音声UIの開発者は「Pepper」界隈にいる? ピカチュウトークのコンセプトは? スマスピ企業4社がデブサミに登壇

2月15日、16日の2日間、目黒雅叙園で開催された「Developers Summit 2018」に、スマートスピーカーの関連企業4社が集結。「音声UIはアプリ開発の何を変えるのか? スマートスピーカーアプリ開発者大集合!」というテーマで、スマートスピーカースキルの動向や、音声UIについて語った。

登壇したのは、リクルートマーケティングパートナーズの市川純さん、LINE株式会社のプラットフォームエバンジェリスト 砂金信一郎さん、株式会社ポケモン プラットフォーム戦略室 マネジャーの小川慧さん、面白法人カヤック プランナー・テクニカルディレクターの村井孝至さん。モデレーターをロボットスタート スマートスピーカーエバンジェリストの西田寛輔さんが務めた。


冒頭ではロボスタが作成した「スマートスピーカー カオスマップ」も披露された。

スマートスピーカー上で、「ピカチュウトーク」のスキルを展開するポケモン社と開発を行なったカヤック。ゼクシィキッチンを展開するリクルートマーケティングパートナーズ、そして「LINE Clova」を搭載するスマートスピーカーを開発するLINEと、様々なジャンルから企業が集まったセッションだ。

本記事では、その模様の一部をレポートしていく。



ピカチュウトークは、なぜこうなった

セッション前半では「なぜピカチュウトークを作ったのか」に迫った。一見すると株式会社ポケモンが手を出すようなところではない気がしてしまう。背景にはどのような目的があり、どうしてピカチュウトークはあのようなスキルになったのだろうか。

株式会社ポケモンでスマートスピーカーで何かできることはないか、そんな時に小川さんが声をかけたのが、面白法人カヤックの村井さんだった。村井さんは当初に出た案を振り返りながら、ピカチュウトークが生まれた際のコンセプトを語った。

カヤック 村井さん


初めは色々な案が出ていたんです。例えば、ピカチュウが天気を答えてくれるといったものや、家の電力消費量でピカチュウが成長していくものなど。決め手になったのは、iPhoneの黎明期時代を思い出して欲しいんですけど、当時iPhoneを持っている人は新しいもの好きの人たちだけだったと思うんです。そんな中でアーリーアダプターの方々が作っていたのは、ビールを注ぐアプリなどタッチディスプレイを使ってできるシンプルなものでした。スマートスピーカーも今、当時のiPhoneと同じく黎明期で、色んな方々に気軽に使って頂きたいと思いまして、じゃあ普通にピカチュウと話ができるのがいいですよね、となりました。



しかし現在スキルにはマネタイズ手法がない。たくさんの人に使ってもらいながらも実益を出すのが難しいであろうピカチュウトークだが、マネタイズについてはどう考えているのだろうか。

ポケモン 小川さん


マネタイズよりもまず「とりあえず触っておこう」が大きかったです。何をゴールにしようかと考えた時に、お金が儲かるわけではないので「一家に一匹ピカチュウを」と考えて開発していきました。ピカチュウのことをもっと好きになってもらいたい、と。仕組みも揃っていなかったのもありますけど、プロモーション目的で作っていましたね。

今では実際に使われ始めてきました。将来的に海外含めて対応地域も拡大してくるとなれば、上も黙っていないと思うので、その時にどう活用するかをきちんと考えていければと考えています。現在はお金儲けのためにやっているわけではないですね。



またカヤックの村井さんは、とにかく「会話の設計」が大切だと話した。

カヤック 村井さん


戸田昭吾さんというポケモンの曲の歌詞なども手がけてきた、すごくポケモンのことを知っている「ポケモンマスター」がいるんです。戸田さんに全ての情熱を注いでもらいました。なんで今「ピカッ♪」って言わなかったんだ、など「こういう時にはピカチュウはこうやって反応するはずだ」というルールに則って返していくように設計されているんです。なので、設計書はそのスプレッドシート1枚でした。



セッションでは、撮影禁止のスライドも用意されていた。そこにはAlexaスキル、Google Actionでのそれぞれのピカチュウトークのユーザー数などが写されていた。その数字をみて驚いたのは「平均セッション時間が長い」という点だ。

株式会社ポケモンの小川さんは「データを見ると、きちんと使って頂いていることがわかります。とにかくハードルを下げて、誰でも触れるようにしてよかったと思います」と語った。



既存サービスから音声だけを抜き出すことは難しい

ゼクシィキッチンのスキルを開発したリクルートマーケティングパートナーズの市川純さんからは、スキルの開発手法や既存のサービスをスキル化する際の心構えなどが紹介された。ゼクシィキッチンはプロのシェフが監修するレシピ動画をWEB上で見ることができるサービスだ。

毎日献立を考えるのが大変な主婦にとって重宝されていることだろう。ただし、あくまで特徴は「動画」にある。それをどう音声のみのVUIに対応していったのだろうか。

リクルートマーケティングパートナーズ 市川さん


ゼクシィキッチンは本来は動画でユーザーの課題を解決するサービスです。しかし、まだ日本ではディスプレイ付きのスキルが使えないという悩みがありました。


北米などではすでに展開されているディスプレイ付きのAlexaデバイス「Echo Show

ゼクシィキッチンのサイトでは、レシピ動画を見ることで作る手順から必要な材料まで全て理解することができます。しかし動画では「これくらいの焦げ目になったら」など、実際に画を見ないとわからない説明もあるため、音声だけを抜き出すことはできませんでした。そこで、オススメの献立を教えたり、料理を作るための必要な材料がわかったり、大まかな手順がわかったりするような、一部の機能を切り出したスキルにすることを考えました。既存のサービスを100%入れる必要はないんですよね。



スキルは作ったから儲かるわけではありません。そこで私たちは、サービスに触れる「チャネルを一つ増やす」と言う意味で音声版を出しています。Fire TVとかにも出しているのですが、いろんなところから使ってもらっているんです。有料課金などができるようにればマネタイズも考えられるようになりますが、まずはサービスの接点を増やす目的で開発しました。



と、開発の意図や、既存サービスをスキル化するためのポイントを説明した。



LINE Clovaの反省点とは?

このセッションの中では唯一スマートスピーカーを開発する立場にあるLINEの砂金さん。砂金さんは、LINE Clovaの初期の反省点や、エンジニアへのメッセージを語った。

LINE 砂金さん


LINE Clovaは、GoogleやAmazonのスマートスピーカーが日本で発売されるよりも早く、とにかく早く出そうと考えて、2017年夏に発売しました。私たちは人間様がスマートスピーカーのような、いわゆる「スピーカー」の見た目のものに話しかけるのか、という疑問がありました。そこで、可愛い見た目のLINE Friendsをつくりました。


LINE Clova Friends


ロボスタ 西田さん


うちにもAmazon Echo、Google Home、LINE Clova Friendの3種類がありますけど、子供はフレンズが大好きです。


LINE 砂金さん

ありがとうございます。特にお金を渡してたり、広告出稿していたりしませんから(会場笑)


ロボスタ 西田さん

この見た目だけで好きってなるんですよね。


LINE 砂金さん


裏側ですごく便利な機能が走っているから買うではなく、とにかく可愛いから買うということもあるんじゃないかと思っています。

実際にLINE Clovaを出してみると、「期待していなかったけど、意外とLINEのスマートスピーカーが一番良い」というお声も頂くようになりました。例えばLINE Clova WAVEには赤外線リモコン機能が付いています。やっぱりまだ日本の家電操作はリモコン操作が主流なので、そのリモコン操作が音声でできるというのが評価して頂けるというのは、リリースしてから気づきました。現在はテレビだけですが、照明やクーラーも操作できるようにしていきたいです。



GoogleやAmazon相手に奮闘を続けるLINEだが、砂金さんは一つ反省点があると話した。

LINE 砂金さん

LINE Clova WAVEは、完璧ではないとわかっていながらも発売をしました。そんな中でよくあるお声が「ウェイクワードを言っていないのに起動してしまう」ということです。LINE Clovaは「Clova」と呼びかけることで会話がスタートしますが、私たちが当初一番危惧していたのは「Clova」と呼んだのに反応してもらえないことでした。そこで「Clova」というワードに反応する確率を広げたんです。「90%の確率でClovaと呼ばれていると判断した時」にだけ反応するか、「60%の確率でClovaと呼ばれていると判断した時」にも反応するかで、反応する範囲が変わってくるわけなんです。すると、ご家庭で夫婦喧嘩している時に横入りして、反応しちゃう。それが初期の反省点でした。現在ではアップデートにより、その反応の正確性が高まってきています。



また、「スキルの作り方」に話が及ぶ中「会話が大事」というワードに対して、砂金さんはこう語った。

LINE 砂金さん


会話が大事と言うのはまさにその通りです。では、その会話を作れる人たちがどこにいるかと言うと、最初にPepperの会話を作っていた人たちやボットの会話を作っていた人の中にその知見が眠っています。ロボットが会話でいかに人を楽しませることができるか。そんなストーリーを作れる人がVUIの開発では大事なんです。



では実際に音声スキルを開発してみたくなったらどうすればいいか。LINE Clovaは、AmazonやGoogleと違い、スキル(アクション)を作るためのSDKを外部に解放していません。しかし、LINE API Expertという、LINEのAPIに対する理解と高い技術力を持つエンジニアの方々を認定して、活動を支援するプログラムがありますが、その方々には先行してLINE Clovaのスキル開発ができるSDKをお渡しする予定です。なので、スキルを作ってみたいという方は取得を目指してみてください。

もしくは…LINEで働きませんか?(会場笑)

真面目な話、音声UI作りたいんだけど作れないという人は、LINEに入社して作れば良いと思うんです。先ほどみなさんがお話されていた通り、まだスマートスピーカーのスキルを作ってマネタイズする手法はありません。しかしLINEで働いて、ファーストパーティのスキルを作れば、LINEから給料が出ます。(会場笑)

エンジニアの方々にとっては今後伸びていく分野で開発をしてみるという経験も大切だと思っています。音声UIにぜひチャレンジしてみてください。



VUIはまだまだ黎明期。今後、スマートスピーカーとしてだけではなく、家の壁の中や車の中にAIアシスタントが入っていくことになるだろう。そんなVUIの領域に黎明期からチャレンジしてみるのは貴重な経験になるはずだ。



また、イベントの最後に告知があったが、ロボスタでもAI音声アシスタントの勉強会を開催している。8回目となる次回は、ゲストにNTTドコモの秋永和計さんをお呼びしている。スマートスピーカーやAI音声アシスタントに興味がある方は、是非参加してみてはいかがだろうか?

ABOUT THE AUTHOR / 

望月 亮輔
望月 亮輔

1988年生まれ、静岡県出身。ロボスタ編集長・ロボットスタート株式会社取締役。2014年12月、ロボスタの前身であるロボット情報WEBマガジン「ロボットドットインフォ」を立ち上げ、翌2015年4月ロボットドットインフォ株式会社として法人化。その後、ロボットスタートに事業を売却し、同社内にて新たなロボットメディアの立ち上げに加わる。

PR

連載・コラム