NVIDIAやGoogle DeepMind、Figure AIなどが「フィジカルAI」開発を加速させるなか、日本でも実機のヒューマノイドを使った開発コミュニティが急速に立ち上がり始めている。

その象徴ともいえるイベント「Humanoid Hack Tokyo 2」が7月11日から12日にかけて東京・渋谷、GMOインターネットグループ本社内の「GMOヒューマノイド・ラボ」で開催された。




このイベントは、ヒューマノイドロボットの実機を使って短期間でアプリケーションやAIを開発する実践型ハッカソン。会場には中国Unitree Roboticsのヒューマノイド「Unitree G1」が用意され、参加者はAPIやSDKを利用しながら、「VLA(Vision-Language-Action)」や「フィジカルAI」技術を活用した新しいロボットアプリケーションの開発に挑戦した。





最終審査の会場には約60名のビジター(来場者)が訪れ、実機による開発だけでなく、AI・ロボティクス分野の開発者や研究者、スタートアップが交流するコミュニティ形成の場としても注目が集まった。

■応募者は約230名に拡大、6チームが最終審査へ
「Humanoid Hack Tokyo」は今年5月に初開催された。第2回となる今回は、前回と同じGMOヒューマノイド・ラボを会場としながら、規模を拡大して開催。第1回は100名を超える事前登録があり、4チームが最終審査に進出したのに対し、今回は約230名が応募し、7月12日の最終審査には6チームが進んだ。

イベントの主催はOrboh、GMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)、RobotMateHub(ヤマリキエッジ)、Strike Robot、Manmaru AI、goi robotics、iginite0、Solo techが協賛し、Unitreeも審査員のひとりとして参加した。


最終審査では、6チームがプレゼンテーションと実機デモを披露し、開発成果を競った。

■優勝は「Rescue G1」被災者を捜索するロボット
優勝したのは、災害現場での人命救助をテーマにした「Rescue G1」。


チームが着目したのは、大規模災害では倒壊や火災などの二次災害の危険から救助隊員が立ち入れない場所が多く、被災者の捜索や初動対応が遅れてしまうという課題だ。

そこでUnitree G1を活用し、人が入れない危険区域へロボットが進入し、倒れている被災者を検知して安否確認を行い、その位置を救助隊へ通知するシステムを開発した。
デモでは、G1が倒れている人物をカメラで検知すると音声で呼びかけを行い、管理画面へ位置情報を通知する一連の流れを披露した。人物検知には画像認識モデル「YOLO」を採用し、薄暗い環境でも被災者を検出できるよう工夫したほか、日本語・英語・中国語による多言語音声案内にも対応。さらに、ブラウザからロボットを操作できる独自UIも開発し、短期間での開発効率を高めたという。


質疑応答では「四足歩行ロボットでも実現できるのではないか」という質問も出た。これに対しチームは、ヒューマノイドは被災者に安心感を与えやすいことに加え、将来的には瓦礫の除去や搬送など、発見後の救助作業まで担える可能性があると説明。単なる探索ロボットではなく、救助活動全体を支援するヒューマノイドを目指していると語った。

こうした社会課題への着眼点や、短期間でシステムを形にした実装力が評価され、優勝を果たした。
チームメンバーは「全く知らない4人が集まり、それぞれ異なる専門分野を持ち寄って完成させた。まさにハッカソンらしい開発だった」と振り返った。
■2位は「Snow Guard」豪雪地帯で雪かきを支援するヒューマノイド
2位には、豪雪地域における除雪作業の安全性向上を目指した「Snow Guard」が選ばれた。

チームによれば、日本では過去10年間に雪による事故で800人を超える被害が発生しており、その多くは雪かきや屋根の雪下ろし中に起きているという。

こうした危険な作業をヒューマノイドへ置き換えることを目標に、Unitree G1が人間用の除雪道具を使って雪かきを行うコンセプトを提案した。

デモでは、カメラで雪を認識したG1が歩行しながらスノープッシャーで雪を押し出す動作を披露。専用機械ではなく、人間が使っている道具をそのまま利用できることを特徴としており、危険な場所で人の代わりに作業することを目指している。画像認識や強化学習、シミュレーション、3Dプリンティングによる部品製作など、多様な技術を組み合わせて短期間で開発したという。


チームは、雪かきはあくまで第一歩だと説明。将来的には屋根の雪下ろしなど、より危険な作業へもヒューマノイドを活用したい考えを示した。また、ヒューマノイドが一般家庭へ普及すれば、各家庭に導入されたロボットへ雪かき用ソフトウェアを提供するビジネスモデルも視野に入れているという。

審査員の一人は、社会課題の解決と社会実装を意識した点や、実機デモの完成度を評価し、「個人的にはダントツの1位だった」とコメントした。
■第1回「Humanoid Hack Tokyo」は5月に初開催
第1回の「Humanoid Hack Tokyo」は今年5月に初開催され、世界最大級のヒューマノイドイベント「Humanoids Summit Tokyo 2026」の直後に実施されたこともあり、国内外から100名を超える参加登録が集まった。参加者の約3割を海外エンジニアが占めるなど国際色豊かなイベントとなった。
発表では、ヒューマノイドが杵で餅をつく「餅つきロボット」や、寿司を握る「寿司職人ロボット」のほか、ホテルの受付、工場での組み立て支援、介護支援など、日本文化から産業用途まで幅広いアイデアが披露された。

短期間のハッカソンでありながら、AIとロボティクスを組み合わせた実用的なデモが数多く生まれたことでも注目を集めた。

今回の第2回では、前回話題を集めた日本文化をテーマにした作品や産業用途の提案に続き、災害救助や除雪、介護支援など、社会課題の解決を強く意識したプロジェクトが目立った。ハッカソンを重ねることで、ヒューマノイドの活用領域が着実に広がっていることを印象づける結果となった。








