三菱地所が自動運転掃除ロボットの実証実験デモを公開 (1) ソフトバンクロボティクスの大型スクラバー「RS26」の特徴と機能

三菱地所とソフトバンクロボティクスは、5月31日、東京丸の内の地下通路において、ソフトバンクロボティクスが発売を予定している自動運転型の掃除ロボット「RS26 powered by BrainOS」(以下「RS26」)の実証実験を報道関係者に公開した。

人を検知したため、避けて掃除をする自律型掃除ロボット「RS26 powered by BrainOS」

この掃除ロボットは、昨年11月の「Softbank Robot World 2017」で公開したもので、自動走行式のスクラバー(水掃除車)だ。本体の下部の床に水を撒き、ブラシ等で磨いた後、水をきれいに吸い取るという一連の動作を自動で行う。
今夏に本格的な販売が予定されている。発売に先駆け、JR西日本系や阪急阪神系等の掃除関連企業4社が導入を決めたことが発表されている。

本体サイズは1691×864×1383mm、重量280kg。水タンク容量は110L。最高速度は手動清掃時が6.5km/h、自律走行時が4km/hとなる。自律走行時の最大作業範囲は2,657平米/h、平均で1,500〜1,700平米/h程度


三菱地所はロボットやAIを活用した豊かな街づくりに向けた取り組み

三菱地所は丸の内エリアにおいて「ロボットを活用した豊かな街づくりに向けた取り組み」を積極的に推進している。少子高齢化が進む将来に向けて、深刻な人手不足をロボットで解決をはかりたい考えだ。今回の実証実験はその一環となるもので、自動走行型の掃除ロボットによる掃除業務の効率化と人員削減を模索するものとなる。

三菱地所の「ロボットを活用した豊かな街づくりに向けた取り組み」では、警備ロボット「Reborg-X」も導入されている。夜は警備にあたるこのロボットも、昼間は新丸ビルで来客のお出迎えをする。音声とタッチ画面で案内をしたり、タッチ画面の操作でランプの色を変えたり、来客を楽しませている


「RS26」の導入で掃除スタッフの効率化を目指す

三菱地所が「RS26」に期待するのは、深刻な掃除スタッフ不足を補うことだ。
「RS26」は人が操縦しても自律走行でも利用できる。自律走行させる場合は、まず人が操縦して掃除するコースを走行して、「RS26」にルートを記憶させる「ティーチング」を行う。人がただ操縦するだけでルートを覚えることができるため、コースの設定に専用のエンジニアを常駐させたり、依頼する必要もない。なお、ティーチングは合計60種類のルートを登録することができる。

操縦席のコンソール。右側は機器制御のボタン類が並ぶ。緊急停止や水量調整などのボタンが見える

操縦席のコンソール左側はシンブルだ。ティーチングを行う(ルートを学習する)か、自律走行をするかの選択を行う

5月から先行導入した4社においても、納入時こそソフトバンクロボティクスの担当者が説明に付いたものの、翌日からは導入した企業や掃除会社のスタッフ間で移動するコースを工夫し、自主的にコースの設定を行っている状況だと言う。

「RS26」には3Dカメラが3基(前面と側面(後方も視認))、LIDAR(Light Detection and Ranging)を2基搭載している。上のLIDARは前面の足元を、下のLIDARは前方を幅広く認識することができる。暗い施設内でも自律走行が可能で、導入時に施設の改修等は全く不要だと言う。なお、超えられる段差は2cm程度で、スロープの自律走行はできない。

「RS26」前方のセンサーカメラ類。Aが前方のRGBカメラ(上)と3Dカメラ、Bに両側面から後方を確認する3Dカメラが装備されている。Dが前方下部(比較的近距離の足元付近)を検知するLIDAR。ほかに前方を確認するLIDARが前面下部、RGBカメラが両側面に装備されている

「RS26」が清掃走行する際の最高速度は、人が操縦したり、ティーチング時が約6km/h、自律走行時はAIが適切な走行速度を判断するが、最高速度は約4Km/hとなる。
フル充電に必要な時間は8〜12時間で、駆動時間は4時間程度。ほかに、積載している掃除用の水量に制限があり、噴出する水量は調節できるため消費量は異なるが、最も微少の噴出で約3時間程度となる(最大の噴出量だと30分程度)。そのため、水の補充をしない場合は、最大の掃除時間は約3時間半程度になる。


掃除ルートの登録と自律走行

当日は報道陣に向けて、スタッフが操縦して「RS26」にティーチングする様子と、自律運転でティーチングしたルートを自動で走る様子が公開された。

「RS26」はホームロケーションコードを読んで登録されたルートを自律走行する。ひとつのコードにつき6ルートが登録でき、コードは10個まで対応することができるので、合計60通りのルートが登録できる。

ホームロケーションコード。「RS26」の右側面のRGBカメラで読み込んでいるところ

ホームロケーションコードを指定したら、操縦して掃除ルートを登録するティーチングを行う。一連の作業は次の動画で確認できる。

■ RS26 ティーチング作業の解説とデモ

ティーチングが完了したら、次は実際にRS26が自律走行するデモが行われた。
簡単なボタン操作で自律走行での清掃を開始する。デモ動画で見られるが、走行中に人が立っていたり、横切ったりするのを停止し、避けたり通知を行う機能がある。

■ RS26 自律走行のデモ(人の飛び出し時は自動停止)



緊急時には写真付きで管理者に報告

「RS26」はスマートフォン用アプリと連動することができる。掃除の完了をスマートフォンアプリに通知するほか、前述のように人や障害物を検知して停止したり、異常を通知することができる。人や障害物によって清掃が続けられない場合は、前方のカメラで写真を撮影し、その画像付きで通知を行うことも可能だ。

自律走行中にスタッフが「RS26」進路をふさぐデモ。「RS26」は停止し、避けて掃除を続けようとするが、行き場がない。

行き場がない場合は、前進を諦めると同時に

RS26の前方カメラで写真を撮影して、管理者に状況を伝える通知を行う

■ RS26 自律走行中の緊急対応 掃除が続行できない場合のデモ

「RS26」は、ICE社が製造している操縦型スクラバーの車体を、米国カリフォルニア州サンディエゴに本社を置くのBrain Corp社がカメラやセンサー等を増設して自律走行機能を追加したもの。ソフトバンクのビジョンファンドがBrain社を支援している関係から、今回の販売提携となっている。


三菱地所は深刻な人手不足対策のために試験導入

「RS26」のような自律運転型の掃除ロボットは清掃業界のスタッフ不足や高齢化対策として期待が寄せられていると言う。
ソフトバンクロボティクスの事業推進本部 新規事業推進統括部の小暮武男氏は「現在、掃除業界では人手不足や高齢化がますます深刻化していると感じています。操縦型のスクラバーを複数台導入したとしても、操縦する人がいないので稼働できないという状況が現実にあります。また、掃除は深夜や早朝に行うこと多いため、居眠りや不注意などによる事故の懸念も増えています。その点、自律運転型ロボットの場合は、複数台でも、ひとりがそれらを管理するということも可能になると考えています」と語る。

清掃は施設に傷を付けないよう細心の注意が必要だ。そのため、一般にスクラバーでは衝突の可能性がある壁際や柱の際を掃除することはできない。自律走行型スクラバーの場合も同様だが、スクラバーが自動で掃除している間に、スクラバーが掃除できない壁際などを人間が掃除する協働作業によって、作業時間を大幅に短縮できると考えられる。

三菱地所の渋谷一太郎氏は、「RS26」を実験導入した理由をそれらに重ねる。「私達がRS26に注目している理由は、1回ティーチングをすれば、あとは自動で掃除してくれる点です。操縦できる方がひとりいれば、その方が数パターン「RS26」に登録することで複数台のロボットが自動で掃除作業を行うことが実現できると考えています。RS26は大型なスクラバーだけあって大規模な空間を掃除するのに適しています。大きな空間を高齢の清掃スタッフがすべて人作業で行うのは負担も大きいのですが、広い範囲であっても壁際以外は自律運転型スクラバーが自動で行い、その作業の間に壁際や柱の周りを清掃スタッフが手作業で行うという「協働」によって、作業時間が大幅に短縮できると考えていて、それがビルメンテナンス業界の「働き方改革」にも繋がることを期待しています」とコメントした。

報道陣の質問に答える三菱地所株式会社 ビル運営事業部 統括 渋谷一太郎氏

三菱地所が試験導入を行った掃除ロボットは実は「RS26」だけではなく、もう少し小型の自立運転型ロボットやカーペットを掃除できるものも実証実験を行っている。次回はその他のロボットにもフォーカスし、三菱地所の活動を紹介したいと思う。

>清掃業界の高齢化とスタッフ不足に挑む!三菱地所が日本信号の自動運転掃除ロボット「クリナボ」の実証実験デモを公開 (2)」につづく

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神崎 洋治
神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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