株式会社日立製作所は2026年7月7日、フィジカルAIで化学品の製造プラントの現場生産運転を支援する「最適運転ガイダンスシステム」を年内に販売開始すると発表した。
日立が展開する次世代ソリューション群「HMAX Industry」のラインアップの1つとして提供され、化学プラントの安定生産と生産性向上への貢献を目的とする。
熟練オペレーターの経験に依存してきたバッチ生産
化学品などのプロセス製造業では、高付加価値化に向けて少量多品種で製造する「バッチ生産」が不可欠だ。
しかしバッチ生産では設備内部の状態が時々刻々と変化し、複雑な反応の制御が求められるため、生産現場ではオペレーターの経験や勘に強く依存してきた。
その結果、品質や生産性にばらつきが生じるだけでなく、計器の指示値をもとにオペレーターが内部状態を予測する必要があり、属人的な負担が現場の課題となっていた。
今回のシステムは、高付加価値の化学品などを少量多品種で製造するバッチ生産のプロセスをフィジカルAIでサイバー空間に再現・分析し、分散制御システム(DCS)やプログラマブルロジックコントローラー(PLC)の最適な制御方法を提示する。
具体的には、プラントの反応設備を対象に設備内部で反応中の素材の状態を可視化し、特定の制御が素材に与える影響を予測したうえで、温度・圧力・流量などの操作ガイダンスをオペレーターに提示する仕組みだ。
オペレーターの技量や経験に左右されにくい運転が可能になり、製品品質の安定化と製造プロセス全体の生産効率向上に貢献する。
2つのモデルを組み合わせて実現
本システムは大きく2つの技術で構成される。
1.研究開発と制御技術のドメインナレッジをAIに組み込んだプロセスモデル
反応設備の内部状態を予測する際、エネルギーや物質の出入りを日立の化学・化学工学的な専門知識に基づく理論式で計算し、設備の経年劣化など定式化が難しい部分についてはAIで予測する。これにより従来のAI技術よりも少ないデータで精度を保った予測ができるとしている。
2.過去のバッチ生産の運転データを強化学習した制御モデル
エラー回数が少なく製品品質が高く、運転時間が短いなど運転結果が良好だった条件に基づく設備設定の候補をオペレーターに提示する。独自のクラスタリング技術で状態を定義し、その時系列変化を強化学習させることで、従来手法と比較して比較的短時間での学習・予測が可能になったという。なお、本システムに関する技術は特許を取得済みとしている。
フィジカルAIのリーディングカンパニーへ
日立のコネクティブインダストリーズ(CI)セクター インダストリアルソリューションビジネスユニットでは、豊富なインストールベース(デジタライズドアセット)のデータにドメインナレッジと先進AIを組み合わせた次世代ソリューション群「HMAX Industry」に注力している。日立はフィジカルAIのリーディングカンパニーをめざし、これをコアとする「インダストリアルソリューション」の提供を通じて、顧客のライフタイムバリュー最大化とグローバルな産業変革に取り組むとしている。