AIを用いた検査支援システム、大腸ポリープの検出感度98% 大腸ガン発生リスクの低減目指す

大腸内視鏡検査中にリアルタイムでポリープを発見し、その組織診断を予測することが可能な、人工知能技術を用いた検査支援システムが、2018年5月11日 第95回日本消化器内視鏡学会総会シンポジウム、2018年6月2日 米国消化器病週間にて発表された。

同研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構革新的がん医療実用化研究事業「人工知能技術を用いた大腸内視鏡検査における病変検出・診断支援技術の開発」の支援を受け、東京慈恵会医科大学がエルピクセル株式会社(分担研究者)とともに実施しているもの。



ポリープの検知を検査支援システム

今回発表されたAIは主にポリープと呼ばれるイボのような突起物の検出を行う、検査支援システムだ。ポリープは大きくなって、ねじれたり、炎症を起こしたりすると、痛みや出血をともなうことがある。一般的に、ポリープはある程度大きくなったとしても、成長が止まれば心配はないといわれているが、大腸と胃にできるポリープはがん化する可能性が確認されている。



これに対し・人工知能は教師データに、約5万枚の大腸ポリープ画像を使用しており、形状・大きさや組織診断によらず、あらゆる大腸ポリープに対応している。



研究の成果では、大腸ポリープの検出感度98%、陽性的中率91.2%を達成し、内視鏡専門医であっても発見が容易ではない平らなポリープや微小ポリープに限定した場合でも、感度93.7%、陽性的中率96.7%の高精度で検出が可能だという。これらの支援によりポリープの見落としを減らすことで、将来の大腸がん発生リスクの低減が見込めるようだ。



研究開発の背景

日本では大腸がんの罹患率や死亡数は年々増加傾向にある。その予防や治療成績の向上には、腫瘍性ポリープを早期のうちに大腸内視鏡によって発見し、切除することが重要とされている。例えば、大腸内視鏡の大腸がん予防効果は、検査を行う医師の腫瘍性ポリープ発見率に影響を受けることが明らかになっており、医師のADRが1%上昇すると、将来の大腸がんが3%減少できる可能性も報告されている。しかし、医師のADRには、ばらつきがあることも明らかになってる。



これから日本では、社会の高齢化に伴い大腸がんの好発年齢層が急増することが予測されているが、内視鏡専門医の育成数を増やすことや、最先端の内視鏡システムを広く普及させるには、人的経済的負担が大きく、時間も掛かる。そこで東京慈恵会医科大学と、内視鏡医の技能や機械の性能によらず検査精度の底上げと検査の効率化を図るため、従来使用されている様々な内視鏡システムに対応が可能な人工知能技術による大腸内視鏡検査支援システムの開発に取り組んだ。



今後の展望

今後は同研究の良好な研究成果を踏まえ、すでに東京慈恵会医科大学附属病院の内視鏡室に同システムを設置し、臨床現場での評価に基づいた更なる改良に取り組んでいる。また来年度はさらに臨床試験を拡大し、同システムの有効性の確認を進め、このプロジェクトの実現により、より多くの人に良質な大腸内視鏡検査を「広く速やかに」提供することで、効率的に大腸がんの発生を未然に防ぐことが可能になるものと期待しているとしている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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