NVIDIAがArmをソフトバンクGから400億ドルで買収 ケンブリッジにAI研究センターを設立、CEOからNVIDIA従業員へのメッセージ全文

かねてから噂があった大型買収が正式に発表された。
NVIDIAとソフトバンクグループは「NVIDIAがArm Limited(Arm)を約4兆2456億円(400億米ドル)で買収することに最終合意した」と、9月14日に発表した。

Armは世界的に有名な英国のテクノロジー企業で、プロセッサ用のコンピューティング「RISC」アーキテクチャで知られている。ビジネスモデルはコア設計とそのライセンスの供与(ICチップ自体の生産は行わない)。身近な機器ではスマートフォンやタブレット、ゲーム機、ロボット、ドローンなどで中核を担う技術として採用されている。日本でも人気の「iPhone」にも活用されている。従来は比較的小型のデバイスに採用され、IoT機器にも多数採用されていることから、将来性は大きく期待されている。
ソフトバンクグループは2018年に約3兆3000億円(243億ポンド)でArmを買収したと報じられていた。

2018年にArmを買収することを発表したときのソフトバンクグループの孫正義氏

NVIDIAとArmは2018年に「何十億台もの IoTデバイスにディープラーニングの導入を目指す」として連携を発表、更には今まで小型デバイス向けという印象があったArmのCPUコア技術を、NVIDIAが今や得意とするスーパーコンピューターやサーバーなどの大型コンピュータのプロセッサー開発にもArmの技術を活用し、新たな市場へのチャレンジを見せている。世界最速のスーパーコンピュータ、日本の「富岳」スーパーコンピュータにも Arm が採用されており、NVIDIA の Seleneは、世界で7番目にパワフルなシステムにランクされている。




NVIDIAとArm、ケンブリッジにワールドクラスのAI研究センターを設立

同日に、NVIDIAとArmがケンブリッジにワールドクラスのAI研究センターを設立することも発表された。
NVIDIAの創業者でありCEOのジェンスン フアン氏は同社のブログで「Armのテクノロジーを活用したスーパーコンピューターの施設を英国ケンブリッジに設立し、全世界のAI研究者、サイエンティストおよびスタートアップ企業のコラボレーションの中心地にする」と意欲を見せた。

ジェンスン フアン氏

人工知能は、今の時代の最もパワフルで、勢いのあるテクノロジーです。
これによって、自動化が自動化され、ソフトウェアがソフトウェアによって書かれます。AI はデータセンターに導入されているだけでなく、店舗や倉庫、病院、街路、空港といったエッジにまでどんどん進出しており、AI コンピューターに接続されたスマート センサがチェックアウトの迅速化、フォークリフトへの指令、交通の整理および電力の節約を可能にしています。近いうちに、AI を搭載した、これら数兆台の小型の自律コンピューターが、世界のあらゆる街角にある、きわめてパワフルなクラウド データセンターに接続されるようになるでしょう。

しかし、なにはともあれ、この分野は始まったばかりです。そのため、私たちは、Arm の本社がある、ケンブリッジにワールドクラスの AI 研究所を開設するのを楽しみしています。この施設は言わば、人工知能におけるハドロン衝突型加速器やハッブル宇宙望遠鏡のようなものです。

このようなことを成し遂げられるのは、NVIDIA と Arm しかありません。NVIDIA は AI コンピューティングのリーダーであり、Armは 1,800億を越えるチップを出荷しており、エッジ デバイスの広大なエコシステムで存在感を発揮しています。両社が融合する、今回の発表により、AI 時代の最高峰のコンピューティング企業が生まれようとしています。

Arm はすばらしい企業で、世界最高の頭脳を持つエンジニアが何人も在籍しています。しかし、私たちは、Arm をさらに優れた会社にして、より高いレベルに引き上げることができると信じています。Arm ならびに英国をさらに前進させて、世界の AI のリーダーにしたいと思っています。

私たちは、NVIDIA のテクノロジーに名前が冠せられた、アイザック ニュートンやアラン チューリングといった、知的巨人たちの故郷であった場所に、優れた才能を持つ者が集うことのできる場所を開設します。この場所では、英国および世界のトップクラスのサイエンティスト、エンジニアおよび研究者が自分たちのアイデアを育み、相互にコラボレートし、ヘルスケア、ライフサイエンス、自動運転車、その他の分野で画期的な研究を進めることができます。私たちは、世界中の最高の頭脳と才能を英国に呼び寄せたいのです。



ケンブリッジのAI研究センターの設備と機能

NVIDIAはAI研究センターについて次のように語っている。

・Arm/NVIDIA のテクノロジを活用したスーパーコンピューター
パワフルな AIスーパーコンピューターシステムは、最先端の Arm CPU、NVIDIA のGPU テクノロジーとNVIDIA Mellanox DPU が組み合わされ、さらに NVIDIA とそのたくさんのパートナーの高性能コンピューティングと AI ソフトウェアが実装される。

・研究のフェローシップとパートナーシップ
このセンターでは、NVIDIA は、英国内の研究パートナーシップを拡大し、学会および業界とともに、ヘルスケア、自律走行車、ロボティクス、データサイエンスなどで最先端の成果を出すための研究を行う。NVIDIA はすでに、キングス カレッジおよびオックスフォードとの研究パートナーシップを締結しているという。

・AIトレーニング
NVIDIA のトレーニング プログラムである Deep Learning Institute では、AI の基礎および応用を学ぶために、25 万人以上の学生が研修を受けている。NVIDIA は、ケンブリッジに研究センターを開設し、英国のどこでもこのカリキュラムを受けられるようにしたい考えだ。これにより、若者も、ある程度キャリアを積んだ人も AI の新たなスキルを身につけられるようになるため、雇用の機会が生まれ、英国の次世代の開発者が AI でのリーダーシップをとるための準備ができるようになる、としている。

・スタートアップ アクセラレータ
AI での最先端の業績の多くは、スタートアップ企業によるもの。スタートアップ アクセラレータ プログラム「NVIDIA Inception」には、6,000社以上の企業が参画している。そのうちの 400社以上が英国を拠点にしている。NVIDIA はこの分野への投資を行い、英国のスタートアップ企業に Arm スーパーコンピューターを利用する機会、NVIDIA およびパートナーとつながる機会、ならびにこれら企業を成長させるための技術トレーニングとマーケティング プロモーションを提供する。

・業界との連携
NVIDIA のこの研究施設は、業界の連携のための開放的なハブとなり、英国の優秀な人々たちが集う場とする。NVIDIA の業界パートナーには、GSK や Oxford Nanopore をはじめとする、それぞれの分野のリーダーがいる。COVID-19 との戦いへの支援から、新たなエネルギー源の発見まで、NVIDIA は、すでに英国内の業界と連携している、まだまだできることは他にもある、とした。


ジェンスン フアン氏がNVIDIA従業員へメッセージ

また、ジェンスン フアン氏はNVIDIAの従業員に向けてに向けて次のようなメッセージを送った。

ジェンスン フアン氏

みなさん、こんにちは。
本日、Arm 買収についての正式契約を締結したことを発表しました。
30 年前、英国ケンブリッジのコンピューター サイエンティストのビジョナリー チームが、電力効率を最適化する、新しい CPU アーキテクチャと、広範な分野での採用を可能にするライセンシングのビジネスモデルを発明しました。エンジニアたちは、スマートフォンや PC から、クラウド データセンターやスーパーコンピューターに至る、あらゆるものに Arm CPU を組み込みました。驚くべきことに、1,800 億台のコンピューターに Arm が実装されました。今年だけでも、その数は 220 億台に達しています。Arm は、世界で最も普及しているCPU になっています。

同社の CEO であるサイモン シガース (Simon Segars) と Arm の人々は、コンピューター業界だけでなく、世界中のほぼすべてのテクノロジ市場を変容させました。

私たちは Arm とともに、AI 時代の最高峰のコンピューティング企業を生み出します。AI は、今の時代で最もパワフルな勢いのあるテクノロジです。データから学習するAI スーパーコンピューターは、人間には書けないようなソフトウェアを書くことができます。驚くことに、AI ソフトウェアは環境を認識して、最高のプランを推論し、インテリジェントに行動することができるのです。この新しい形式のソフトウェアにより、世界のすべての街角にコンピューティングがもたらされるようになるでしょう。いつの日か、AI を実行する数兆台のコンピューターが、現在のヒトのインターネット (internet-of-people) の数千倍の規模を持つ、新しいモノのインターネット (internet-of-things) を生み出すようになるでしょう。

NVIDIA の AI コンピューティングと広大に普及された Arm CPU が一体となると、私たちは、非常に優れた AI がもたらす、前途に待ち受ける絶好の機会を活かして、クラウド、スマートフォン、PC、自動運転車、ロボティクス、5G および IoT でのコンピューティングをさらに前進させることができるようになるでしょう。

NVIDIA は、世界をリードする AI テクノロジを Arm のエコシステムに提供することで、現在 200 万人の開発者が利用している NVIDIA のテクノロジを、1,500 万人以上のソフトウェア開発者に届けることができるようになります。

NVIDIA の研究開発の規模は、Arm のロードマップの進捗を早め、データセンター、エッジ AI および IoTの機会を加速します。

Arm のビジネスモデルは、すばらしいです。私たちは、同社のオープンライセンシング モデルとお客様との中立的な関係性を維持して、世界中のあらゆる業界のお客様にご利用いただき、世界をリードする NVIDIA の GPU と AI テクノロジによって、Arm の IP ライセンシング ポートフォリオをさらに拡大させてまいります。

Arm の本社はケンブリッジに存続し、英国のテクノロジ エコシステムの中心であり続けます。NVIDIA は、Arm の名称と強固なブランド アイデンティティをそのまま残します。サイモンと彼の経営チームは、NVIDIA に加わることを楽しみにしています。

Arm が拠点を置いているからこそ、NVIDIA は英国において最小限の投資で成果を得ることができます。私たちは、NVIDIA の Turing GPU という名称の元になっているアラン チューリング、および Isaac ロボティクス プラットフォームに名前が冠せられたアイザック ニュートンを生んだ大学の街、ケンブリッジにワールドクラスの AI 研究センターを開設します。この NVIDIA の研究センターには、Arm CPU を活用した、最先端の AI スーパーコンピューターが設置されます。このコンピューティング インフラストラクチャは、ヘルスケア、ライフサイエンス、ロボティクス、自動運転車、その他の分野で画期的な研究を行っている、世界中の研究者から大いに注目されるようになるでしょう。このセンターは、大学、業界のパートナーおよびスタートアップ企業と連携するための、ヨーロッパのハブとして機能します。この場所は、ヨーロッパの NVIDIA Deep Learning Institute にもなり、このすばらしい AI テクノロジの利用方法を学ぶ場となります。

Arm と NVIDIA の社員が作り上げた基盤があったからこそ、AI の時代にトップクラスのコンピューティング企業を作り上げるという、このすばらしい機会がもたらされるようになりました。両社の融合が生み出す可能性は、計り知れません。

今から楽しみでなりません。

ジェンスン

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