Tokyo Artisan Intelligence株式会社(以下、TAI)は2026年7月6日、独自アーキテクチャによるエッジAIシステム向けリコンフィギャラブルAI半導体チップのテストチップ(開発コードネーム「Sting Ray」)の設計・製造・テストを含めた評価を完了し、量産フェーズへ移行したと発表した。
生成AI普及による電力課題の解決を目指す
生成AIの普及に伴い、データセンターが消費する電力の増大とそれに伴う発熱は世界的な課題となっている。従来の汎用GPUに依存したシステムでは計算能力の向上と引き換えに環境負荷が限界に近づいており、電力効率の高い専用AIチップの普及がグリーントランスフォーメーション(GX)の実現には欠かせない。TAIは低消費電力と高速処理を両立する独自アーキテクチャのAI半導体チップ開発を自社主導で進めてきた。
今回のテストチップ評価完了にあたっては、半導体設計技術を持つマレーシアのOppstar社の日本法人、Oppstar Japan株式会社の協力を得て、量産チップに向けた技術ノウハウを獲得した。
「Sting Ray」の技術的特徴
「Sting Ray」は、フィジカルAIの普及において課題となる「複数AIの同時実行」による消費電力の増加を解決するために開発された、量産チップ設計前の技術検証用テストチップだ。FPGAが持つ回路を書き換えられる柔軟性を活かしつつ、ベンチャー企業として限られたコストで実用的な半導体製造を可能にするUMC社の40nmプロセスを採用している。
柔軟な再構成性の検証:用途や実行するAIモデルに応じて処理回路を柔軟に変更できる構造を探索・最適化
配線チャネルの最適化:配線の状態を直接観測・制御できる効率的な構造を実装
低消費電力・低遅延の追求:限られた電力リソースでもリアルタイム処理が可能な基盤を検証
設計・検証ソフトウェアの開発:ユーザーの回路を実現する設計ソフトウェアと動作検証ソフトウェアを開発
想定するフィジカルAI領域の用途
「Sting Ray」は、高度な現場判断が求められる以下のようなフィジカルAI分野への組み込みを想定している。
インフラ・鉄道分野:多数のカメラやセンサーを同時に稼働させ、リアルタイムで異常を検知する点検・保守システムへの活用が期待される。
製造・工場分野:複数の生産ラインにおいて、品質確認や外観検査を同時に実施する自動化システムへの導入が見込まれる。
ロボティクス分野:状況変化に応じて瞬時に自律判断・制御を行う産業用ロボットや移動型ロボットへの搭載が想定されている。
量産化に向けたロードマップ
TAIは次世代量産チップ「Manta Ray」プロジェクトを本格始動させ、UMC社の40nmプロセスを採用した量産化ロードマップを公表した。
2027年第1四半期に設計ソフトウェア(α版)、同年第2四半期にエンジニアリング・サンプル(ES版)チップの製造、同年第3四半期にES版チップ搭載の評価ボード、同年第4四半期に量産版(MP版)チップの製造、2028年第1四半期にMP版チップ搭載の評価ボードを計画している。なお2026年8月6日には東京・日本橋で開催予定のイベントで、テストチップの実機デモを公開する予定だ。
ロボスタオンラインセミナー情報
JR西日本が導入した「汎用人型重機」人機一体の金岡博士が登壇
「あまねく世界からフィジカルな苦役を無用とする」。
「汎用人型重機」「多機能鉄道重機」という新たな産業ロボットの概念を切り拓いてきた人機一体の代表、金岡博士がオンラインセミナー「人機一体に聞く「人型重機とフィジカルAI」社会実装のリアル ~人を拡張するロボットの最前線~」に登壇。
JR西日本と共同で開発・実証が進む「人型重機」による鉄道インフラ保守の最前線をご紹介。高所作業や危険作業を人に代わって担うロボットが、どのように現場へ導入され、実際の業務を変革し始めているのかを、具体事例とともに解説します。
また、ヒューマノイドやフィジカルAIの潮流にも踏み込み、人機バイラテラルアームに代表されるマニピュレーション技術の進化、人間の技能のデータ化・再現といった技術的アプローチについても、現場視点で整理します。

先着50名様を無料でご招待します。詳しくはこちら。
ロボットの世界大会「ロボカップ」にもヒューマノイド・フィジカルAIの波
ヒューマノイドとフィジカルAIで変革期を迎える「ロボカップ」の現状を解説するセミナー「ロボカップはヒューマノイド・フィジカルAI時代へ 世界大会2026が示すロボット競技の変革と新潮流」を開催します。

「2050年までにサッカーのFIFAワールドカップ優勝チームに勝てる完全自律型ヒューマノイドチームを実現する」という壮大な目標を掲げて、ロボット競技の世界大会「ロボカップ」は1997年に日本からスタートしました。サッカーは認識、判断、移動、協調行動などAIとロボティクスの要素技術を総合的に必要とするため、研究開発を加速させる共通課題として選ばれました。
その後、レスキュー、ホーム/サービス、産業応用(インダストリー)などへ分野を拡大し、世界中の研究者や学生が参加するロボット・AI研究の国際プラットフォームへと発展しています。
本セミナーでは、ロボカップ日本委員会理事長であり、東京情報デザイン専門職大学教授の岡田浩之先生をお迎えし、ロボカップの歴史と現在地、ヒューマノイド化が進む背景、各リーグの最新動向、そして日本が直面する課題について解説いただきます。
さらに、韓国で2026年7月に開催される「RoboCup 2026世界大会」の現地レポートとして、写真や動画を交えながら、世界大会の最前線で何が起きているのかをご紹介いただきます。
先着50名様を無料でご招待します。詳しくはこちら。