アイリスオーヤマ「ヒューマノイドも同じ壁にぶつかる」2.5万台の社会実装から見えたAIロボット普及の課題

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アイリスオーヤマ「ヒューマノイドも同じ壁にぶつかる」2.5万台の社会実装から見えたAIロボット普及の課題
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アイリスオーヤマは、2026年6月10日に東京で開催された「ロボスタカンファレンス」に登壇し、「2.5万台の社会実装の先に見えた未来」と題して講演をおこなった。

AIロボティクスやヒューマノイドへの期待が高まる中、ロボティクス事業本部の吉田本部長は2.5万台の出荷実績から見えた“ロボット社会実装の本質”について語った。

アイリスオーヤマ株式会社 執行役員 ロボティクス事業本部 本部長 吉田豊氏。株式会社アイリスロボティクス 取締役社長、株式会社シンクロボ 取締役、SEQSENSE株式会社 取締役を兼務

■ロボット社会実装の本質

同社は清掃ロボットを中心に累計2.5万台を超えるサービスロボットを供給し、急成長を遂げている。業務用清掃ロボットで3年連続、国内ベンダーシェア1位を獲得している(富士経済調べ)しかし、同社ロボティクス事業本部長の吉田豊氏は「清掃ロボットはまだ普及しているとは言えない」と語る。

AIや自律走行技術、クラウド基盤の整備が進み、ロボット技術そのものは成熟しつつある。それでも現場では「止まる」「使われない」「人に戻る」という課題が繰り返されるという。

■まだ清掃ロボットが普及しているとは言えない理由

講演の冒頭で吉田氏は会場へ「皆さん、清掃ロボットは普及していると思いますか?」と問いかけた。

累計2.5万台以上を出荷し、国内シェアでもトップクラスの実績を持っている今でさえ、吉田氏は「答えはNoだ」と断言した。

その理由は、ロボットそのものの性能に問題があるからではない。
自律走行技術は成熟し、AIやクラウド基盤も整いつつある。配膳ロボットや清掃ロボットも実用レベルに達している。それでも「社会実装はまだ十分ではない」というのが吉田氏の認識だ。

同氏は2005年の愛・地球博から始まるサービスロボットの歴史を振り返りながら、「20年前からロボット普及が語られてきたが、2026年の今も同じ議論を続けている」と指摘した。

■問題はロボットではなく「現場と運用」にある

吉田氏によれば、2.5万台を供給する中で見えてきた最大の課題は技術ではなく運用だった。

例えば福祉施設でロボットを導入しても、「充電されていない」「ゴミパックが満杯」「担当者が使い方を理解していない」といった理由だけで利用が止まることがあるという。

その結果、現場はロボットを使うことをやめて、再び人手作業へ戻ってしまう。

現場は人手不足で困っているにもかかわらず、「清掃は人がやるもの」という企業文化が障壁となり、導入を見送る企業も少なくない。

こうした経験から同氏は「ロボットは良い製品ができれば普及する産業ではなく、運用産業なのではないか」と語り、現場と運用の仕組みこそが普及の鍵を握ると指摘した。

■DX推進者不在が非製造業の壁

吉田氏はさらに、日本の労働人口構造にも言及した。現在、日本の就業者の約85%は非製造業で働いている。一方、製造業は約15%に過ぎない。

製造業では工場長や生産技術部門、改善部門が存在し、生産性向上をKPIとして継続的な改善活動が行われている。しかし非製造業では、DX責任者がいない、運用設計者がいない、数値管理されていないというケースも多いという。

ロボットを導入しても、その運用を担う主体が存在しなければ定着しない。同氏は「主体者がいない限りDXは進まない」と強調した。

「主体者がいない限りDXは進まない」

■台数が増えるほどロボットは強くなる

アイリスオーヤマはロボットを販売して終わりではなく、サブスクリプションモデルで継続運用している。これが同社の最大の強みにも繋がっている。ロボットを貸し出せば貸し出すほど、現場データや障害事例、利用パターンが同社に蓄積され、改善を経て、作業精度があがっていく。

同社は、2026年1月、警備ロボットで知られるSEQSENSE社を買収、グループに加えた。清掃ロボットに続いて警備ロボットを導入した際に見えてくる課題もあるという。複数ロボットが共存することで初めて分かる問題もあり、それらを改善し続けることで製品やサービスが進化する、とした。

吉田氏は「台数が増えるほど改善し、強くなる」と語り、社会実装そのものが競争力の源泉になっているとの考えを示した。

2.5万台規模の供給から得られる現場データは、同社のロボット開発やサービス改善を支える重要な資産になっているといえそうだ。

■アイリスが次に目指す「ロボットプラットフォーム」

吉田氏は、ロボット産業の競争軸が変化しつつあるとも語った。

アイリスオーヤマは2020年から2025年までを「利用者拡大のフェーズ」と位置付け、清掃ロボットや配膳ロボットの普及を進めてきた。

その一方で2026年以降は、単体ロボットの普及だけではなく、複数ロボットやIoT機器、AIを連携させる「プラットフォーム戦略」が重要になると見ている。

同社はこの夏、新製品としてDX清掃ロボット「JILBY(ジルビー)」を発売予定だ。スライドでは、清掃ロボットではなく、今後のIoT連携やロボットプラットフォーム戦略の中核を担う存在として位置付けられていた。

講演では「JILBY」の詳細な仕様説明こそなかったものの、吉田氏は今後の展開として、床に飲み物がこぼれたことをセンサーや警備・巡回ロボットが検知し、AIと連携して清掃ロボットが自動的に清掃へ向かう世界観を紹介した。

これは従来のように人がスケジュールを設定してそのとおりに動くロボットだけではなく、複数のIoT機器やAIが連携しながら自律的に判断する次世代のサービスロボット像を示している。

同社はNTT西日本グループとの連携も進めており、ロボット単体の販売ではなく、ロボットを中心とした運用プラットフォームの構築も目指している。

■「ヒューマノイドも同じ壁に直面する」吉田氏

講演の終盤ではヒューマノイドについても言及した。
吉田氏は、中国や米国、日本でヒューマノイド開発競争が急速に進んでいること、同社も市場調査と検討を重ねていること等を認め、「ヒューマノイドの社会実装は今後、確実に進んでいく」と語った。その一方で「このままでは、清掃ロボットと同じ課題にぶつかる」として、普及のための課題も示した。

現在のヒューマノイドの多くは、「実証実験」「展示会」「ショーケース」など限定的な環境での運用が中心だ。同氏は、ヒューマノイドが本格的に社会へ浸透するためには「現場の最適化」「運用の仕組み化」「継続した活用」が不可欠だと指摘した。

「このままでは清掃ロボットと同じ課題にぶつかる」という言葉は、サービスロボットの社会実装を実践してきた吉田氏だからこそ語れる、現在の加熱するヒューマノイドブームへの警鐘とも受け取れる。

■NTT西日本グループとAI基盤の実装で連携

また同社は、NTT西日本グループと協業し、同グループが推進する「AIロボティクスプラットフォーム」との連携も進めている。吉田氏が示した将来像では、清掃ロボット単体ではなく、AI、IoT機器、建物設備、業務システムなどが連携しながら運用される世界が描かれている。

NTT西日本グループが推進する「AIロボティクスプラットフォーム」との連携

例えば、施設内のセンサーやカメラが床の汚れや異常を検知すると、その情報をAIが解析し、DX清掃ロボット「JILBY」へ自動的に作業指示を出す。さらに建物設備や業務管理システムとも連携し、ロボットの稼働状況や施設運営のデータを統合的に活用する構想だ。

また、ユーザーは自然言語で「AIロボティクスプラットフォーム」と対話できることも大きな特徴のひとつだ。例えば「○○を重点的に清掃してください」「会議室をすぐに清掃して」といった指示を出したり、AI側から「○曜日は正午にも清掃した方がよい」などの提案を受けたりすることも想定されている。

スライドでは、小売店、病院、学校、工場、ホテル、交通施設、官公庁など幅広い施設が対象として示されており、ロボットを単独で導入するのではなく、施設全体のDX基盤として活用する方向性が見て取れる。

吉田氏が繰り返し強調した「社会実装」や「運用」の重要性を考えると、この取り組みはロボットを売って終わりではなく、継続的に価値を生み出すサービスへ進化させようとする試みともいえる。

ロボット産業の成長には、ロボット単体の性能競争だけでなく、AIやIoT、業務システムを含めたエコシステムづくりが重要になることを示唆している。

アイリスオーヤマ ロボティクス事業の詳細はこちら
《ロボスタ編集部》

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