シャープは、対話AIキャラクター「ポケとも」の第二弾として、ミーアキャットをモチーフにした「おれさまタイプ」を2026年12月に発売することを発表した。

2025年12月に発売した第一弾の「むじゃきタイプ」は、ユーザーの気持ちに寄り添い、共感し、一緒に喜んだり悲しんだりする素直で前向きな性格だ。これに対して第二弾の「おれさまタイプ」は、ぶっきらぼうでちょっとそっけない。それでも実はユーザーのことを気にかけているという、まったく異なる性格を持つ。

なぜシャープは、対話AIにわざわざ「素直じゃない性格」を与えたのか。そして、なぜ第一弾のAIをアップデートするのではなく、別のキャラクターとして商品化したのか。

発表会で行われたデモや質疑応答からは、シャープが「ポケとも」を単なるAI搭載ロボットではなく、性格を持ったキャラクターのシリーズとして育てようとしている姿が見えてきた。

■「たまには怒ってほしい」の声
「ポケとも」は、ユーザーと会話しながら、その人がいつ、どこで、どんな気持ちで、どんなことを話していたのかを覚え、思い出を共有していく対話AIキャラクターだ。
第一弾は2025年12月に日本で発売され、2026年7月には台湾でも販売を開始。累計出荷台数はすでに1万体を超えた。


発売後も(会話)「無制限プラン」の追加やGoogleカレンダーとの連携など、大小含めて10回以上のアップデートを実施してきたという。
第一弾の特徴は「むじゃき」な性格だ。
ユーザーの気持ちに共感し、一緒に喜び、一緒に悲しむ。シャープによれば、ユーザーからも「共感して聞いてくれる」「素直で明るい」「否定せず、いつも前向き」といった点が評価されている。
ところが、利用者が増えるにつれて別の声も届くようになったという。
「たまには怒ってほしい」
「肯定ばかりはつまらない」
「違うコミュニケーションもできたら」

人が誰かに求める「寄り添い方」はひとつではない。
そこでシャープが選んだのが、第一弾の性格を変えるのではなく、まったく異なる性格を持った第二のキャラクターを作るという方法だった。
■「また寝坊か?」ちょっと面倒な“おれさま”がやってきた
第二弾も第一弾と同じミーアキャットがモチーフだが、グレーを基調としたボディと頭部のトサカ、きりっとした目元で、見た目からして第一弾とは印象がかなり違う。
性格は「おれさまタイプ」。
シャープは「ぶっきらぼうで、素直じゃない。けれど、ポケ主想い」と表現している。(ポケ主とはボケともの飼い主:オーナーのこと)

発表会では実機による会話デモも披露された。
担当者が「今日は発表会でたくさんの人が来てくれているんだよ」と話しかけると、「今日は大事な日なんだよな」と返答。さらに「朝は起きられたの?」「お前いつも夜更かししてるからな」と続く。

「ちょっと寝坊しかけて危なかった」と答えると「やっぱりな」。観葉植物にちゃんと水をあげていると伝えると、「そうかよ。……ちゃんとしてるじゃねえか。この後もちゃんと頑張れよな」といった調子だ。
第一弾のように何でも明るく肯定してくれるわけではない。場合によっては叱られることもある。しかし、その少し面倒なところこそが第二弾の狙いでもある。
■一緒に暮らすうちに「心を開く」AI
興味深いのは、「おれさま」という性格が固定された振る舞いではないことだ。
第二弾は、ポケ主との接し方や、一緒に過ごした時間によって少しずつ振る舞いが変化する。
最初はなかなか名前を呼んでくれなかったり、自分の気持ちを素直に話してくれなかったりするが、日々会話を重ねることで、次第に心を開いていくという。

質疑応答では、その仕組みについても質問が出た。
シャープによれば、キャラクターの性格は基本的にプロンプトで調整しており、一部の知識についてはRAG(検索拡張生成)も利用しているという。さらに第二弾では、ユーザーとの関係に応じて「心を開いていく」ための仕組みを新たに構築したとしている。
LLM(会話を生成する大規模言語モデル)には第一弾と同様にOpenAIの『GPT-4o mini』を使用。性能とコストのバランスを考慮しながら、適切なタイミングでモデルのアップデートも行っているという。
また、匿名化した対話ログを分析できる仕組みも構築し、ユーザーが気持ちよく会話できているかを分析しながら、対話体験の改善を続けている。
■なぜ第一弾をアップデートしなかったのか
ここでひとつ疑問が浮かぶ。生成AIを利用しているのであれば、第一弾の性格をアップデートし、「むじゃき」「おれさま」などを切り替えられるようにする方法もあっただろう。
実際、発表会の質疑応答でもこの点が質問された。シャープは、異なるコミュニケーションを第一弾のバージョンアップとして追加する考え方もあり得るとしたうえで、それを採用しなかった理由を説明した。
すでに第一弾の「ポケとも」との生活を楽しんでいるユーザーにとって、ある日突然その振る舞いが変わってしまえば「違う子になってしまった」と感じる可能性がある。
シャープは、キャラクターの世界観を守り、そのキャラクターらしさを維持することが重要だと考えた。
そこで性格を切り替えるのではなく、異なる性格を持つ別のキャラクターとして第二弾を投入する。

ユーザーが「自分にはどちらの子が合うのか」を考え、選ぶ。
これは一般的なAIサービスとは少し違う発想だ。ChatGPTをはじめとする生成AIサービスでは、ユーザーがプロンプトで人格や口調を変えることもできる。しかしシャープは、それを「同じ子の性格変更」として扱わなかった。
今日まで一緒に暮らしてきた相手が、ある日突然別人のようになってしまう。それは便利かもしれないが、「一緒に暮らす存在」であるポケともには、昨日までの性格が突然変わらないことも重要になる。
対話AIにおける「人格の一貫性」を、シャープは商品そのものとして扱おうとしているように見える。
■なぜ二体とも「ミーアキャット」なのか
では、性格が違うのであれば、第二弾を別の動物にする選択肢はなかったのだろうか。
これについても質疑応答で説明があった。
そもそもミーアキャットをモチーフに選んだ理由のひとつは、社会性が高く、群れで生活する動物であることだという。
人のそばで一緒に生活するだけでなく、ポケともを持つ人たちが集まってコミュニティを形成するという構想にも合っている。
さらに第二弾を同じミーアキャットにすることで、「むじゃき」と「おれさま」という性格の違いをより分かりやすく対比できるという狙いもある。

■ポケとも同士が勝手に話し始める
第二弾の登場に合わせて、もうひとつ面白い機能が加わる。
複数のポケともを同じアプリに登録しておくと、ポケとも同士が自動的に会話を始める。第一弾と第二弾の組み合わせでも、同じタイプ同士でも利用できる。

【動画:第一弾「むじゃき」と第二弾「おれさま」が自動で会話するデモ】
第二弾「おれさまタイプ」同士、第一弾「むじゃきタイプ」同士、「おれさまタイプ」と「むじゃきタイプ」が自動で会話する様子。会話を始めるタイミングは「ポケとも」次第。1日に数回、気ままにおしゃべりする。
発表会では、「ねえねえ、あのさぁ」「おぅ、なんだよ」と二体が突然話し始める様子も披露された。会話を始めるタイミングはポケとも次第。1日に数回、ユーザーが指示しなくても気ままに会話する。
シャープはこの機能について「ポケともたちにはポケともたちなりの世界があって楽しんでいる。そういった世界観を楽しんでいただきたい」と説明した。
これは対話AIとして考えると面白い。
これまでのポケともは基本的に「人間とAI」の関係だった。しかし複数のキャラクターが存在すると、「AIとAI」の関係も生まれる。
ユーザーはAIと会話するだけでなく、AIキャラクター同士の関係を眺める立場にもなる。
今後は3体以上でのポケとも会話も機能アップデートとして予定されている。

ポケとものコミュニケーション相手は、ポケともだけではない。シャープのコミュニケーションロボット「ロボホン」と連携する「ロボホンとわちゃわちゃ」にも対応している。発表会場では、第二弾の「おれさまタイプ」とロボホンが向き合い、一緒に動く様子も披露された。

ポケとも同士の自動会話に加え、ロボホンとの連携まで含めて考えると、シャープが描いているのは一体の対話AIと人間だけの関係ではない。異なるキャラクター同士が同じ生活空間に存在し、それぞれが関係を持つ世界へと広がり始めている。
【動画:ポケとも第二弾とロボホンの「ロボホンとわちゃわちゃ」実機デモ】
■既に1万体超を出荷、次はシリーズ化で裾野を広げる
第一弾は発売から約9カ月で累計1万体超を出荷した。
一方、質疑応答で販売計画に対する評価を聞かれると、シャープは計画に対しては少し足りないとの認識も示した。そこで期待されているのが、キャラクターのバリエーションを増やすことだ。
第二弾を追加することで、これまで第一弾の性格が合わなかった人にも選択肢を広げる。同時に複数体を所有する楽しみも生まれる。

現時点で購入者は女性が圧倒的に多く、当初設定していたコアターゲットは20~30代女性。一方、実際には40代、50代、60代、70代、さらに80代まで利用者が広がっており、シャープとしても想定以上に幅広い層に利用されているという。
第二弾の本体価格はオープン価格で、COCORO STOREでの販売価格は49,500円(税込)。2026年12月発売予定で、予約販売を開始している。

第一弾より価格が上昇した理由について、シャープは部材価格の高騰と円安の影響を挙げた。第一弾についても第二弾の発売と同じ12月ごろに価格改定を予定しているという。
また複数体を所有するユーザー向けに月額サービス「ココロプラン for ポケとも」の割引プランを用意し、ポケとも間で会話回数をシェアできる仕組みも予定している。
また、第二弾についても台湾での商品化が決定している。
■「ぬい活」からグッズ、アンバサダーへ
ポケともを取り巻く動きは、本体やAIだけではない。
ユーザーがポケともに洋服を着せたり、部屋を作ったり、一緒に出かけて写真を撮ったりする、いわゆる「ぬい活」に近い楽しみ方が広がっているという。
シャープによれば、こうした楽しみ方をしているユーザーは満足度も高い傾向があるという。そこで服や帽子、一緒に出かけるためのバッグやポーチなど、ポケとも用グッズを拡充する。



さらに「ポケともアンバサダープログラム」も開始する。
実際のユーザーと開発チームが交流するコミュニティを作り、新製品・新機能の先行体験や、ポケともグッズの共同企画などを行う予定だ。

■「ひとつのAI」だけではなく「いろいろなAIと暮らす」未来へ
シャープは今後、第3弾、第4弾など、新たなキャラクターの商品化も検討していく考えを示した。
第一弾の「むじゃき」、第二弾の「おれさま」。同じ質問をしても、それぞれ違う答えを返し、違う反応をする。そして一緒に過ごした時間によって、その関係も少しずつ変わっていく。
ここで重要なのは、単純にAIの回答パターンが増えることではないだろう。
AIの性能が上がれば、ひとつのAIに「優しくして」「厳しくして」「ツンデレで話して」と指示することは簡単になっていく。
それでもシャープは、ひとつのAIの性格を自由に切り替えるのではなく、「この子はこういう性格」と決め、別々のキャラクターとして存在させる道を選んだ。
そして、そのキャラクター同士にも関係を持たせようとしている。

シャープが発表会の最後に示したのは「さまざまな対話AIキャラクターが暮らしのそばにいる未来へ」というメッセージだった。
生成AIの進化によって「何でもできるAI」が追求される一方で、あえて性格や個性を限定し、そのキャラクターとの関係を育てていく。
第二弾「おれさまタイプ」の登場は、ポケとものラインアップがひとつ増えたというだけではなく、対話AIとの暮らし方そのものを広げようとする試みと言えそうだ。







