「ソーシャルロボットによる人とITの新たな関係/株式会社シーエーシー」を聞いてきました。

2016年3月18日(金)、東京プリンスホテルで開催された「IoT for ビジネス革新シンポジウム2016」に行ってきました。

Iot時代に求められるIT新潮流の利活用の追求に関するシンポジウムで、株式会社シーエーシーによる「IoT for AI ソーシャルロボットによる人とITの新たな関係」の講演がありました。

登壇は、株式会社CAC Holdings未来企画部長兼株式会社シーエーシー執行役員イノベーションビジネス本部長 池谷浩二氏です。





■CACグループについて



最初にCACグループの紹介です。

株式会社CAC Holdings
http://www.cac-holdings.com/



「ハードウェア・メーカーから独立・中立の立場で、ユーザー志向の情報システムを構築する」という理念に基づいて1966年に設立されました。今年で50周年を迎える日本で最初の独立系ソフトウェア会社です。

情報システムに関するコンサルティングから、システム開発、保守・運用、業務委託までを一貫して提供するソリューションプロバイダー。現在の主な業務領域は、金融・製薬・社会保障がメインとなります。



現在、池谷氏がソーシャルロボット領域で関わっているのが、講演のテーマであるソーシャルロボット〜JIBOとBuddyへの出資です。

 CAC Holdingsが米国ベンチャー企業Jiboに出資 | 株式会社CAC Holdings
 http://www.cac-holdings.com/news/news20151125.html




■JIBOとは



まずJIBOの紹介から。

アメリカにあるマサチューセッツ工科大学(MIT)のシンシア・ブリジール准教授が創業したJIBO, Inc.による家庭用ソーシャルロボット。

JIBO
https://www.jibo.com/



Indiegogo(クラウドファンディング)で目標10万ドルを大きく超える370万ドルを集め、話題となりました。

顔認識、音声認識、感情認識、機会学習、感情表現ディスプレイや動作などの技術が採り入れられており、エモーショナルな動きを通じて人間と信頼関係が気づけるようにUXデザインされているのが特徴です。

株式会社CAC Holdingsでは、Fenox Venture Capitalを通じ、JIBO, Inc.へ出資を行いました。




さらに詳しく機能を見ていきましょう。

見る
本体に内蔵された2つのハイレゾカメラで顔認識し、追跡します。声の指示で写真を撮ったり、臨場感あふれるビデオ会話が可能です。

助ける
パーソナルアシスタントのように、積極的に人間の手助けをしてくれます。これにより日常的なタスクがより簡単になります。

学ぶ
人工知能(AI)アルゴリズムで持ち主の好みを学習し、ライフスタイルに適応してくれます。

話す
人間の顔を認識し、大事な予定、家族や友達からのメッセージを声で知らせてくれます。子供に絵本を読んであげるといったことも。

聞く
360度マイクを装備。自然言語処理を持ち、部屋のどこからでもJIBOと対話が可能です。

繋ぐ
JIBOの自然でエモーショナルな動きで、人間との相互理解が深まります。



JIBOの技術資料です。





■JIBOの開発環境について



JIBOの開発環境は、HTML5やJavaScriptといったweb標準技術でアプリケーション(JIBOでは「Skill」と呼ぶそうです)開発が可能で、オープンかつユーザフレンドリーとなっています。






■Buddyとは



フランスのBlue Frog Roboticsによる開発中のロボットです。

株式会社CAC Holdingsでは、Fenox Venture Capitalを通じ、Blue Frog Roboticsへも出資を行いました。

 Blue Frog Robotics
 http://www.bluefrogrobotics.com/en/home/



日本でBuddyが手に入るのは、今年末か来年と想定されるそうです。






■ソーシャルロボットが登場するようになった背景



では、どうしてJIBOやBuddyといったソーシャルロボットが登場するようになったのでしょうか。

それは様々な技術革新の積み重ねにより、高性能なロボットが安価に製造可能となる環境が整ってきたためです。



それぞれの技術革新を具体的に見ていきましょう。

Intel EdisonやRaspberry Piと言った超小型コンピューターの登場です。現在、一万円を切る価格でこれらが入手できるようになりました。




センサー技術も向上しました。

マイクロソフトのKinectに搭載されて話題になった技術「3D深度センサー」は、2台のカメラにより、対象物を立体的に読み取ることが可能になりました。これにより物体の構造を読み取るだけではなく、動く物体のモーションを把握したり、人間の表情を読み取ることも可能に。

Windows10では、Helloという顔認証技術で顔を写すだけでログインが可能になりました。このようなところにもセンサー技術が使われています。



Deep LearingによりAI/機会学習の精度が向上しました。

ロボットの音声認識、画像認識の精度が上がったのはAIの精度が上がったからと言えるでしょう。現在は、インターネット上に大量のでーたがあるので、これを学習データとして日々さらに賢くなっていってます。

先日、この技術を使ったGoogleの「AlphaGo」が囲碁でイ・セドル九段を4勝1敗で破り、非常に話題になりました。



様々なサービスがWeb APIとして提供されるようになり、環境が整ってきました。

ロボットに関する難しい処理は自分でプログラムを書かなくとも、APIで処理させればよくなりました。例えば、wit.aiというAPIを使うと、データをこのAPIに渡す部分のプログラムだけ書けば、音声認識機能が可能になります。

アメリカのスタートアップがどうして成長速度が速いかというと、これらのAPIを活用し、自分たちのプログラムを書くのは本当のコアな部分だけというのもあるそうです。





■ソーシャルロボットの課題



一方で、ソーシャルロボットが乗り越えるべき課題はいくつかあります。

 ・音声認識の精度(複数話者、背景ノイズ)
 ・自然言語理解
 ・感情認識
 ・感情表現
 ・セキュリティ/プライバシー保護




■ソーシャルロボットが社会課題を解決する時代に



日本には大きな社会課題がいくつもあります。生産年齢事項の減少、独居老人の増加、認知症の増加…。

これらの問題に対し、ソーシャルロボットが大きな役割を担ってくるでしょう。



例えば、ソーシャルロボットが高齢者施設、教育施設、一般企業で以下のような役割を担うでしょう。





■CACのビジネス領域(予定)



CACでは「CAC.Robots」というブランド名で以下のサービスを提供予定で、これからソーシャルロボットの領域に力を入れていくそうです。

 ・活用プランニング支援
 ・インテグレーションサービス
 ・アプリケーション開発
 ・販売、レンタル
 ・コンテンツ制作、配信



講演会は以上となります。

ABOUT THE AUTHOR / 

北構 武憲

本業はコミュニケーションロボットやVUI(Voice User Interface)デバイスに関するコンサルティング。主にハッカソン・アイデアソンやロボットが導入された現場への取材を行います。コミュニケーションロボットやVUIデバイスなどがどのように社会に浸透していくかに注目しています。

PR

連載・コラム