ソフトバンク先端技術研究所や東大、真鍋氏「脳オルガノイドの人工脳細胞プロセッサ」BPU研究が欧州で栄誉賞を受賞 

ソフトバンク 先端技術研究所が、アーティストの真鍋大度氏、東京大学 生産技術研究所 池内与志穂研究室と共同研究をおこなっているプロジェクト「Brain Processing Unit」(BPU)、通称「脳オルガノイドの人工脳細胞プロセッサ」研究が、欧州「S+T+ARTS Prize 2025」で栄誉賞を受賞したと発表した。

iPS細胞からつくられる培養生体組織「脳オルガノイド」を人工脳細胞プロセッサとして活用する研究

ソフトバンク 先端技術研究所 所長の湧川隆次氏(執行役員)

東京大学 生産技術研究所 池内研究室 教授 池内与志穂氏

メディアアーティスト、プログラマー、デザイナーの真鍋大度氏


「S+T+ARTS Prize 2025」とは

「S+T+ARTS Prize 2025」はScience、Technology and the Artsの略称で、欧州委員会(EU Commission)が主催するもの。今回、「Honorary Mention(栄誉賞)」を受賞した。
「S+T+ARTS Prize」は、オーストリア・リンツを拠点とする国際的なクリエイティブ機関「アルス・エレクトロニカ(Ars Electronica)」が、欧州委員会の任命を受けて運営している国際的なアワード。サイエンス、テクノロジー、アートを横断する経済的・社会的イノベーションの創出に顕著な影響を与えた革新的なプロジェクトに授与される。


iPS細胞から作られる培養生体組織「脳オルガノイド」を活用

今回栄誉賞を受賞した「BPU」は、人間の脳が持つ高い適応力や学習能力に着目し、iPS細胞から作られる培養生体組織「脳オルガノイド」を、次世代のコンピューティング基盤として活用することを目指したプロジェクト。

ソフトバンクはこれを、従来の「CPU」、AIやグラフィック処理などに活用されている「GPU」、今後の進化と実用化が期待されている「量子(QPU)」に次いで、将来のコンピュータ技術に「Brain Processing Unit(BPU)」コンセプトの研究を進めていく。

先端技術研究所は、2022年から、アーティストの真鍋大度氏、および、東京大学 生産技術研究所 池内与志穂研究室と共同で、脳オルガノイドに対する刺激方法や活動データの解析に関する研究をはじめ、操作に必要な「API」やネットワークなどのインターフェース技術の開発を進めてきた。その詳細はロボスタでも既報の通り。(関連記事「ソフトバンクと東京大、脳オルガノイドで「人工脳細胞のプロセッサ」を共同研究、世界初の成果を発表 「脳細胞が次世代コンピュータになる」」)

これらの研究成果を基に、2025年2月に「BPU」が実現した未来像をアートとして表現した展示イベントを開催した。
今回の受賞は、サイエンス、テクノロジー、アートの融合により、先端技術の新たな可能性を切り拓く本プロジェクトの先進性や独創性、社会的意義が国際的に高く評価された。


審査委員による評価コメント

審査委員による評価コメントは、下記の通り。

審査委員

論理的最適化と再現性を重んじる古典的コンピューティング、急速に進化する量子コンピューティングさえも超え、本プロジェクトは、実験室で培養された脳オルガノイドからなる生体プロセッサ『Brain Processing Unit(BPU)』を用い、創造性の新たなフロンティアを探求している。アーティスト・真鍋大度が東京大学およびソフトバンクと協働して主導するこの産学芸連携の取り組みでは、BPUとの相互作用に音楽とリズムを取り入れることで、人間の創造性の根源に迫ろうとしている。
脳オルガノイドは生きた組織であり、疲労やエラーを示すことがある。こうした反応は、従来の『正しさ』の概念に疑問を投げかけ、進化的ともいえる新たな知性の可能性を示唆する点がとりわけ興味深い。アーティストが本質的かつ妥協のない問いを投げかけることで、従来の研究プロセスに生産的な撹乱をもたらし、新たな方向性が切り拓くと同時に、発見が加速していく。本プロジェクトは、アーティスト主導による基礎研究への貢献が新興テクノロジーを拡張し、社会に新たなビジョンを喚起する強力な例である

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ロボスタ編集部

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