音声スタートアップのVoicyが音声配信サービス業界カオスマップを発表 掲載されているサービスは国内外で展開する57種

音声×テクノロジーで新しい音声体験を創造する株式会社Voicyが、各方面の音声にまつわるサービスを分類した「音声配信サービス業界カオスマップ」の2020年版を公開した。
掲載されているサービスは国内外で展開する57種。これを見ることで、現在立ち上がりつつある音声配信サービス業界がどのような構造で成り立っているのかをイメージしやすくなるだろう。


イメージの湧きづらい音声サービスの水先案内に

2016年に創業したVoicyは、音声配信サービス業界ではリーディングカンパニーと自負しており、急激に拡大している音声業界の網羅的な情報を整理することで、利活用の活発化、さらなる発展を考えているようだ。

たしかに、『ながらぎき』が出来ることが多い音声配信だけに、起動時にしかロゴを見る機会も少なく、一度聞き始めてしまうと「この業界のこの会社」といった形でサービスに対して意識することも少ない。業界をきちんと分類、意識することでコラボレーションの可能性や、分野ごとの伸びなども意識する事ができるので、改めて考えを整理するのに役立ってくれるだろう。





B2C系

大きく分けて左側はB2C系と考えるとよいだろう。様々なコンテンツが配信されていることがわかる。もとになっている素材がラジオ、個人収録、メディア発の独自コンテンツ、コンテンツ制作会社制作のものなどさまざまだ。音声コンテンツ制作ツールがB2C側にくるというのも音声配信サービス業界の特徴だろう。動画などのメディアに比べて制作工数が少ないことから、発信に関するハードルが低いのがこの業界の特徴であるためだ。

Voicy自身、発信者目線で編集作業やノイズ除去などのしやすさで特徴を出すことで発信に関するハードルを下げ、ニッチで興味深い話題を提供する配信者(ユーザー)を呼び込んだことが成功のキーとなっているためこのような分類になったのだろう。



個人的に注目したい企業は

・本の読み上げサービスで聞き放題プランを展開しているaudiobook.jp(赤線部)

・ニュアンスの伝わりやすい肉声での発信と、検索性を高めるための「自動書き起こし」を組み合わせた「こえのブログ」(緑線部)

・書籍の要約を音声にしてきくことが出来るスキマ時間向けコンテンツ「flier」(水色線部)

・セカイカメラを開発した井口尊仁氏の「会話」をコンテンツ化する音声SNS「Dabel」(グレイ線部)

・先日100億円以上を調達して話題になった「会議室」をコンテンツ化する音声SNS、「ClubHouse」(オレンジ線部)

などだろう。


B2B系

B2Bはやや複雑だ。マネタイズのための音声広告を開発する企業、ビジネス開発する開発者向けに業界動向を伝えるメディア、観光地や博物館などと組んで音声ガイドを制作し、リアルの魅力を最大化する音声AR、音声ガイド業界など、様々な周辺分野にまつわる業界が紹介されている。一般ユーザーが購入可能なスマートスピーカー群、音声アシスタントなどが右側にあるのは違和感があるかもしれないが、コンテンツ制作者、広告配信業者などからみると配信プラットフォームとみなすことができることからだろう。

新規ビジネス企画や、マネタイズの道をリアルに考えている開発者にとっては非常に参考になる分類だ。



この分野で個人的に注目している企業をいくつか紹介してみよう。

・radiko audio Adはradikoプレミアム版が地域性を無視できるようになったことを逆用し、地方CMの部分に広告を差し込むというサービス、地域局ならではの面白いコンテンツに興味を持っているヘビーユーザーは多いだけに、興味を持つ広告主も多そうだ。(赤線部)

・Audiostartは実はロボスタが運営するスマートスピーカー向けの広告事業。AlexaスキルやPodcastなどを通じて配信されるコンテンツに広告を載せることによってコンテンツ主に利益を還元するサービス。(緑線部)

・Instreamaticは聴取者に興味の有無を問いかけるタイプの広告を配信、音声回答で興味のある聴取者にのみ追加の広告情報を配信するというサービス。(水色線部)
スマートフォンやスマートスピーカーのようなデバイスで聞くユーザーが増えていることからこのようなスタイルが出てきているのだろう。

・fluctは広告を掲載する媒体の広告収益の最適化を図るためのシステム、SSPを開発、運用している企業だが、音声広告に対しても対応し始めているため掲載されているようだ。(グレー線部)



・エンタープライズ向けの音声発信に関しては、Voicy Bizが面白そうだ。
様々な分野の配信者をサポートしてきた経験を活かしたサービス展開で、社員向けメディアやユーザー向けメディアの質を上げることができる。(紫線部)

・音声ARは観光をする際に街並みや観光スポットに対して解説を加える「33tab」(ミミタブ、青線部)や、地理情報に合わせて音声メッセージを埋め込んだり、聞いて楽しんで交流することができるmappee(オレンジ線部)などが、「新しい現実の楽しみ方」を提案している。「新しい生活様式」の中での旅は、このようなスタイルになっていくのかもしれない。

以上、簡単な紹介をしてみた。なお、今回のB2B,B2Cの分け方は、あくまで「自分が業界の説明をするためにカオスマップを作るとしたらこう配置するかもしれない」という予想で解説しただけなので見当はずれな可能性は大いにあることをご了承いただけるとありがたい。

ABOUT THE AUTHOR / 

梅田 正人

大手電機メーカーで生産技術系エンジニアとして勤務後、メディアアーティストのもとでアシスタントワークを続け、プロダクトデザイナーとして独立。その後、アビダルマ株式会社にてデザイナー、コミュニティマネージャー、コンサルタントとして勤務。 ソフトバンクロボティクスでのPepper事業立ち上げ時からコミュニティマネジメント業務のサポートに携わる。今後は活動の範囲をIoT分野にも広げていくにあたりロボットスタートの業務にも合流する。

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