マスクを利用した表現力拡張技術のイノベーション ステージテクノロジスト集団mplusplusがダンスでLEDマスクをアピール

LEDを用いたダンスパフォーマンスシステムの開発と演出、テクニカルディレクションを行うステージテクノロジスト集団mplusplus株式会社(以下mplusplus)は、コロナ禍におけるエンターテインメントの方向性を提示するパフォーマンス”NO MASK FOR ENTERTAINMENT”を公開した。

mplusplusはモーターショーTOYOTAブースやポケモン「ピカチュウ大量発生チュウ!2019」の総合演出など世界的有名企業からの案件を多数担当しているので、企業名はしらなくとも「あの光る衣装の演出の!」という形で覚えている読者も多いかもしれない。

今回はコロナ禍だからこそできる新しいパフォーマンスとして、顔をおおい、表情を隠してしまうマスクを「表現力の拡張」に転じた「LEDマスク」を開発。
自社で開発した技術とダンスを融合させ、表現に落とし込むテクノロジーダンスクルー、m++ DANCERSの初露出とあわせて今回のダンス動画を公開した形だ。

■動画 NO MASK FOR ENTERTAINMENT


mplusplusに見る、心を動かすプロダクトの磨き方

mplusplusは業界内でもトップクラスの技術力、演出力を持ち、オンリーワンの独自性もある。しかし、ライブエンターテイメント業界にとっては今回のコロナ禍のインパクトは大きく、非常に根深い影響を受けた。実際「エンターテイメント業界はコロナ以前の形を取り戻せないかもしれない」と感じるほどだという。

しかし、そんな状況下であっても、未踏出身の研究者の顔を持つmplusplus代表の藤本実氏はR&D活動を止めなかったようだ。
年末に募集、結成したという、自社プロダクトを身にまとって踊るm++DANCERSとともに深堀りしたのだろう、今回公開された動画は「シンプルながら深みのある光の表現」がどこか寂寥感のあるコロナ禍下の東京の風景にマッチしたものとなっている。

今回の動画でパフォーマンスしたm++ DANCERS

LED発光の制御は技術のハードルが低い。Arduinoやラズパイなどの初歩といえばまずLチカ(LEDを点滅させること)と言われるほどだ。
しかし、今回の動画を見るとその表現は驚くほど奥深いことがわかるだろう。
mplusplusの強みの一つはプロのアーティストのドームツアーなどでも使用されるほどの「同期、通信、安定性」に関する技術力の高さだが、その技術力を抜きにしても突出した表現力が動画からも見て取れる。

これは、自身が踊り手でもあり、トップクラスの表現者たちと舞台演出という形でコラボレーションしてきたメディアアーティスト、藤本実の力量を示しているといえる。

今回、ロボットやテクノロジーに関する情報を掲載する「ロボスタ」でmplusplusを取り上げたのは、

①LED発光のようなシンプルな技術であっても、「数万人が入場し、スマホを使う劣悪な電波環境下でアーティストの厳しい演出水準に応えつづける」、といったようなトップレベルのB2Bユースの中で磨かれると、凄まじい奥深さをもつこと。

②開発者自身がサービスや技術のユーザーであり、ペルソナである、もしくは社内に技術を使いながらユースケースを深めていく事ができるユーザー(今回の場合m++DANCERS)がいる、などの環境が整っていると、開発段階から内部でのバグ出しやブラッシュアップが高速で進むため、世の中に発表した時に驚くようなクォリティに達すること。

をお伝えしたかったからだ。

タイトルの「イノベーション」は随分大きなことを言ってしまった、と我ながら思うが、「単にマスクをLEDでピカピカひからせる」の延長線上にあるものとは大きな隔たりがあることを示したかったため。と許していただきたい。
この隔たりが、上記の「凄まじい奥深さ」「驚くようなクォリティ」だ。

2018年に開催されたYahoo HackDayでのパフォーマンスの動画(リンク)。この時はYahoo社内ダンス部員とのコラボレーションだった。

上にあげた動画(リンク)は2018年に開催されたYahooハックデイで行われたパフォーマンスで、今回のLEDマスクのプロトタイプとも言えるものだが、ここからの技術、表現力のジャンプが「イノベーション」と言わしめるような何かになったのではないだろうか。
そして、それに必要なものが、①、②のような環境整備にあるのではないかとおもうのだ。

これは、別にハックデイのパフォーマンスを腐しているわけではなく、この出来でも90%以上は満足するものだ。ワンデイのイベント向けに作ったものとしては十分高いクォリティだといえる。

しかし、そこに満足することなく95%、98%までクォリティをあげることで、ユーザーの心に驚きと感動を与える。
そのようなプロダクトやサービス作りをしようと思っている読者の方には、ライブ、エンタメのようなジャンル違いのものであっても仕事の進め方や環境整備を参考にできるのではないかと思う。

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梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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