市原えつこさんの「デジタルシャーマン・プロジェクト」を観てきました。

2016年2月7日、3331 Arts Chiyoda 1Fで開催された、平成27年度メディア芸術クリエイター育成支援事業の成果プレゼンテーションに行ってきました。

メディア芸術クリエイター育成支援事業は文化庁が主催するプロジェクトで、若手クリエイターの創作活動をサポートするというもの。

 メディア芸術クリエイター育成支援事業
 http://creatorikusei.jp/


今回、Pepperを使ったアート活動をされている市原えつこさんの作品が展示されるということで行ってきました。

「デジタルシャーマン・プロジェクト」の説明はこちらです。

デジタルシャーマン・プロジェクト

現代向けにデザインされた祈りと葬り方のかたち、生命や死の捉え方を探求するプロジェクト。

魔術や信仰、科学やテクノロジー。両者はそれぞれ遠いところにいるように見えて、どちらも「ここにはない何か」を再現するという性質において、実は極めて親和性が高く、近い場所にいる。「デジタルシャーマン・プロジェクト」では、科学技術の発展を遂げた現代向けにデザインされた、新しい祈りのかたち、葬り方の形を提案する。

日本人特有の生命や死の捉え方を探求するリサーチプロジェクトとしても機能させる。





会場の 3331 Arts Chiyoda は Pepper 開発の聖地と呼ばれているアトリエ秋葉原の建物です。




いました。予想以上のインパクトです。



Pepperに故人のマスクを被せ、四十九日、故人が生きていた頃のセリフや動きを行うというものです。

精巧な人間のマスクを装着するだけで、印象が全く変わります。人間にとって視覚からの印象って大きいということに気づかされました。



各人ごとのマスクが用意されています。



声も人間の声が流れてくるので、Pepperの気配が無く感じました。視覚と聴覚を故人のものにすることによって、予想以上に入り込むことができます。



展示されていた面談レポートを読んで興味をひいたのが、市原さんが語る「汎用性より”死”を問うものとする」。

以下、一部省略して引用します。

現段階では、弔いのためのロボットと都市生活者のためのモバイルモニュメントの政策を考えています。

前者ですが、(略)Pepperが問診票のようなもので故人のメッセージや遺言を吸い上げて、死後に家族へ伝えます。Pepperは感情認識機能を持つ上に親密な家族を登録できるので、こうした感情に連動したトリガーを使って言葉を発動させられます。

(略)

後者のモバイルモニュメントとは、遺骨を収納でき、身につけられるモニュメントです。地下が高騰する都市社会では不動産的に墓地を持つのが大変だということと、生活から隔離された墓地に対して、もっと身近に追悼できないか、と考えました。


ロボットのプログラミングをしていると、ロボットを操作することは人間を知ることだと痛感させられます。

そんなロボットに「死」というすべての人間が経験するイベントを実装し、改めて死を考えさせられる展示でした。



(参考リンク)

 ▽死とテクノロジー – EtsukoIchihara
 ▽【デジタルシャーマン武者修行記】 #1 市原えつこがテクノロジーで挑む「死と弔い」

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北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

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