銀行という空間でいかにPepperと触れ合うきっかけを作れるかが鍵【Mizuho.hack 開催直前特別インタビュー】

「みずほ銀行にPepperが導入される」。そんな衝撃的なニュースが飛び込んだのは、2015年3月のことでした。約4ヶ月後の2015年7月17日に1体目のPepperがみずほ銀行東京中央支店に入行し、その後も導入支店は増え続け、現在では、東京・札幌・大阪・神戸など、全国11支店に「Pepper」が導入されています。

国内でも指折りの「Pepperの運用経験」を持つみずほ銀行は今、ロボットに対してどのような「期待」と「課題」を抱いているのでしょうか。また、今週末に開催される「Mizuho.hack」は、なぜこのタイミングで開催されるのでしょうか。

みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほFG)インキュベーションプロジェクトチームの金子慎太郎(かねこ・しんたろう)氏と井原理博(いはら・ただひろ)氏のお二人に、みずほ銀行におけるPepperの取り組みについて伺ってきました。インタビュー後半では、今抱えている課題や審査のポイントにも触れています。「Mizuho.hack」参加者の皆様は、是非アイディアの参考にしてみてください。

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みずほフィナンシャルグループ インキュベーションプロジェクトチーム 参事役 金子慎太郎氏(奥)、井原理博氏(手前)


1年越しのハッカソン開催

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編集部

まず、他行に先駆けてみずほ銀行が「Pepper」を導入した経緯を教えて頂けますか?


井原(敬称略)

少し遡りますが、2013年4月に、「既存の金融サービスを変革していく」という目的で、<みずほ>の各部門から人材を集めた「次世代リテールPT」が立ち上がり、その後、2014年4月に、具体的なサービス化を推進していくために、みずほ銀行内に「インキュベーション室(現在は2015年7月に設置された、みずほFGインキュベーションPTと兼務)」という部署が設置されました。ロボットや人工知能も当然推進していくべきテーマのうちの一つでしたが、そんな矢先、2014年6月にPepperが発表されました。

それまで発表されてきたロボットの中でも、コミュニケーションにフォーカスした「Pepper」という存在は、親近感も湧きやすく、金融サービス業の中で活躍する可能性を秘めているのではないかと考え、2015年3月に導入を決定し、その年の7月から導入が開始されました。


編集部

導入から約1年が経過していますが、なぜこのタイミングで「Mizuho.hack」を開催するのでしょうか?


井原

Pepperの導入を発表した時から、実はすぐにでもハッカソンを開催したいと考えていました。しかし、導入を推進していたインキュベーションPTのリソースの問題もあって、なかなか実現することができませんでした。今回の「Mizuho.hack」は、1年越しにようやく開催が叶ったというのが正直なところです。

ただ、時間の経過は決してネガティブには捉えていません。1年前には出来なかったことが今では出来るようになっていたりと、ロボットは日進月歩で進化しています。また、1年間の運用経験を経て、ロボット導入による「成果」が見えてきた一方で「課題」も見えてきました。「その課題をどう解決していけば良いか」という、私たち行員だけでは考えるのが難しいアイディアを、デベロッパーの皆様にも一緒に考えて頂きたいという意味で、このタイミングだからこそできるハッカソンになるのではないかと考えています。




すでに10件以上の成約実績をもつPepper

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編集部

Pepper導入によって得られた「成果」と「課題」のうち、まずは「成果」について教えて頂けますか?


金子(敬称略)

私たちは、Pepper導入に際して、3つのKPIを設けていました。

1つ目は、Pepperをきっかけに多くのお客さまに来店して頂くこと。2つ目は、待ち時間にPepperと触れ合って頂くことで、体感的な待ち時間を減らすこと。そして3つ目は、みずほ銀行のサービスをPepperが説明し、窓口に誘導(トスアップ)すること。この「集客」「体感待ち時間削減」「トスアップ」の3つが当初想定していたPepper導入による効果です。



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店舗ではPepperがお客さまにあった保険を案内してくれる(2015年8月撮影)

編集部

実際にそれらの効果は見受けられましたか?


井原

集客については、Pepper導入店舗の集客率が、前年比で平均約7%上昇しています。もちろん明確にPepperだけが要因かはわからないところもありますが、集客効果は実感できています。

そして体感待ち時間の削減についても、お客さまからポジティブな意見を頂いており、Pepper導入による効果を感じています。

「トスアップ」については当初一番難しいと想定していましたが、意外にも、Pepperが「あなたにあった保険商品はこちらです」と提示して、その場で保険商品のチラシを渡すというオペレーションを実施したところ、そのまま窓口で説明を聞いて成約に至るというケースが10件以上出てきています。

人間でも難しい、売上に直結する部分をPepperが行ったことは、私たちの中でも衝撃的な出来事でした。人間に言われるよりも、Pepperに言われた方が、お客さまからすると新鮮味があり、説明を聞いてみようとなったのかなと思います。



銀行という空間でいかに触れ合ってもらうか

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編集部

では、成果の一方で見えてきた「課題」とは何ですか?


井原

Pepperにいかに触って頂くかというところですね。やはり恥ずかしさもあるのでしょうか、お客さまは来店してすぐにPepperと触れ合ってもらえるわけではありません。

しかし、Pepper導入店舗にいるコンシェルジュ係が「Pepperと触れ合ってみてください」とお声掛けをすると、「実は恥ずかしくて今まで触れなかったんだよね」と言って話しかけてくださいます。やはり人目を気にして触りづらいというのがあるので、この点は大きな課題です。あとは、銀行が醸し出している独特な雰囲気があるので、その雰囲気をいかに軽減しながら触れ合いやすい環境を作っていくかというのも重要です。



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金子

この辺りは、今回のハッカソンでも重要な審査ポイントの一つになります。よりたくさんの方に触れ合って頂くためには、アプリだけではなく、置き場所も重要かもしれないですよね。「皆のいる前では気恥ずかしくて話しかけづらい」というお客さま側の感覚もあるかもしれません。あとは「何を話しかけたら良いかがわからない」というのもあると思います。看板にPepperが出来ることや話しかけて欲しいことを書いて、視覚で訴えかけるといった「空間プロデュース」も必要かもしれません。

私たちも店舗で様々な試行錯誤を繰り返していて、今はPepperが落語を話したりもしています。(笑) 銀行という、シーンとした空間で落語を話してみる。それも私たちにとっては一つのチャレンジでした。

でも銀行員の発想はその程度のものなんですよ。だからこそ「Mizuho.hack」では、もっと飛び抜けたアイディアが出てくることに期待しています。


編集部

ありがとうございました!



Mizuho.hackの開催は今週末5月21日(土)、22日(日)の2日間。ロボスタでは2日間を通じてレポートをしていきます。そちらも是非お楽しみに。


テーマ Pepperと一緒に、全く新しい『銀行』というサービスを創る
開催日時 2016年5月21日 土曜日 10時00分~20時00分(9時30分より受付開始)
2016年5月22日 日曜日 10時00分~20時00分
応募形態 個人、もしくはチーム(最大5名)
参加資格 2016年5月21日時点で満20歳以上であること
募集人数 最大80名
銀行店舗での展示権(みずほ賞)、賞金総額20万円、各種API賞
持参するもの 開発に必要なPC・デバイス・スマートフォン、本人確認書類
参加費 無料
主催 株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社みずほ銀行
開催場所 コワーキング・スペース「MONO」
東京都江東区青海二丁目5番10号テレコムセンタービル東棟14階
最寄り駅:ゆりかもめ「テレコムセンター」駅直結
告知ページ http://www.mizuhobank.co.jp/mizuho_hack/index.html


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望月 亮輔
望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。ロボスタ編集長・ロボットスタート株式会社取締役。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

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