日本霊長類学会のトークセッションにVTuber バーチャル美少女ねむが初出演 「霊長類学から見たメタバース」動画配信中

日本霊長類学会の第40回大会が2024年7月12日から仙台で開催され、自由集会「霊長類学から見たメタバース」では、近年話題の仮想空間「メタバース」での人間の行動や社会の変化について霊長類学の見地から考えるトークセッションが行われた。

出演者はVTuber/作家のバーチャル美少女ねむ、先日NHKで密着インタビューが放送され話題のスイスの人類学者リュドミラ・ブレディキナ(ミラ)、日本霊長類学会員である本郷峻・上野将敬・徳山奈帆子ら。同大会にVTuberが出演するのは今回が初となった。

アバターにより起こりやすくなる人類のスキンシップを霊長類の「毛づくろい」と比較したり、性別を超えた恋愛関係などの性行動をボノボの社会と比べて新時代のジェンダーの在り方を考えるなど、異分野コラボによる新鮮な議論が行われた。

尚、内容は学会誌 「霊長類研究」に報告論文として掲載予定。配信アーカイブは無償公開中。

日本霊長類学会第40回大会

日本霊長類学会の会員は野外・実験室・博物館・動物園と多彩なフィールドで、基礎から応用まで、霊長類を対象としたさまざまな研究を行っている。今回は学会による40回目の節目の大会となり、杜の都・仙台で開催された。

日程・会場

2024年7月12日:トークネットホール仙台
2024年7月13日~14日:東京エレクトロンホール宮城

日本霊長類学会第40回大会自由集会「霊長類学から見たメタバース」

霊長類学から見たメタバース
Seeing the metaverse with primatological goggles
日時 2024年7月12日 15:30~17:00
場所 トークネットホール仙台 第5会議室(B会場)
概要 近年、仮想空間上で多数の人々がアバターを用いて交流し、社会経済活動を営む「メタバース」が注目を集めている。ビジネスの分野では、非代替性トークン(NFT)や仮想空間上の「土地」をめぐる経済性がメタバースの主な話題であり、一方で情報科学の分野では、メタバースでのリアルな生活を可能にする、VRゴーグル技術や動作トラッキング技術、アバター技術などが脚光を浴びる。しかし本集会では、霊長類学の視点から、「メタバースがヒトの心理や社会に与えうる影響」について考えてみたい。

メタバースで日常的に生活し、「ソーシャルVRライフスタイル調査」を共同実施している2名を迎え、霊長類の心理や社会を専門とする会員とともに、この新しい社会空間が、わたしたちの社会にどのような長期的変化をもたらしうるのか、そして、学会が目指す総合霊長類学はメタバースを視野に入れることで、いかに新たな研究の着想を生みだせるのか、会場の皆さんを交えて議論を深めたい。
出演者
(敬称略)
本郷峻(総合地球環境学研究所/京都大学)
バーチャル美少女ねむ(VTuber、作家)※メタバースからオンライン登壇
上野将敬(近畿大学)
Liudmila Bredikhina(マルタ大学)※スイスからオンライン登壇
徳山奈帆子(中央大学)

※議論の内容は後日記事化され、学会誌 「霊長類研究」に報告論文として掲載予定。


配信アーカイブ

本自由集会の配信アーカイブはバーチャル美少女ねむのYouTubeチャンネルで無償で公開されている。

アジェンダ

・趣旨説明「霊長類学から見たメタバース」:本郷峻(総合地球環境学研究所/京都大学)

・日本のデジタル空間におけるジェンダー多様性:男性バーチャル美少女コミュニティへの民族誌的研究からの洞察:リュドミラ・ブレディキナ(マルタ大学)

・ボノボ社会とメタバースにおけるジェンダー:徳山奈帆子(中央大学)

・メタバース生活の紹介とコミュニケーションや感覚に与える影響:バーチャル美少女ねむ(VTuber、作家)

・メタバースから霊長類の「毛づくろい」を考える:上野将敬(近畿大学)

・総合討論「霊長類学から見たメタバース」


日本霊長類学会からの出演者

本郷峻(総合地球環境学研究所/京都大学)

熱帯雨林を歩く保全科学者。熱帯雨林に暮らす人々の重要な食糧・収入源である野生動物の持続的な利用と保全のため、自動撮影カメラなど用いた科学的モニタリングと地域住民の在来・地域知を組み合わせた野生動物管理に取り組んでいる。

上野将敬(近畿大学)

様々な動物種における社会性や利他性の進化に興味があり、ヒトや他の霊長類が、同種の他者や他種の動物をどのように認知しているのかといった探索に取り組んでいる。

徳山奈帆子(中央大学)

ボノボ、チンパンジー、ニホンザルなどを対象に行動生態学的研究を行っている。野生動物とヒトの共生についても考えている。ボノボと森林の保全のため、現地での人々の暮らしをサポートする活動にも取り組んでいる。

研究ユニット「Nem x Mila(ねむみら)」

ねむとミラがメタバースが人類に与える影響を調査するために結成した研究ユニット。ソーシャルVRの生活を調査した「ソーシャルVRライフスタイル調査」などのレポートを定期的に発表。昨年2023年には国際連合の国際会議「IGF京都2023」でも登壇発表を行った。

バーチャル美少女ねむ(VTuber、作家)

日本のVTuber/作家で、メタバース文化エバンジェリスト。HTC公式VIVEアンバサダー。2022年に解説書『メタバース進化論(技術評論社)』を出版。「ITエンジニア本大賞2023」ビジネス書部門で大賞を受賞。

リュドミラ・ブレディキナ(通称「ミラ」、マルタ大学)

スイスの博士課程在籍の学生。2022年に「バ美肉」「VTuber」に関する修士論文でジュネーブ大学のジェンダー分野の学術賞「プリ・ジャンル」(ジェンダー賞)を受賞。 2024年にはNHK「最深日本研究」で密着ドキュメンタリーが放送。

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