4月7日、開業したばかりの「&AND HOSTEL」2号店の内覧会が開催された。今回の記事では、同ホステルのレポートを行っていく。
「&AND HOSTEL」は2014年設立のスタートアップand factory株式会社がプロデュースする最先端のIoTデバイスを集結させたスマートホステル。
2016年夏に福岡に1店舗目の「&AND HOSTEL」を開業すると、海外・国内からあらゆる客が、最先端のデバイスを体験するために同ホテルを訪れた。
今回浅草にオープンした2号店も、一部の部屋としてIoTルームが用意されており、各種IoTデバイスを体験できる他、1階のロビーでも他ではあまりお目にかかれない最先端のIoTデバイスを体験することができる。
場所は、東京都台東区日本堤2-4-7。東京メトロ日比谷線「南千住」駅から徒歩6分、「三ノ輪駅」から徒歩8分ほどの所にある住宅街の中に建てられており、ホテルを運営するには「立地が良い」とは言えない。
しかし、そんな立地でありながら、すでにオープン後数日間の予約は満室。1号館としてオープンした「&AND HOSTEL」の福岡店では、一般的にホテルが閑散期と言われる1月-2月にも93%の稼働率を誇ったという。
部屋は広くなく、価格も周囲のホテルと比較しても1,000円から1,500円ほど高い。では、なぜそんなにも支持を集めているのだろうか。
外国人客が9割、客同士のコミュニケーションを
まだオープンして日も浅いが、この先の予約客を見ていくと、外国人観光客の割合が9割近くを占めるのだという。1階にはバーカウンターや、談笑ができるスペースが用意されており、各種IoTデバイスがエンタメ性をもたらしている。新築で建てられたホテルだけあり、建物の中はとても清潔感がある。
このスペースではお酒も提供されており、ホステルに宿泊中の他の客たちと交流を深めることができる。最新のIoTデバイスが話題に華を添えることだろう。
未来の部屋を体験できる、「&AND HOSTEL」にしかない提供価値
「&AND HOSTEL」には、個室部屋が全部で6つ、その他ドミトリータイプの部屋が2部屋用意されている。個室6つのうち4つがIoTルームとなっており、各部屋では5種類のIoTデバイスを体験することができる。
IoTセミダブルルーム
IoTセミダブルルームでは、「MESH」「IRemocon」「Qrio Smart Lock」「Philips Hue」「mornin’」の5つのプロダクトを体験することができる。
MESHは、ソニーの新規事業創出プログラムから生まれた新しいツール。「タグ」と呼ばれる各種センサーを配置し、専用のアプリからつなぐことで、「湿度が下がって乾燥したらメールで通知する」といったデバイス間連携を容易に行うことができる。
この部屋には、カーテンレールにめざましカーテンの「mornin’」というデバイスが設置されており、MESHの「明るさタグ」と連携することで「朝明るくなったらカーテンを開ける」というデバイス間連携が行われている。
また、そのほかにも受付で渡されるスマホにインストールされた専用アプリからスマートIoT照明「HUE」を操ることで部屋の色合いを変えることができたり、IoT連携の高機能学習リモコン「IRemocon」に指示を与えることで、テレビやエアコン操作も行うことができる。
ドアには「Qrio Smart Lock」が備わっており、こちらもスマホアプリから鍵の開け閉めの操作が可能だ。
取材に際し、担当者にお話を伺ったところ、「&AND HOSTEL」では、IoTデバイスを用いて「ビジネスをしていく」という姿勢を強く感じた。全ての部屋がIoTルームになっていない理由については「コストとのバランス」であること、また一部の部屋がIoTルームになることで「それ以外の部屋の宿泊料の相場も上がる」ということを明かしてくれた。
導入されたIoTデバイスの選定については、1号店をオープンしたことで各メーカーからの売り込みがあったようで、その中からきちんとユーザーに価値を提供できるものを採用したのだという。物珍しさ、注目度が先行してしまうIoTデバイスを、きちんと利用していきたいという意図が感じ取れる。
IoTを繋げるシステムを持ち、デバイスの知見も溜まった同プロジェクトは、容易に横展開が可能になるだろう。
支持される理由は「未来の体験」と「交流」
今回「&AND HOSTEL」を覗いた最初の正直な感想は「狭い」だった。客室も広くはなく、「ホテル」ではなく「ホステル」なだけあり、階段も廊下も広くはない。
ただ一方で、客から支持され、2店舗目を出店するに至った理由も理解できる。最新のIoTデバイスを一挙に体験できる場所は他には見当たらず、テクノロジーが好きな方にとっては貴重な場所だ。「未来の家」を体験するという意味では、有意義な宿泊施設になるだろう。
また、ホステルならではの外国人客との交流も体験として興味深い。個室以外にベッドが複数並んだドミトリールームがあるが、そこにはバックパッカーの外国人旅行者が多く宿泊している。英語が堪能な方であれば、テクノロジーに対する「すごい」という共感・共通の話題を持つことで、最初の喋るきっかけが生まれそうだ。
外国人観光客が今後ますます増えていく日本においては、最先端テクノロジーの体験と同様、外国人客との身近な交流も「未来の体験」と言えるのかもしれない。