パナソニックがAmazonと全面協力した狙いは?ビエラ専用「FireTV」を搭載した4K有機EL/液晶テレビ新製品13機種を発表

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社(以下、パナソニック)は5月8日、AmazonのFire TVを搭載し、テレビ放送とネット配信動画の両方をシームレスに楽しむことができるテレビの新製品「ビエラ」シリーズを発表した。

パナソニック「4K有機ELビエラ」フラッグシップの「Z95A」シリーズ、65v型と55v型。マイクロレンズ有機ELパネルを採用し、Amazonと共同開発した専用のFire TVを搭載。

新型ビエラは従来からの高画質・高音質技術を更にブラッシュアップしつつ、最大の特徴として、Amazonと共同開発したビエラ専用「Fire TV」を搭載したこと。報道関係者向け新製品発表会にはアマゾンジャパンの西端氏もかけつけ、連携できた喜びを語った。

パナソニックの末永部長(左)と、アマゾンジャパンの西端事業部長(右)

ビエラ新製品は6シリーズ、「4K有機EL」が6機種、「4K液晶」が7機種の合計13機種がリリースされ、すべての機種にビエラ専用に開発された「Fire TV」が搭載されている。


パナソニック「4K液晶ビエラ」W90Aシリーズ。上左から50v型、73v型、下左から65v型、55v型

パナソニック「4K有機ELビエラ」Z90Aシリーズ。左から65v型、55v型

価格はフラッグシップの有機EL「Z95A」65型が52万円前後、最廉価の液晶「W80A」43型が13万円前後(いずれも税込)。予定価格の詳細はこの記事の末尾に掲載。


サクサク動くビエラ専用「Fire TV」

今回ビエラに搭載されている「Fire TV」は、ビエラ専用にブラッシュアップされているため、操作のサクサク感が強化されている。Fire TVのホーム画面では、放送中のテレビ番組やネット配信のコンテンツがシームレスに表示される。この機能はとても便利で、通常のホーム画面は、テレビ放送では地デジとBS/CSを切り換えたり、AmazonプライムビデオやNetflixなどそれぞれのサブスク用アプリを起動し、ログインして配信中のコンテンツを確認するという手間があったが、その煩わしさから解消される。プライムビデオやAbemaなど、ライブ配信されているコンテンツはそれらのみから選択できる便利な機能もある。

テレビ放送とネット配信がシームレスにサムネイル表示されるFire TVのホーム画面。

リアルタイムで放送されている番組では番組の進行度が赤くバー表示される。この機能により、各局の番組が始まったばかりなのか、放送開始から既にどの程度経過しているのかが、目視で確認しやすい(下画面の「フジテレビ」「TBS」「日テレ」のサムネイル画像の下部)。


また、音声アシスタントの「Alexa」に対応しているため、「アククサ、プライムビデオを開いて」や「アレクサ、アクション映画を探して」などの音声操作ができるほか、「アレクサ、リビングの照明を消して」など、連携するスマート家電をビエラ本体(Z95AとZ90A)や、リモコンを通して操作(全機種)することができる。


また、その他「Fire TV」との連携機能として、Android端末やWindows PCの画面をミラーリング機能でビエラの大画面に表示したり、別売のUSBカメラでビデオ通話できる(Z95AとZ90A)ことなどが紹介された。





テレビ放送とネット動画をシームレスに表示&検索できるホーム画面

コロナ禍を通して、デレビでネット動画を楽しむスタイルが定着してきた。ある調査によれば、テレビのネット接続率は81%を超え、AmazonプライムビデオやNetflixなど、オンデマンド型の動画配信サービスの利用率は50%超に達しているという。
パナソニックの末長部長は報道関係者向け説明会で「パナソニックは2008年に世界初のYouTube対応テレビを発表、テレビ放送とネット動画を楽しめるUIにこだわって商品開発をしてきました。近年のモデルでは、視聴できる放送や動画をサムネイル付きで表示するメニューを用意したり、放送中の番組や録画した番組を好きな部屋やスマホでも楽しめる機能など、AVライフをより豊かにする機能を搭載してきました」と語った。

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 ビジュアル・サウンドビジネスユニット 商品企画部 部長 末永 誠氏

そして「2024年は未来に向けてテレビの価値を拡大しつつ、更に放送とネット動画をシームレスに表示、検索、お勧めする機能を強化し、スマートフォンやIoT機器との連携、独自の高画質・高音質技術を進化させ、より磨きをかけていきたい。
そのために、パナソニックはAmazonと協業し、ビエラ専用のFire TVを開発し、新製品のOSとして採用しました」と続けた。


末永は「従来、パナソニックはビエラに独自OSを開発して搭載してきました。しかし、次々に誕生する様々なアプリサービスに対応していくこと、テレビに期待される役割が拡がってきていることを考え、未来を見据えると、独自OSから脱却することが必要不可欠と考えました。ビエラの独自技術と融合するFireTVを、Amazonと一緒に開発し、搭載しています」と力強く語った。


Fire TVと連携することを決めた3つのポイント

パナソニックは、Amazon Fire TVを提携先に選んだ理由として、3つのポイント「様々なアプリに対応」「快適で使いやすいUI」「両社の全面協力による共同開発」を掲げた。
対応アプリは独自OSの30種類から、Fire TVでは大幅に増える。快適で使いやすいUIとは「放送とネット動画がシームレスに確認できる」ことと「サクサク快適に動く」ホーム画面の特徴をあげた。3つめの共同開発については従来のビエラの機能はそのまま使えるようにFire TVに融合していると説明した。





Fire TV製品の販売台数は世界累計で2億台以上

つづいて、アマゾンジャパンから事業部長の西端氏が登壇。
「AmazonはFire TV搭載の革新的なテレビ製品を共同開発していくことをCESで発表しました。既に欧州ではパナソニックのFire TV搭載テレビが発売されていて、今回、日本でも展開されることになり、私達もとても喜んでいます」と語った。

アマゾンジャパン合同会社 Fire TV – Amazon Device Japan, Category Lead , Amazonデバイス Fire TV事業部 事業部長 西端 昭彦氏

「Fire TV」製品は、Stick型のストリーミングメディアプレイヤーがお馴染みだが、ほかにボックス型もあり、スマートテレビ製品も含めると販売台数は世界累計で2億台以上にのぼるという(2023年9月1日時点)。また、日本市場でも順調に右肩上がりで伸びている。

「Fire TV」の最大の特徴してシームレスなホーム画面を上げた。この記事でもここまで何度か解説してきたが、地デジ、BS、CSなどのそれぞれのテレビ放送と、各ネット配信動画サービスのアプリにログインして最新のコンテンツや観たい動画を探す、YouTube動画の検索など、通常はそれぞれのモードに切り換えて探す手間があったが、Fire TVのホーム画面ではテレビ番組とネット配信コンテンツがまとめて表示される。


ビエラ新製品の特徴

発表会では続いて、パナソニックの高橋氏が登壇し、新型ビエラのラインアップと高画質・高音質を支える技術などを紹介した。また、報道陣向けのデモや旧型製品などとの画面比較で紹介し、ビエラ新製品の特徴を説明した。

パナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社 ビジュアル・サウンドビジネスユニット 国内マーケティング部の高橋泰浩氏

高橋氏はまず「AI高画質エンジン」を紹介。「デュアル超解像」「ネット動画ノイズリダクション」「Dolby IQ “presision Detail”」「FILMMAKER MODE」の4点が特筆点だ。


「デュアル超解像」は、従来からの数理モデル3次元超解像に加えて、AIを用いたAI超解像機能を加え、高精細アップコンバート映像と自然なアップコンバート映像を元素材の情報量に応じて最適に合成する。これにより解像感とリアルさを実現する。


「ネット動画ノイズリダクション」はネット動画によく見られるバンディングノイズ(粗いグラデーションのような縞模様状/ブロック状のノイズ)を抑制しつつ、精細感を維持する機能。


バンディングノイズの例。新型ビエラではこのノイズが抑えられる(報道陣は実機デモで確認)

その他、独自のパネル技術の進化や高コントラスト化など独自の高画質技術、高音質技術も追加されている。


機種別 機能一覧

シリーズや機種によって搭載する機能が異なるので下記を参考に。また、詳細は同製品の公式ホームページを参照のこと。



予定価格(税込)は下記の通り。
有機ELテレビ
Z95A
 65型 52万円前後
 55型 37万円前後
Z90A
 65型 40万円前後
 55型 29万円前後
Z85A
 48型 23万円前後
 42型 22万円前後
液晶テレビ
W95Z
 65型 37万円前後
W90A
 65型 30万円前後
 55型 26万円前後
 50型 20万円前後
 43型 19万円前後
W80A
 50型 14万円前後
 43型 13万円前後

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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