IoTのPaaS(Platform as a Service)で、デバイス管理とアプリケーション構築環境を提供するAyla Networks(本社:カリフォルニア州サンタクララ)は、セルラーLPWA IoT市場に進出することを発表した。
既に、同社の合弁企業パートナーであるサンシー・テレコミュニケーションズが、AylaのIoTデバイスエージェントを出荷時にプリインストールしたIoTデバイス向けの新たなセルラー通信モジュールを発表しており、この新しいセルラーLPWA通信モジュールにより、設定不要で携帯電話網経由でのAylaのIoTプラットフォームのデバイス管理、アプリケーション構築環境が利用可能になる。
リリースによると、今回のセルラーIoTクラウド通信モジュールは、サンシーの子会社で、セルラーIoTの世界市場において大きなシェアを持つSIMCom Wireless SolutionsとLongsungにより製造される。同通信モジュールは、IoT機器向けLTE規格であるNB-IoTおよび4G、2G携帯通信網に対応しており、セルラーIoTソリューション向けに、エッジデバイスからクラウドまで設定不要のセルラーコネクティビティ、デバイス管理、アプリケーション構築環境を提供。
Aylaのエージェントが動作するこれらのIoTデバイス向けセルラー通信モジュールを使用することで、テレコムサービスプロバイダー、モバイルネットワークオペレーター(MNO)、IoTデバイス製品のメーカーは、セルラー通信を使用するIoTソリューションを、より迅速かつ容易に開発、導入できるようになるとのことだ。
Ayla Networks社のCEO、デビッド・フリードマン(David Friedman)氏は以下のようにコメントしている。
Ayla Networks社 CEO デビッド・フリードマン(David Friedman)氏
この新しい通信モジュールは、セルラー通信技術の導入に迅速かつセキュアな道すじを提供し、クラウドベースのデバイス管理を携帯通信網のユビキタスな長距離ワイヤレス通信で一体化します。Aylaは、この新しいサンシーの通信モジュールを通じて既存のセルラー通信向けソリューションを拡張し、最新の低消費電力技術を取り入れます。これにより、新たに、より高付加価値のIoT製品を提供する重要な手段をお客様に提供しつつ、当社の新しい市場への参入とセルラーエコシステムにおけるサービス拡大が可能になります。
また、サンシー・テレコミュニケーションズの最高技術責任者(CTO)であるジュン・ゾウ(Jun Zou)氏も次のように述べた。
サンシー・テレコミュニケーションズ CTO ジュン・ゾウ(Jun Zou)氏
モジュールメーカー、デバイスメーカー、MNOは、4GおよびNB-IoTのネットワークを介してデバイスの状態を遠隔監視できる、この新しい通信モジュールのメリットを享受できます。当社は、クラウドベースのサービスコネクティビティをセルラーモジュールに統合、セルラーIoT市場におけるSIMComとLongsungの優勢な市場ポジションを生かし、デバイス、ネットワークエッジ、クラウドレベルにおけるエンドツーエンドのデバイス管理と産業アプリケーションを実現する新サービスを提供します。
IoT向けセルラー通信の現状と今後の可能性
(※以下、リリースからの引用・抜粋)
現在、IoTソリューションは一般的にWi-FiやBluetoothなどの短距離ワイヤレス通信プロトコルに依存しており、これらの手法は、農業やエネルギーといった屋外利用を前提としたアプリケーションや、長距離通信の必要があるアプリケーションでは大きな課題となっている。
携帯通信網はその広域なエリアカバレッジに特長があり、世界の人口の90%をカバーすると推定されているが、セルラーLPWAと異なり、既存の2G、3G、LTEなどの規格は電力の消費が大きく、音声やマルチメディアのアプリケーションに対するパフォーマンスを優先しているため、低消費電力やバッテリー駆動のデバイス、または伝送頻度の少ないデータを扱うIoTアプリケーションには最適化されているとはいえない。
サンフランシスコに拠点をもつ調査会社、Grand View Researchなどは、セルラーIoT市場の価値が2016年に 約18億ドルと見積もっており、2025年までに96億5,000万ドルに達すると予測。また、エリクソンも、2022年までに広域IoTデバイスの70%がセルラー技術を使用するようになると予測している。
同社のIoTデバイスエージェントがプリインストールされたサンシーの「セルラーLPWA IoTクラウド通信モジュール」は、そのような課題を解決すると共に、市場予測の達成を後押しし、企業は自社のIoTソリューションを現在のWi-Fiネットワーク接続と同じくらい容易に携帯電話網を介して接続できるものだ。
サンシーの通信モジュールを使用して構築されたIoTデバイスは、AylaのIoTクラウドに簡単に接続でき、仮想化されたデバイスはAylaの機能全般にアクセス、デバイス管理、遠隔操作、データ収集をはじめ、高度なアプリケーションとサービスの開発・提供が可能となる。
同社は今回の取り組みにより、農業などの新しい市場への参入が可能になると同時に、セルラー分野における新しいパートナーを活用して、既存顧客だけでなく新規のユーザーにもサービスを拡大できると述べている。