“ロボットの街” つくばに世界の最新ロボットが集結! ロボワンも大盛況
2月13日(土)・14日(日)、茨城県つくば市のつくばカピオにて「つくばロボットフェスタ」が開催され、サイバーダインの「HAL」をはじめとした国内のロボットと世界のロボットの展示が行われました。今回の催しは、今年の5月15日から同市で開かれる「G7茨城・つくば科学技術大臣会合」を記念し企画されたもので、会場にはG7(日本・フランス・アメリカ・イギリス・ドイツ・イタリア・カナダ)のロボットが集結。最新のロボットたちが紹介されました。
また同会場内では、二足歩行ロボットの競技大会「ROBO-ONE(ロボワン)」が同時開催。今回の記事では、両イベントの盛況ぶりをレポートしていきます。
まずは「つくばロボットフェスタ」で展示されていたG7各国のロボットを国別にご紹介していきます!
日本
サイバーダイン「HAL」
入り口の近くには、つくば市に本社を置くサイバーダイン社のロボットスーツ「HAL」が展示されていました。Hybrid Assistive Limbの頭文字を取り「HAL」と名付けられたこちらのロボットスーツは、名称通り「人体の力にテクノロジー(機械や情報)を融合することによって補助をする肢(脚)」であり、福祉や医療分野の動作支援、工場での重作業支援、災害現場でのレスキュー活動支援など、幅広い応用が期待されています。
HALは、事前予約をすることでサイバーダインのスタジオで装着体験をすることができます。詳しくはサイバーダインのHPをご覧ください。
Honda歩行アシスト
Hondaの歩行アシストは、一見「HAL」と同じ用途のように感じますが、作業支援をすることを目的に作られた「HAL」とは違いこちらは歩行のサポートに特化したシステムで、「ASIMO」で培ってきた歩行理論を基に開発されました。
「股関節の屈曲による下肢の振り出しの誘導と伸展による下肢の蹴り出しの誘導を行います」とHPに記載されている通り、「倒立振子モデル」を用いることで効率的な歩行サポートを実現しています。倒立振子モデルは、バランスを保つための制御技術で、セグウェイや村田製作所のチアリーディング部の開発にも用いられています。
Honda歩行アシストもHALもリースによる導入が進められており、高齢化していく社会を助ける存在として注目を集めています。
株式会社Doog「カルガモ隊」
つくば発のロボットベンチャー、株式会社Doog(ドーグ)のお供ロボット「カルガモ隊」。ロボットの目の前に立ち、ボタンを押すと、人の形状を認識し追従(お供)を開始します。
イベント時には、今回の「カルガモ隊」のように子供たちが楽しめるブースとして出展されることが多いようですが、ベースとなるお供ロボット自体は、旗などの販促物を立てて、人の後ろを追従させることで、目立つ販促用のロボットとして活用することもできるみたいです。
RT.ワークス「RT.1」
RT.1(アールティーワン)は、歩行をサポートしてくれる「ロボットアシストウォーカー」。Honda歩行アシストが装着して歩行を補助する一方、「RT.1」は “手を添えて歩くこと” で歩行アシストをおこなってくれます。
歩くスピードや地面の形状を検知し歩行を安全に導いてくれる一方、上り坂ではパワーアシストを、下り坂では自動減速をおこなってくれるなど、歩きやすいように補助してくれます。また、坂道で手を放してもRT.1自身が自動でブレーキをかけて止まるので常に手を添える必要もなく、安心して歩行をすることができます。実際にデモでRT.1と一緒に坂道を下ってみましたが、減速しながらも「重い」といった感覚がなかったのが印象的でした。
産総研「マイクロモビリティ」
つくばモビリティロボット実験特区で実証実験がおこなわれている産総研の「マイクロモビリティ」。マイクロモビリティは「セグウェイ」に代表されるパーソナルモビリティの一種で、ガソリン車が市街地を走ることがない未来を想定して作られています。つくばモビリティロボット実験特区では、このようなパーソナルモビリティの実証実験が行われており、その様子は「ロボット特区実証実験推進協議会」のHPで紹介されています。
その他にもセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」が展示されていたり、
Hondaのuni-cubの体験コーナーがあったりと、モビリティロボットを中心とした日本発のロボットが数多く展示されていました。
イタリア
Genny Mobility(ジェニーモビリティ)
イタリアブースで紹介されていたのは、Genny Mobilityというロボット車椅子です。Genny Mobilityは、車椅子生活をしていたイタリア人のPaolo Badano氏が、「車椅子にセグウェイの技術を組み込むことはできないか」と考え、始まったプロジェクト。セグウェイのもつ操作性や走破性が組み込まれた車椅子で、つくばモビリティロボット実験特区にて、実証実験が行われています。
▽ 外部リンク
http://www.gennymobility.com/
イギリス
Miro(ミロ)
イギリスブースで紹介されていた「Miro(ミロ)」は、イギリス生まれの成長する犬型ロボット。
哺乳類の脳のアーキテクチャを基にソフトウェアが設計されており、頭を撫でる行為によって成長していく仕様になっています。また、それぞれが個性を持っており、成長することによって、個体ごとに性格もまったく別のものが出来上がるそうです。
頭を撫でたときの反応や、重たそうに目の半分を覆っているまぶたが愛らしさを醸し出しています。子供達も本物の犬を可愛がるように、頭を撫で続けていました。
ドイツ
KUKA「LBRiiwa(エルビーアールイイヴァ)」
ドイツブースでは、産業用ロボットで世界的なシェアを持つ「KUKA」のロボットアームが展示されていました。会場では、飴を一つ掴んで、子供達にあげるというデモがおこなわれていました。動きの正確性や安全性が確立されているからこそ可能なデモです。
KUKAは、日本の安川電機やファナック、スイスのABB社とともに世界の4大産業用ロボットメーカーとして名を馳せています。
カナダ
Turtlebot2(タートルボットツー)
カナダブースで紹介されていた「Turtlebot2」は、ロボットではなく、カナダのCLEARPATH社が開発している自律走行ロボットの開発用プラットフォームです。ROS(Robot Operating System)を学ぶための学習・入門機として使われることが想定されており、一般的な既製ロボットコンポーネントを一体化しています。
アメリカ
Double Robotics「Double(ダブル)」
アメリカのブースではDouble Robotics社の「Double」が展示されていました。
「Double」は、アメリカで注目を集めているテレプレゼンスロボットの一つ。テレプレゼンスロボットとは、遠隔操作でコミュニケーションを取ることを想定して作られたロボットです。ベース部分を遠隔操作し、モニターに遠隔操作者の顔を映すことで、さながらその場にいるかのようにコミュニケーションをすることができます。
アメリカでは、特に企業におけるテレプレゼンスロボットの導入が進んでおり、中でもDoubleはiPadを装着することで簡単に使用することができるという扱いやすさ、そして比較的安価な価格設定により、最も注目を集めるテレプレゼンスロボットのうちの一つと言われています。
フランス
Aldebaran Robotics「Nao(ナオ)」
フランスブースでは、みんな大好きアルデバランのコミュニケーションロボット「Nao」が人気を集めていました。
Naoは、二足歩行型のコミュニケーションロボットで、ソフトバンクから販売されているPepperのお兄さんのような存在です。Pepperと同じく開発ツールの「Choregraphe(コレグラフ)」でアプリケーションを簡単に作成することができます。二足歩行であるという点でPepper以上に豊富なアクションを取ることができ、サイズ感もちょうど良いため、企業への導入も着実に進んでいます。
以上がG7のロボットブースのご紹介でした! その他にも帰り際にPepperと記念撮影ができたり、プリメイドAIが踊っていたりと、ロボットに溢れた会場に来場者もとても楽しんでいる様子でした。それではここからは、さらに大きな盛り上がりを見せていた「ROBO-ONE」のレポートに移ります。
第28回ROBO-ONE(ロボワン)
会場の一角では、二足歩行のロボット競技大会ロボワンが開催されていました。ロボワンは、ロボット同士を戦わせるタイプの競技会で、3分間で多くのダウンを取ったほうが勝ち、または相手のロボットから3ダウンを奪えば勝ちというルールになっています(反則負けやTKOなどもあります)。ルールを詳しく知りたいという方は、ROBO-ONEのHPをご覧ください。今回の記事では、2日目の2月14日(日)におこなわれた決勝トーナメントの模様をレポートします。
前日におこなわれた予選には100体以上のロボットが参加。社会人や学生が全国各地から集まりました。そのうち決勝トーナメントへと駒を進めたのは、シード権が与えられたロボットを合わせた合計49体のロボット。優勝賞金50万円と、ロボワン優勝という日本一の栄誉を求めて、熱い戦いが繰り広げられました。
「相手のロボットを倒すこと」を目的に機能が搭載されており、相手の脚を掴んでひっくり返すタイプのロボットや、手を下から上に突きあげてアッパーのような技を決めるロボット、パンチをするロボット、そして低い体勢から蹴りを入れるロボットなど様々な技をもつロボットが決勝トーナメントに参加しています。
普段見ることのないロボット同士の格闘に、来場者も徐々に集まり、最終的には200名〜300名ほどの人たちが観戦していました。
試合の合間には、惜しくも予選落ちを喫したロボットや、参加者が持ち寄った個性的なロボットたちがパフォーマンスを始めます。
決勝戦
そして2日間の激闘の末、決勝へと駒を進めたのは、吉田ファミリアさんの「Gargoyle KID(ガーゴイルキッド)」(左)とNAKAYANさんの鳥型ロボット「レグホーン」(右)の2体。Gargoyle KIDは脚を掴んで倒す投げ技を武器に、レグホーンは大きな手と自作サーボによるパワフルなアッパーを武器に、どちらも圧倒的な強さで勝ち進んできました。
NAKAYANさんも吉田ファミリアさんも大会の常連で、長らく優勝候補でありながら、まだ優勝を手に入れることができていないお二人。白熱の決勝戦が予想されます。
試合は3分間で、先に3ダウンを奪ったほうが優勝。鳥型の「レグホーン」が先に2ダウンを奪って先行するも、「Gargoyle KID」がそこから形勢を立て直し2ダウンを奪い返すという壮絶な展開。両者2ダウン、会場の熱気は最高潮。果たして結果は…。
あっ!!
一瞬スローモーションになったかのように「レグホーン」が宙を舞い、少ししてお客さんの大歓声。「Gargoyle KID」が見事にレグホーンを投げ飛ばし、3ダウン目を奪って初優勝に輝きました。
それにしても、本当に見応えのある決勝戦でした。参加された皆様お疲れ様でした。そして感動をありがとうございました。
次回、第29回のロボワンは、9月24日・25日に神奈川県の「神奈川県立青少年センター」で開催予定です。次回はどんな大会になるのでしょうか。今から楽しみです。
どちらも大盛況だった「つくばロボットフェスタ」と「ロボワン」。ロボットの街と言われるつくばだからこそ、この盛り上がりがあったのかもしれません。つくば市からは、今後もロボットの楽しみな話題がたくさん生まれてくることでしょう!
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ロボットスタート株式会社ロボットスタートはネット広告・ネットメディアに知見のあるメンバーが、AI・ロボティクス技術を活用して新しいサービスを生み出すために創業した会社です。 2014年の創業以来、コミュニケーションロボット・スマートスピーカー・AI音声アシスタント領域など一貫して音声領域を中心に事業を進めてきました。 わたしたちの得意分野を生かして、いままでに市場に存在していないサービスを自社開発し、世の中を良い方向に変えていきたいと考えています。