ソフトバンクロボティクスが「清掃ロボット」業界へ参入する理由とは!AIで自動走行する床洗浄ロボットを来夏より発売

ソフトバンクロボティクスは、業務用清掃ロボット事業に参入し、第1弾としてBrain Corp.(ブレイン)の自動運転技術を活用したスクラバー(床洗浄機)「ICE RS26 powerd by Brain OS」を発表、2018年夏にこのサービスの促進を日本市場でおこなっていくことを記者発表会で発表した。
明日と明後日に東京汐留で開催される「Softbank Robot World 2017」で稼働展示する。


■ ソフトバンク ロボット ワールドで展示されるブレイン社のスクラバー(床洗浄機)「ICE RS26」


ソフトバンクが業務用掃除ロボットに参入する理由

この発表にさきがけ、ソフトバンクロボティクスの事業推進本部の本部長、吉田健一氏は、ロボットの進化を人間の身体にあてはめて「3段階」で考えていることを挙げた。
まずは顔。これはPepperである程度のレベルまで実現し、会話機能を通じて業務の一部を代替できるようになってきた。

ロボットの進化を3ステップと捉え、2ステップめの「脚」の技術は本年より展開していくとした

次の段階は「脚」だ。ロボットが移動できるようになることで、業務の幅は大きく拡がる。ソフトバンクは今年に入ってPepperのOSのバージョンアップを行い、SLAM技術を取り入れた。低速ながら移動できる技術を導入するためだ。更に、同社は移動ロボットについては世界的にトップクラスの技術を持っているボストンダイナミクス社を買収した。今回発表したブレイン社の自動運転の制御技術も、ロボットの移動能力の可能性を広げる技術のひとつとして捉えている。
3つめは「手」だが、人間と同様に手を使うロボットの実現は最も難しく、いつになるかの見込みが立つ段階ではないとしている。


自動走行するしくみ

発表会ではブレイン社のCEOであるユージーン氏がプレゼンテーションを行い、自動運転のしくみやビジネスモデル(サービス形態)について語った。

来日したBrain Corporation Co-Founder & CEO Dr.Eugene M Izhikevich氏

ブレイン社はソフトバンク・ビジョン・ファンドとクアルコムが出資している米国企業。自動運転技術の「Brain OS」を開発していて、AIとロボティクスのエキスパート。ブレイン社は床洗浄機を米国市場向けに発売を開始していて、コストコやウォルマートなどのショッピング施設や空港など、数10台が利用されていると言う。

米国、既に導入している企業、このほか空港などでも導入されている

床洗浄機、スクラバーはきれいな水で床洗浄を行い、汚れた水を吸い上げるしくみの掃除を行う。床がコンクリートやタイル、など、水での床洗浄に適した材質の施設に導入される。カーペットや絨毯などでは利用できない。ゴミなどの掃き掃除は別途事前に行う必要がある。


Pepperでは移動技術にSLAMを使っているがブレイン社のこれはSLAMを使わず、ティーチングを活用する。すなわち、最初に清掃員が乗り込み、マニュアルで操作して床洗浄機を動かす。その際に床洗浄機は経路を記録し、ルートマップを生成していくしくみだ。

まず清掃員が乗って清掃ルートを走行することで学習するティーチング方式

3つのLIDER、ソナー、3DとRGBカメラで周囲の状況をつかむ。ブレイン社はオレンジ色の部分のエキスパートとして開発とサービス提供を行う

本体の下部にソナーやLIDER(レーザーセンサー)を装備していて周囲の状況を把握する。掃除中や移動中に人が近付いたり、横切ったり、今まで置いていなかった商品が突然展示されたりと、環境は常に変化する。その変化は3DカメラとRGBカメラが認識して、その都度検知し、対処していくしくみだ。
AI 技術はこの映像(画像)の解析技術や、障害物が人か物かを判断することなどに活用されている。周囲にいるのが人だと判断した場合は、避ける(迂回する)距離を大きくとって、ぶつからないような配慮を行うという。

■ブレイン社のプロモーション動画

CEOのユージーン氏は、「私達はAIなどのソフトウェアを提供する企業であり、床洗浄機においてはロボット自体の開発はせず、頭脳をサービス提供しています。私達はメーカーにノウハウとソフトウェア技術を提供し、メーカーが床洗浄機をお客様に販売します。私達はお客様と床洗浄機を通して繋がり、”AI as a Service”を提供していきます」と語った。

頭脳を提供していくので、今回は床掃除機だが、ハードウェアとしての役割は、他の機器でも構わないということになる。



清掃業界が抱える人材不足や高齢化等の課題を解決

ソフトバンクロボティクスは、清掃業界の課題として、人材不足(有効求人倍率が2.1倍の雇用難)と高齢化をあげた。


また「均一な職務スキル」を維持することも重要で、これらの課題の解決に、移動するロボット、インドア自動運転のノウハウを持ったブレイン社の技術に期待している。


「Softbank Robot World」では、最初に人が乗って操縦してルートを学習するティーチングと、学習したルートを自律移動、障害物などを避ける等のデモンストレーションを30分ごとに実演していく予定だ。

ソフトバンクは来夏より販売を開始する予定。まずは、既に人がスクラバーを操縦して使用している施設を中心に製品を紹介していく予定だ。


関連サイト
SoftBank Robot World 2017

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神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

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