ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進

ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進
  • ロボット議連、NVIDIA、トヨタらが「日本のフィジカルAI戦略」を議論 APTOが豊洲ラボ開設、データファクトリー構想を推進

AI開発向けのデータ収集・アノテーションなどを手がける株式会社APTOは2026年8月21日、東京都江東区・豊洲にフィジカルAI向けの実機データを収集する「豊洲ラボ」を開設した。

APTOが豊洲に開設したフィジカルAI向けラボ。人が操作する側の装置と、動作を再現するロボットアームなどを使って実機データを収集する

「生成AI」ではWeb上の膨大なテキストや画像を学習データとして利用できた。一方、ロボットを実世界で動かす「フィジカルAI」では、「物をつかむ」「運ぶ」「組み立てる」といった実際の動作データを、ロボットやセンサーを使って収集する必要がある。しかも、ただ大量に集めればよいわけではない。データの取り方や品質が、学習後のロボットの動作や精度を左右する。

APTOが豊洲ラボで始めたのは、こうしたフィジカルAI時代の「データファクトリー」を構築する取り組みだ。データファクトリーとは、文字通り「データ工場」。ロボットの実機データを収集するだけでなく、品質管理、学習、評価までを循環させ、AIを継続的に改善するための仕組みだ。

発表会には、参議院議員でロボット議員連盟(ロボット議連)事務局長の山田太郎氏、NVIDIA ロボティクス事業部 事業部長の平野一将氏、トヨタ自動車 未来創生センターの土永将慶氏らも参加。「日本のPhysical AI戦略」をテーマに、日本がどのようなデータを蓄積し、どう世界と戦っていくのかを議論した。

■AI開発のボトルネックは「データを準備するところ」

APTOは2020年に創業し、AI開発に必要なデータの収集、アノテーション、データセットの構築などを手がけてきた。

同社が掲げるミッションは「技術革新をリードする高品質なデータを生み出し続ける」。高品氏は、AIモデルやアルゴリズムの進化が続く一方で、その基盤となるデータについては、品質や入手性の面で十分な環境が整っているとは限らないと説明した。

株式会社APTO 代表取締役CEO 高品良氏

同社は「Data-Centric AI開発」を掲げ、モデルそのものだけではなく、そのモデルに与えるデータを整えることでAIの性能向上を図る考え方を重視している。
サービスとしては、企業がAI開発用データを収集・アノテーションする「AI Data Platform」、APTOにデータ収集からモデル開発などを依頼する「AI Solutions」、学習・評価用データを購入できる「AI Datasets」などを展開している。

画像、動画、音声、自然言語だけでなく、3D LiDARなどにも対応する。

■生成AIからフィジカルAIへ 「データ」が再び難しくなる

こうしたデータ事業の延長線上にあるのが、今回の豊洲ラボだ。
LLMであれば、文章や画像、音声などデジタル空間に存在するデータを扱うことができる。ところが、ロボットに実世界の作業を学習させる場合は事情が異なる。
実機データを使う場合には、人がロボットを操作し、その際のカメラ映像や関節の動きなどを記録していく。
豊洲ラボには、ロボットアームを人が直接操作するための装置と、実際に作業するロボットアームを組み合わせたデータ収集設備が並ぶ。

人の操作をロボットの動作データとして記録する設備。実世界で動くAIでは、こうした実機を使ったデータ収集が必要になる

ここで重要なのが、「実機データは、集めればすべて同じ価値になるわけではない」という点だ。

パネルディスカッションでも高品氏は、オペレーターによってロボットの操作方法が異なることを指摘した。同じ物を取る作業でも、カメラから対象物がきちんと見えるように操作する人もいれば、途中で対象を見失ってしまうケースもある。ロボットがたどる軌道にも個人差が生じる。
だからこそ、どのように操作し、どのようなデータを残すのかを整え、「用途にあった適切なデータを学習させる」ことが重要になるという。
これは、フィジカルAIにおける「データファクトリー」という言葉を理解するうえで重要なポイントだろう。

大量のロボットを並べて長時間動かすことだけがデータファクトリーではない。何を学ばせるためのデータなのかを決め、その用途に適した品質で継続的に生産する仕組みそのものが必要になる。

■「ここにしかないデータ」をどう作るか

世界ではフィジカルAI向けデータの大規模な収集競争も始まっている。
パネルディスカッションでNVIDIAの平野氏は、中国などでは非常に大量のロボットデータを集める動きが進んでおり、汎用データの「量」だけを追いかける競争では厳しい可能性があるとの認識を示した。

そのうえで重要になるのが「ここにしかないデータ」だと指摘した。
特定の工場、特定の作業、特定の製造ノウハウなど、日本企業の現場にしか存在しないデータを、どう安全に収集し、学習やファインチューニングにつなげるか。さらに、データキュレーションや学習までのパイプラインを整えることが重要になるという。

これはAPTOの豊洲ラボとも重なる考え方だ。
日本が中国と同じ方法で大量の汎用ロボットデータを集めるのではなく、製造業をはじめとする日本の現場に蓄積された経験を、AIが学習できる高品質なデータへ変換する。その仕組みを国内につくれるかどうかがポイントになる。

NVIDIA ロボティクス事業部 事業部長 平野一将氏。汎用データの量だけではなく、「ここにしかないデータ」をどう安全に学習へつなげるかが重要になると指摘した

■NVIDIAなど各社との連携で「データファクトリー」を広げる

今回の発表を通してもうひとつ見えてきたのが、APTOがさまざまな企業や組織との連携を前提に事業を広げようとしていることだ。
AIやロボティクスは、データだけで完結するものではない。
ロボット本体、ハンドやセンサー、AIモデル、GPUなどの計算基盤、シミュレーション、現場へのシステムインテグレーションまで、多くの技術が必要になる。
APTOはこれまでにもNVIDIAのプログラムへの参加などを通じてAI開発に取り組んできたという。発表資料には、国内外の企業や研究機関との幅広い実績も示された。

フィジカルAIでも同様に、APTOがすべてを自前で用意するのではなく、ロボットメーカー、販売会社、AIプラットフォーム企業、ユーザー企業などと組みながら、データ側を担う構図が見えてくる。

実際、パネルディスカッションでは、ロボット販売企業がハードウェアを提供し、その「裏側のソフト側」をAPTOが支援するといった連携についても高品氏が言及している。

フィジカルAIのデータファクトリーは、巨大な施設を1社で建設して完結するというより、多様な企業が持つ技術と現場をつなぐことで規模を広げていく形になるのかもしれない。

■トヨタも実機データを収集 「実験で終わらせない」

発表会にはトヨタ自動車 未来創生センターの土永将慶氏も参加した。
未来創生センターでは約300人規模で研究開発を行い、ロボットについても長年研究を続けている。現在は、自社工場で人の隣で作業することを目指したロボットなどの開発を進めているという。

また、APTOと同じようにテレオペレーションに加え、ロボットのグリッパと同一形状の操作デバイス「YUBI(Yielding Universal Bidigital Interface for Bimanual Dexterous Manipulation at Scale)」を使ったロボットデータ収集にも取り組んでいる。

トヨタが示した考え方で興味深いのは、フィジカルAIを「実験」で終わらせないことだ。

会場で示したスライドでは「USE(現場で使う)」→「COLLECT(データを集める)」→「LEARN(学習・評価する)」→「DEPLOY(再び現場へ戻す)」という循環を示した。

現場でロボットを使い、そこで新たなデータを集め、モデルを改善し、再び現場へ投入する。つまり、一度大量の学習データを用意してAIを完成させるのではなく、現場そのものを継続的にデータが生まれる場所にする発想だ。

これはAPTOが目指すデータファクトリーとも非常に近い。

トヨタ自動車 未来創生センター 土永将慶氏。トヨタは実機で使い、データを集め、学習・評価し、再び現場へ戻す循環を重視している

■精度90%では使えない現場もある では、どこから始めるのか

フィジカルAIを実装する際の難しさについても議論になった。製造現場では「90%動く」ことが必ずしも十分とは限らない。
例えば加工や組み立てで10回に1回失敗すれば、大きな損失につながるケースもある。そのため、土永氏は「90%でも十分」という話ではなく、用途によって求められる精度は大きく異なるとの趣旨で説明した。

一方、最初からすべての工程で100%に近い性能を求めれば、実装は進まない。
そこで、部品を落としても大きな損害にならない作業など、失敗を許容しやすい工程から導入する考え方が現実的だという。フィジカルAIには、失敗した後に自らリカバリーできる可能性もある。

つまり重要なのは「90%でいい」と割り切ることではなく、現在のAIでも価値を出せる作業を選び、そこでデータを蓄積しながら性能を上げていくことになる。

■ロボット議連・山田太郎氏「実装を早く体験することが重要」

会場には、ロボット政策を進める立場から参議院議員の山田太郎氏も登壇した。
山田氏は、AIやロボットを研究段階だけにとどめず、社会実装を進めることの重要性を強調。生成AIやAIエージェントが短期間で仕事の中に入り始めたように、ロボットについても国民や産業界が「実際に使われ始めた」と感じられる状況を早く作らなければ、投資や社会的な機運が続かないとの考えを示した。

また、フィジカルAIではデータだけでなく、センサー、アクチュエータ、通信、エッジコンピューティングなど、実世界側の技術も重要になると指摘した。
生成AIで「データと計算資源」が注目されたAIの競争は、ロボットになることで再びハードウェアと現場へ戻ってくるというわけだ。

参議院議員でロボット議連事務局長の山田太郎氏。フィジカルAIでは研究だけでなく、社会実装を早期に進める必要性を強調した

■山田氏がトヨタに「ロボット、本気ですか」

パネルでは、山田氏が土永氏に「トヨタさんはロボット、本気かどうかを今日は知りたい」と迫る場面もあった。
Teslaをはじめ、BMWとFigure、中国の自動車メーカーなど世界では自動車産業とヒューマノイド開発の距離が急速に近づいている。日本ではトヨタが本格的に取り組まなければロボット産業全体が進まないのではないか、という問題提起だ。

これに対して土永氏は、会社全体を代表する回答ではないと前置きしながらも「覚悟を持って進めています」と答えた。

■日本の勝負は「ロボットの台数」だけではなく「現場から生まれるデータ」

世界のフィジカルAI競争を見ると、ヒューマノイドの台数や投資額など派手な数字に目が向きやすい。しかし、今回のAPTOの発表会で繰り返し語られたのは、その裏側にある「データ」だった。

ロボットを動かしてデータを取る。ただし、何でも集めればよいわけではない。用途に応じて収集方法を揃え、品質を管理する。モデルを学習・評価し、再び現場に戻す。
そして、そこで生まれた新しいデータをまた学習へ使う。

フィジカルAIが実世界で使われるほど、この循環が重要になる。
中国などが圧倒的な台数を使って大量の汎用データを集める中、日本が同じ「量」の勝負をそのまま追いかけることが最善とは限らない。
製造業、物流、建設、サービスなど、日本の現場には長年蓄積された作業やノウハウがある。そこから「ここにしかないデータ」をどう取り出し、AIが学べる形へ変えていくのか。

■ロボット議連・山際大志郎会長も駆けつけ、ロボット操作を体験

発表会後半には、ロボット議員連盟会長の山際大志郎氏(自由民主党 衆議院議員)も駆けつけた。挨拶の後、豊洲ラボで実際にデータ収集用のロボット操作を体験した。

自由民主党 衆議院議員、ロボット議員連盟会長の山際大志郎氏
山際氏は豊洲ラボでロボット操作によるデータ収集を体験

■高品質なデータを収集する仕組みづくりが重要

実機から継続的に高品質なデータを収集する仕組みづくりが、フィジカルAI開発の新たなテーマになっている。
APTOが豊洲に開設したラボは、そのデータファクトリー構想を実践する拠点のひとつだ。
しかし今回、ロボット議連、NVIDIA、トヨタをはじめ、ロボットやAIに関わる企業・関係者がこの場所に集まったことを鑑みても、APTOが目指しているものはラボの中だけでは完結するものではない。

日本各地の現場と企業をつなぎ、高品質なフィジカルAIデータが継続的に生まれる仕組みをどう作るか。
豊洲ラボは、APTOが掲げる「Physical AI Data Factory」の実践拠点として動き始めた。

《神崎 洋治》

関連タグ

神崎 洋治

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

ニュースレター配信中!無料会員登録をしていただくと、定期的に配信されるニュースレターを受け取ることができます。また会員限定の記事を閲覧することも可能になります。

編集部おすすめの記事

特集