Upstage AI 株式会社は、トヨタグループの株式会社ジェイテクト、マルチモーダルAI開発のカラクリ株式会社とともに、AWSが主催する「フィジカルAI開発支援プログラム by AWS ジャパン」に採択されたと発表した。
採択を通じ、製造業界におけるフィジカルAI活用の可能性を検証し、自律型・適応型生産システムの社会実装を目指す。
発表によると、3社はジェイテクトの工場を対象に、現場データとAIを結び付けることで生産プロセスの高度化を進める。フィジカルAIは、実環境で学習し変化に適応できる機械の実現を通じて、生産システムをより自律的でレジリエント、かつ生産性の高いものへ進化させる可能性がある。
VLAとSim2Realで製造課題に対応
共同開発では、Vision Language Action(VLA)の活用が柱となる。マルチモーダル生成AIにより、画像・言語・動作を統合的に学習・推論し、複雑な製造プロセスの自動化と最適化を狙う。
加えて、仮想空間での高速学習(Sim2Real)を用いた試作コストの削減を検討する。シミュレーション環境で得た学習成果を実環境へ転用することで、AIモデルの開発コストと試作期間の短縮につなげる方針だ。
現場データのAI-Ready化で専用モデルを構築
3つ目のアプローチとして、現場データの資産化とAI-Ready化を掲げる。ジェイテクトの工場に蓄積されている多様かつ高精度なデータを、AIが活用できる形に変換し、現場データに基づく専用モデルの構築を進める。
各社の役割と狙う社会実装
役割分担では、Upstageが独自のLLM開発力と「Document Parse」等のデジタル領域で培った非構造データ構造化技術をフィジカル領域へ展開する。現場データをAIが処理可能な形へ変換し、データの資産化を実現する考えだ。
カラクリは生成AI領域の開発能力を活かし、CUAモデルで培った意図理解・画像認識技術を、ジェイテクトの製造課題に対応できる直感的なロボット制御(VLA)として実装することを推進する。
ジェイテクトは製造工程における多様で高精度なデータと実際の工場環境を提供し、フィジカルAIの社会実装が可能な道筋を確立するとしている。
背景とプログラム概要
日本の製造業は高度な産業として位置付けられる一方、少子高齢化による労働力不足や、熟練工の技能伝承の複雑化といった構造的課題がある。
「フィジカルAI開発支援プログラム by AWS ジャパン」は、AWS ジャパンが主催する支援プログラムで、ロボット基盤モデル等の開発をAWS上で推進する企業・団体に対し、技術支援、AWSクレジットの提供、コミュニティ形成、Go-to-Market支援を行い、ロボティクス分野でのAI活用を促進することを目的としている。
今回の採択により、グローバルレベルの高性能LLM開発力とデータ構造化を担うUpstage、AWS Trainiumを活用した高効率なモデル学習技術を持つカラクリ、そして自動運転や精密製造技術の知見と工場データを提供するジェイテクトが統合され、フィジカルAIの社会実装が現実的に進展することが期待される。