アクセンチュア株式会社は2026年8月19日、日本を含む世界20カ国・19業種を対象に実施した最新調査「Pulse of Change」の結果を発表した。
日本企業の多くがAIへの投資を積極的に拡大している一方、その投資を全社的なビジネス成果へと結びつけられている企業は依然として限定的であることが明らかになった。あわせて、AIによる生産性向上の実感や仕事の満足度、リスキリング(学び直し)支援への期待についても、日本はグローバル平均を下回っており、技術導入にとどまらない組織・人材面の変革が課題であることが示された。
投資意欲は高いが、成果を実感する企業は限定的
調査によれば、「今後12カ月でAIへの投資を拡大する」と回答した日本の経営層は78%で、グローバル平均(82%)と大きな差はない水準だった。
しかし、AI活用によって全社的かつ持続的なビジネス成果を「すでに実現できている」と回答した日本の経営層は13%にとどまり、グローバル平均の23%を下回った。
また、AI関連の取り組みが経営会議に報告できるレベルの定量的な成果を生み出すことについて「十分または高い自信がある」と答えた経営層も48%で、グローバル平均の55%に届かなかった。
従業員の実感はグローバル平均から大きく劣後
従業員側の実感を見ると、その差はさらに際立つ。「AIによって生産性が向上した」と回答した日本の従業員は57%にとどまり、グローバル平均の81%を大きく下回った。「特に変化はない」との回答も37%に上っている。AIツール導入後に仕事の満足度が高まったと感じている日本の従業員は48%で、こちらもグローバル平均の71%との差が大きい。
さらに、AIによる職務・役割の変化が進む中で、スキル習得について「企業のリスキリング支援には頼れず、自力で行う必要がある」と考える日本の従業員は50%に上り、グローバル平均の45%を上回った。企業からの支援体制が従業員の実感に追いついていない実態が浮かぶ。
人材・組織戦略への影響、経営層も難しさを認識
AIを使いこなせる人材の獲得・育成に難しさを感じている日本の経営層は64%に上り、グローバル平均の62%を上回った。AIの影響で若手人材(エントリーレベル職種)に求められるスキルが変わると考える経営層は87%に達し、グローバル平均の85%を上回っている。
一方、AI活用を前提とした新たな若手向け職種を創出する可能性が高いとした経営層は60%で、グローバル平均の73%を下回り、若手採用を増やす意向を示した経営層も41%とグローバル平均の52%に届かなかった。AIによる変化を認識しつつも、若手育成・採用の面では前向きな動きに転じきれていない様子がうかがえる。
「人・AI・ビジネス」の一気通貫の変革が鍵に
アクセンチュア株式会社 執行役員 Lead – Talent, Japan の本徳亜矢子氏は、「企業のAI投資を持続的な成果へと結びつけるには、技術の導入や個々の従業員の試行にとどまらず、人の役割や仕事、組織のあり方までを変えていく必要がある」とコメント。AIによって実現すべき価値を明確にし、人・AI・ビジネスが相互作用しながら共進化する仕組みを企業能力として確立することの重要性を指摘した。
また、常務執行役員 Lead – AI and Data、AIセンター長の保科学世氏は、「この差は、技術の優劣ではなく、技術を人と組織にどう組み込むかの差だ」と分析。AI投資を成果に変える鍵は、システム・業務・人の三要素を一気通貫で動かし、人の判断と創造性が活きる場所を意図的に設計し直すことにあるとし、「単純に仕事を削るのではなく、AIを前提に一段上の仕事へと引き上げること。リスキリングを個人任せにせず、学び続けられる環境を組織として用意する、人を中心に据えた変革こそが、AI投資を持続的な成長へと変えていく」と述べている。
今回の調査は、20カ国・19業種を対象にC-suite(経営層)3,000名と従業員3,000名に実施されたもので、日本では経営層・従業員それぞれ100名から回答を得ている。
調査期間は2026年4月から6月まで。AIが企業の変革や人材へ与える影響が急速に拡大する中、投資額の多寡だけでなく、それを組織的な成果や従業員個々の実感へとつなげられるかどうかが、今後の日本企業の競争力を左右しそうだ。
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