【顔認証】コンサートの入場から電子決済、テロ対策まで、ここまで来た顔認証と声認証 ~NECに聞く 生体認証の最前線 (第1回)

米国や英国では大人気となっているAIスマートスピーカーをめぐってある出来事がありました。

米国ダラスに住む6歳の女の子がある日、親のいない間に「クッキーとドールハウス(玩具)を買って!」とAIスマートスピーカーに注文しました。数日後に商品が届いて親はびっくり仰天。しかし、話しはここで終わりません。この一件をニュース番組が報道したときのこと。女の子がスマートスピーカーに言った「クッキーとドールハウスを買って!」という言葉をアナウンサーが番組内で話した途端に、視聴者のリビングにあるスマートスピーカーが一斉に反応し、クッキーとドールハウスを発注しようとしたのです。

このようなトラブルを防ぐのに必要な技術は何でしょうか?
そのひとつが「誰の声かを識別する声認証技術」です。
声認証はスマートスピーカーやコミュニケーションロボットと相性がいいと言われていて、今後は必須の機能になると見られています。そこで、生体認証のトップランナーである日本電気株式会社(NEC)の第二官公ソリューション事業部とデータサイエンス研究所の皆さんに、声認証技術の特徴やしくみについて聞きました。


急速に実践導入が進む「生体認証」技術

編集部

声認証について詳しくお伺いしたいのですが、声認証は近年さまざまなところで採用され、注目されている「生体認証」技術のひとつですね。まずは「生体認証」について教えて頂けますか?

NEC

生体認証とは人体の身体的特徴を解析して個人を識別する技術のことです。指紋、掌紋、静脈、顔、虹彩、音声、DNA、耳認証などが知られています。NECはこれらの技術をすべて自社で研究開発しています。

さまざまな生体認証がある。判定の精度、コスト、ユーザーの心理的抵抗感、気軽さなど、それぞれ利点と欠点を併せ持っているので、用途と目的、使用環境等によって検討することが重要。

NEC

一般論で言えば、スマートフォンやノートパソコン等に導入されている「指紋認証」はもっとも身近にある生体認証かもしれませんね。指紋を読み取って個人認証を行い、本人であることを確認したらロックを解除するしくみです。また、SFやアクション映画などで、入室時に目をスキャンして認証する「虹彩認証」のシーンを見たことがあるかもしれません。これも生体認証のひとつです。

編集部

私もiPhoneとノートパソコンで指紋認証を使っていますが、それまでのようにパスワードを入力する必要がなくなって、手間がかからなくなりました。他には実際の現場でどのように使われているのですか?

NEC

はい。世界的に見れば、テロ対策や入国管理などの支援、国民ID、街中の監視カメラなどのセキュリティ用途から、企業や施設の入退室管理、ログイン、電子決済、VIP検知や顧客分析などに、これらの技術が既に実際に使われています。
元々セキュリティ用途から研究開発をスタートした技術ですので、この用途での導入事例は日本のみならず世界的に豊富です。たとえば米国ではカリフォルニア州など多くの州で大規模な犯罪系指紋認証システムを提供しています。また、南アフリカ内務省では大規模国民IDシステムで指紋認証システムが採用され、約5000万人の国民IDを管理しています。他にもニューヨークのJFK国際空港や、ジョージアやアルゼンチンのティグレ市で顔認証が導入され、犯罪やテロ等を防ぐ取り組みを行っています。

編集部

なるほど、空港や街頭でも顔認証が実用化されているのですね

NEC

はい、NECは安全・安心な都市・行政基盤を目指し、社会の「安全」「安心」「効率」「公平」に貢献する、という4つのキーワードで事業を展開しています。それを実現するひとつの手段として生体認証の研究や開発を推進し、実績を重ねています。生体認証は「安全」「安心」だけでなく「効率」と「公平」についても有効性が実証されています。

日本電気株式会社 第二官公ソリューション事業部 主任 安諸宗忠氏


USJの年間パス、ももクロのコンサート入場時にも顔認証が活用

編集部

とはいえ、私自身は公共施設などでは生体認証が使われているのを体験したことがない、というか意識したことがないのですが、国内ではどのようなところで使われた事例があるのでしょうか。

NEC

顔認証は、ユニバーサルスタジオジャパンの年間パスの入場ゲートで利用されています。他にも最近ではコンサート・チケットの転売の抑止に使われています。チケットの転売やダフ屋行為が以前から問題視されていますが、ファンクラブ会員向けに販売したチケットには、コンサート入場の際にお顔と登録済みの顔写真データを照合する顔認証システムを導入しました。チケットをお持ちの方がご本人かどうかの照合にシステムを活用します。

編集部

身近な事例が出てきましたね(笑)。詳しく聞かせて頂けますか?

NEC

ももいろクローバーZやB’z、福山雅治さんのコンサート等、数万人〜数十万人規模のコンサートに導入していただき、高い認識率を達成しています。

コンサート・チケット販売での顔認証システム導入の流れ。ファンクラブ入会時に顔写真を登録、現場ではファンクラブ会員カードとカメラの顔データを照合して本人確認を行った上でチケットを発券する(※スマートフォンはクリックして拡大)

コンサート会場の顔認証システム(http://jpn.nec.com/ad/onlinetv/concert.html)

編集部

ほかに身近な導入例はありますか?

NEC

まだ、実証実験レベルですが、生体認証を使って決済をするということも始めています。社内の食堂で売店や買い物をするときに、レジに顔をかざせばお支払が完了するという物です。生体認証の「手軽さ」を武器にこれからどんどん広げていきたいですね。


各生体認証の特徴とちがい

編集部

生体認証にはいろいろあるということで、一層くわしく知りたくなりました。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

NEC

指紋、掌紋、静脈、顔、虹彩、音声、DNA、耳認証などがありますが、セキュリティの度合いが高いもの、ユーザーが気軽に利用できるもの、エンターテインメント性が高いもの、コスト優先のものなど、それぞれの特徴はさまざまです。当社はこれらのすべての認証手段を手がけていますので、お客様が導入する用途や目的によって最適な生体認証をご提案しています。たとえば、指ハイブリッドスキャナーは1台の端末で同時に複数の要素の認証を行うことでこれまでの課題を解決した製品です。

指紋や静脈は生まれつき指紋が薄かったり、血脈が弱いなど、単体では読みとりづらい人がいるというのが弱点。NECの指ハイブリッドスキャナーでは指紋と静脈を同時に読み込むことで、これらの問題を解決し高い読み取り率と精度を実現している。

NEC

認識精度が高いのは、目の「虹彩」、指の「指紋」、指の「静脈」などがあげられます。社員や決まったメンバーの入室管理などセキュリティ強化には有効です。しかし、ユーザーが気軽に使えるかと言えば、専用のデバイスが必要であったり指紋データをとられることを嫌がる人は多いので心理的な壁は高いですね。
一方でユーザーにとって手軽なのは「音声認証」と「顔認証」です。音声はマイク、顔認証は一般的なカメラを用意すれば良いのでハードウェアのコストが安い点も魅力的です。

NEC

そのためこれらの認証手段はスマートフォンやタブレット以外にもロボットやスマートスピーカーへの導入が有効視されていて、これから数年で爆発的に導入が進むと見られています。NECでも大規模なサーバで稼働するシステムだけでなく、ロボットやモバイル端末で動く軽量なエンジンを開発しています。

日本電気株式会社 第二官公SL事業部 主任 吉田玲司氏

編集部

なるほど、生体認証のことがよく解りました。次回は「声認証」にフォーカスしてお聞きします。ロボットやスマートスピーカーに向いていて、今後は必須の機能になるといわれている声認証の重要性、そのしくみなどが知りたいと思います。



※第2回「声認証がロボットやスマートスピーカーに必要な理由 ~NECに聞く 生体認証の最前線 (第2回)」につづく

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