エッジデバイス、NW)の構築、提供
・異常検知AIシステムの開発、提供
山陽電車 ・実験フィールドの提供(実証実験箇所:踏切3カ所)
・本実証実験で構築する監視システムの有用性判定と実運用に向けた改善事項の提示
山電情報センター ・プロダクト企画推進




実証実験の背景

内閣府の「交通安全白書」によると鉄道交通の運転事故は長期的には減少傾向であるものの、2018年中の踏切における事故発生件数は247件と依然として多く発生している。事故内容としては「自動車との接触が38.5%」「歩行者および自転車等の人との接触が55.5%」と事故の半数以上が「人」との接触となっている。

山陽電車では「安全・安心」を最優先事項として鉄道および索道のゆるぎない安全を確立するため、積極的に安全性の強化・改善を行い、すべての踏切への非常ボタンの設置、自動車が通行する全踏切(138カ所)の障害物検知装置の設置、警報機の遮断動作時間の延長や障害物検知装置の高性能化など、踏切横断時の安全対策についてソフトとハードの両面から重点的に取り組んできた。

今回、さらなる安全性強化策としてオプテージが持つAI技術を活用した画像解析技術を用いて、踏切内に取り残された「人」を自動で検知する実証実験について、2020年春より機器構成の検討や検証準備を3社で進め、実フィールドでの実証実験を開始するに至った。

オプテージは山陽電車、山電情報センターとともに早期に実用化を進め、鉄道交通の安全性強化に寄与していくと同時に、今回の実証実験で得た知見をもとに今後さまざまな分野においても、情報通信とAI・IoTなどの先進技術の融合でユーザーの課題に寄り添ったソリューションの提供を目指していく。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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