国内では認知症高齢者の人数は現在でもすでに450万人を越え、2025年までには700万人と、65歳以上高齢者の約5人に1人が認知症になる時代と言われている。この問題は国内だけでなく、海外、特に欧米やアジア圏を中心に深刻な問題になりつつある。特に認知症の前段階であるMCI(Mild Cognitive Impairment : 軽度認知障害)については、早期に検知することで運動や食事などの適切な対応により回復する可能性も示唆されており、日常生活の中からいかに早く気付くことができるかが重要とされている。
なくしもの防止&見守りタグ「biblle(ビブル)」の展開やAIを活用したヘルスケアや認知症予知検知の技術開発をしているジョージ・アンド・ショーン株式会社では認知症の前段階である「MCI」に着目した。ライフログとAIを活用した早期検知のアルゴリズムの開発を続け、この度、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)岡田研究室との共同研究により、日常的な生活データから認知症を早期に発見する研究成果が 『ACII 2019 Cambridge』にて論文選出されたことを9月13日に発表した。2019年9月3日から6日にケンブリッジ大学(英国)にて開催された国際会議にて。
ACII(Affective Computing & Intelligent Interaction)は感情分析コンピューティング分野における世界最大の国際会議だ。主な研究テーマは人間の感情や情緒に関係するコンピューティングやサイエンスが対象となっており、近年の研究では、人工知能研究の発展、感情が関与する問題の多様性から「人の感情をコンピュータで表現しようとする研究」、「表情、言語、心拍、呼吸などから人間の感情解析する人工知能を開発するための研究領域」、「感情、気分、態度、パーソナリティ等の感情的(Affective)な行動を感知、モデル化、表出することができる人工知能の研究」など、多様な研究成果が発表されている。
http://acii-conf.org/2019/
採択論文の概要
同研究では、主に「睡眠」「会話」「移動」の情報をセンシング機器から取得し、日常的な行動ログとして解析・分析を行うことで、認知症高齢者の固有行動を特定し、高齢者の認知症の早期特定、また、特定のペーパーテストや、医療ログを用いない利用者負担の低い検知方法を構成することを目的としており、その成果として、高齢者のロボットとの対話や睡眠センサーから得られる日常生活データに対して、認知症スクリーニングテスト(長谷川式認知症スケールテスト)と明らかな正相関を持っていることを論文内で発表している。
※同論文で記載されている数値は2018年3月時点での実績データをもとに構成されており、現在はさらに精緻な分析により、最大95%程度の精度で認知症のスクリーニングをすることが実現されている。
今回の論文が同学会にて評価を受けた理由は、感認知症高齢者の特定行動を日常的なライフログを活用したAI技術でモデル化することに成功した国際的にも先進的な事例であるというところにあり、高齢者の方が健康で長く生きていける都市づくりをしていくことをミッションとしている同社は、高齢者認知症の社会課題解決に向けて、多くの提携事業者とともに健康寿命延伸のためのサービス開発を続けていくと述べている。