先日お届けした、10種類のロボットのファッションショー「ロボコレ」。ロボットと人間が一緒にランウェイを歩くこのイベントは、ロボスタを始め各種のメディアでも大きく取り上げられ、注目のイベントとなりました。
そんな同イベントの後半には2つのトークセッションが開催されました。どうしてロボットの衣装ができたのか、そしてこれからどのような未来に繋がっていくのか、興味深いトークセッションの模様をお届けします。
片っ端からSNSを使って連絡を取りました

トークセッションの第1部は「ロボット用アパレルブランド・ロボユニ誕生の話」と題して、セッションが始まりました。
登壇したのはロボユニの開発責任者でありRocket Road代表の泉さん、日本デジタルゲーム学会理事でAI開発者の三宅さん、元みずほ銀行の井原さん、そしてロボットスタート副社長の北構の4名。進行はファッションショー同様、HEART CATHCの西村真理子さんと東京カルチャーカルチャーの河原あずさんです。
まずはどのように登壇した3名に泉さんがアプローチしたかについて。
河原さん
泉さんは元々アパレルメーカーで、そこからロボットの服を作ろうと思い立ったんですよね。その後どうしたんです?
泉さん
片っ端からロボット業界の人にSNSを使って「会ってもらえませんか?」とアクセスしました。
河原さん
最初詐欺だとか思いませんでした?
北構

うちには問い合わせメールが来たんです。『福岡のユニフォームメーカーです。ロボットのユニフォームを考えているけど、一度お話聞いてもらえませんか?』って内容だったんです。うーんと思ったんですけど、一回お会いしてみようと思い、東京にいらした際にオフィスに来てもらったというのが泉さんとの出会いです。
泉さん
まだロボユニのアイデアがない時点で、人間のユニフォームにコンピューターチップを入れるハイテクユニフフォームというのが有るのではと思ったんです。テクノロジーのことを知らないといけないと思って本屋さんやネットで調べていたら、AIについて分かりやすく書いてある記事の色々なところに『三宅陽一郎』という名前が書いてあったんです。「この人スゴイな、テクノロジーに強くない人にもわかりやすく書かれている」と思って、是非お話したいと思ったんです。
三宅さん
最初はロボットの話はしなかったんです。ホテルのユニフォームのカタログを渡してもらって、ゲーム会社なので背広さえ着ないんですけど、うちもユニフォーム導入すべきなのかなって?(笑) ユニフォームにも興味があったので、ユニフォームの話をしようかなと思ったんですけど、お会いした際にガチで人工知能の話をしたんです。
河原さん
その後、どうして金融マンのところに?
井原さん
泉さんと北構さんが、「こういうものを作っている」って聞いたのでお越しいただいたんです。僕はその時新規事業を担当していて、Pepperを導入して接客として使っていたのですが、実際に服を着せてみたらどうなるかと3人で話をしました。その前からPepperに非公式で服を着せていた人がいたんです。でも、しっかりと採寸したものをPepperに自ら着せると「あぁ人間だな」って鳥肌がたったんです。子供に服を着せるのと同じ感覚で、直感で面白いと思ったんです。
いきなりのドアノックから始まったロボユニのプロジェクト。もちろん、アプローチした先は無視されるのがほとんどで、「必要なんですか?」って声をかけられたこともあったとのことです。
服を着たロボットの可能性

話題が変わり、服を着たロボットの可能性について。
西村さん
服を着たロボットの可能性について、お三方に聞きたいのですが?
三宅さん
大事なのはユーザーにこのキャラクターが知能を持っていると思わせること。で、ロボットのユニフォームを作っているの見せてもらった時『コロンブスの卵』だと思ったんです。Pepperが制服を着ていると、彼自信が人間社会に属そうという意志があるように見える。
人工知能学者は、とりあえず知能を賢くして人間に近くなろうとするのですが、服を着せただけで人間社会に溶け込んでないかって? 50年間人工知能の研究がされているけど、結局服を着せれば結構解決しているんじゃないかって。それはスゴイ発見でした。
北構
一番最初に泉さんからお話を聞いて、試作品が出来ましたということで井原さんのところに持っていって、初めてPepperに着せた瞬間、あまりにフィットして、僕ら3人鳥肌が立つようでした。歴史的瞬間を見ちゃったねと盛り上がったんです。
河原さん
最初に導入されたのがみずほ銀行さん?
井原さん
そうですね。みずほ銀行では宝くじを売っているので。ロボットに何をやらせようかと明確にして、Pepperに服を着させて宝くじを販売させたんです。すると、お客さんの食いつきもすごくて、宝くじの売上も上がったりしました。
三宅さん
ロボットが服を着るというのは、ロボットに文化を与えたってことなんですよね。服を着ることで文化を獲得した。ロボットファッションという文化が開かれたんです。ロボットが文化を持つということの最初の試験じゃないかと。これからそういったロボットの文化が花開くのを期待しています。
ロボットメーカーが語る「服を着たロボットと人間の未来」
第2部は「ロボコレ」に参加したメーカーのキーマンの方々が登壇。「服を着たロボットと人間の未来とは」というテーマでトークセッションが行なわれました。
登壇者は、シャープの景井さん、ソニーモバイルコミュニケーションズ冨永さん、ソフトバンクロボティクスの中西さん、講談社の秋元さん、MJIの永守さん、ユニロボットの酒井さん。まさにコミュニケーションロボットの中心にいる方々が熱い想いを語っていきました。
河原さん
講談社の秋元さんに伺いたいのですが、今回アトムは服を着てるじゃないですか。その際に講談社の内部で議論のようなものは行われたのでしょうか?
講談社:秋元さん

原作でもアトムは、実は普通に中学に通っていて、そのときは裸ではなく学生服とか着ているんです。なので、服を着ること自体は別におかしいことではないんですね。逆に言うと、最初にパーカーを着せたのですが、非常に評判が良くて。着ている方が通常なんですよ。
河原さん
今回テーマは「服を着たロボット人間の未来」という話ですが、前のセッションからの流れとして、服を着た瞬間に次の時代が訪れるというのがあったのですが、この中でいうとロボホンは着せる文化というのがあるのではないですか?
シャープ:景井さん
基本的にメーカーの目線としては、「着ていると壊れちゃう」というのがあるので、メーカーから「服を着せてください」とは言えません。しかし、ロボホンと一緒にいると愛着が湧いてきて、どうしても服を着せたいという要望が出てくる。そんな時に、ちゃんと動く洋服があればと思っていたので、Pepperの洋服の実績もあるロボユニさんを紹介してもらいました。
河原さん
Xperia Hello!はびっくりしました。実際に服を着たロボットと着ていないロボットとで、ユーザーの反応を見て、可能性があるなと思ったことはありましたか?
ソニーモバイルコミュニケーションズ:冨永さん
Xperia Hello!は考えてこういうデザインになりました。それはそれでよかったのですが、手と足が付いていないので、お客さんは「ロボット感」をなかなか感じてもらえないんです。「これってもしかして他社の筒型スピーカーなの?」という誤解を、形状で感じさせてしまう。そんな時に、衣装で手をつけたのを見たところ、Xperia Hello!で少し足りなかったパーツを補うという意味で、非常にポジティブな可能性を感じました。
MJI:永守さん

タピアはこの中で唯一の女の子なんで。スゴイセクシーなんですよ。(ちょっと衣装をずらす)
一同
おぉー!
MJI:永守さん
タピアをセクシーだと思ったことなかったんですけど、ちょっと感情が…。(笑)
ユニロボット:酒井さん
最初、ユニボを泉さんに渡したところ、ユニボのデザイン上、他の衣装とは違い、3Dプリンタを使う必要がありました。いろんな会社の受付に置いたときにコーポレートカラーを入れたいという要望もあるので、パーツの色を変更できるようにもなっています。
西村さん
フランスのVivaTechという展示会に見に行ったのですが、そこにいた「Pepper」や「NAO」は裸だったんです。海外に展開したいなと思うことはありますか?
ソフトバンクロボティクス:中西さん
ユニフォームをその場で買えるようにすれば良いんじゃないかという意見は、そのVivaTechのイベントでもありました。
シャープ:景井さん
服を着るという「文化」の話は凄く大事な話だと思っていて、人間の社会に近付いていって人間と同じ様に社会性とかも広がっていくと思います。ファッションがロボット側から発信されるということになると、新しい価値観が生まれる気がしています。
西村さん
服を着たロボットの効果とかありますか?
ソフトバンクロボティクス:中西さん
ロボットを販売するときに、機能を訴求することはよくあるじゃないですか。見守りであったりとか。でも本来ロボットはそうではないんじゃないかと思っていて。もっと感情に訴えるとか、もっと内面的なものとか、人の気持ちに寄り添うとか、そういうのがちょっとずつ広がっていくのかなと。
ソニーモバイルコミュニケーションズ:冨永さん
Xperia Hello!はどうやって人に愛されるかというのをかなり研究して作っていて、手も足もないので、どうやったら表現をしたらいいかを頑張って作ったんです。人間には近づけないんだけど、やっぱりおじいちゃんおばあちゃんには孫みたいな存在になっている。愛され方ってものすごく抽象的で難しいけど、そこは日本だからこそ出来るものなのかなと。
河原さん
最後に、今後ロボユニさんにお願いしたい衣装はありますか?
ユニロボット:酒井さん
ユニボは手が取れるので、これが一つの特長で買ってもらえています。例えば手の色をピンク色とか。そういう世界観だったり。色が変えたいというお客さんがいるので、全面的に色を変えられるようにしたいなと。そういうところをお願いしたいなと思っています。
MJI:永守さん
今日はセクシーなので、もうちょっとおばあちゃんに好かれるようにして欲しいなと。
ソニーモバイルコミュニケーションズ:冨永さん
今回は1着目だったりするので、色々考えていきたいなと。愛されるといった面でキャラモノとか作れたら良いなと思っています。
講談社:秋永さん
今日始めてつなぎを着たので、これを着せたいですね。
シャープ:景井さん
次作っているのでどうしようかな…。もうすぐ夏なので浴衣を着せたいかなと。2歳の誕生会でロボホン音頭をやったので。地方で使ってもらう機会があるので。地域でしか作れない染め物とかあれば良さも伝わると思います。
ソフトバンクロボティクス:中西さん
次は帽子が欲しいですね。頭寂しいなと。色々クリアしないと行けない部分もありますが、帽子を被ることができれば、もっと世界観が広がるかなと思っています。
ロボットが服を着ることで、新しい文化が作られるというのは非常に興味深いトークセッションでした。「ロボコレ」がロボット、そして人間も含めた新しい文化のスタートになればいいですよね。







