伝統工芸品「熊野筆」の検品工程をAIで自動化 晃祐堂とブレインパッドのAIプロジェクト

ブレインパッドは伝統工芸品「熊野筆」を生産する株式会社晃祐堂とともに、熟練した職人が実施してきた筆の穂先の検品工程を自動化する「不良品検知プロダクト」を開発・導入したことを発表した。


約300種類もの化粧筆を製造・販売する「晃祐堂」

化粧筆や書筆に代表される伝統工芸品「熊野筆」の職人は「筆司」と呼ばれ、その中でも12年以上の筆づくり経験と、優れた技術・経験を持つ名人にのみ「伝統工芸士」の資格が与えられる。1978年創業の晃祐堂には3名の伝統工芸士が在籍し、同社が製造・販売する約300種類もの化粧筆には伝統に裏打ちされた高い技術が用いられている。


画像はYouTubeから引用

職人による手作りの熊野筆は、筆先の大きさや膨らみなどがひとつひとつ微細に異なるため、これまでは、晃祐堂の熟練の職人が目視で検品作業を担っていた。しかし、一人前の職人を育てるには大変な時間と労力がかかるうえ、判断が難しい場合には良品/不良品の判定が人によって異なることもあるため、晃祐堂はAIによる画像認識を活用することで、より正確な検品体制を構築したいと考えた。


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AIによる画像認識により、「職人の眼」を再現

ブレインパッドは熊野筆の良品サンプル約300本の画像を360度から撮影するところから着手し、データサイエンティストがAIに「良品」の判断基準を学習させた。そして、延べ約5,000枚に及ぶ撮影画像から不良品検知アルゴリズムを開発した結果、不良品の判定精度を90%以上にまで高めることに成功し、検品工程の1次スクリーニングとして十分な精度を確保した。


画像はYouTubeから引用

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その後、このアルゴリズムを実用化するため、ブレインパッドは外部ハードメーカーと共同で、「不良品検知プロダクト」の開発を進めた。約2カ月間のハードウェア開発期間を経て完成した「不良品検知プロダクト」は、晃祐堂からの「ITや機械に不慣れなスタッフでも簡単に取扱いできるものにしたい」との要望を満たすべく、穂首が360度回転する間に内蔵カメラが約20枚の画像を自動で撮影し、AIがこの画像を解析・認識することで良品/不良品の判別をわずか数秒で行う。


画像はYouTubeから引用

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株式会社晃祐堂 取締役社長 土屋 武美氏からのコメント

匠の技が集約された熊野の伝統技術により生み出される「熊野筆」は、本当に繊細な伝統工芸品です。当社は、「工場での検品」と「最終検品」の2段階の検品工程を通じて、筆職人が納得する上質なもののみを提供しています。

以前、自社で検品業務のマニュアル化を試みた際には、チェック項目の多さと、判断基準を数値化する難解さのために断念してしまったのですが、ブレインパッドは膨大な写真を丹念に精査するという方法にて、見事に不良品の判別基準を作ってくれました。その真摯な姿勢と高い探求力で今回のプロジェクトを成し遂げていただいたことに、たいへん感謝しています。

この取り組みは、検品工程における職人の負荷を軽減するだけでなく、後世に伝統技術を伝承していくための一助となる、弊社の未来にとってとても大きな成果だと言えます。

今後は、アパレルメーカーが検針機でのチェック結果を出荷時検査の証跡として製品に添えるように、「不良品検知プロダクト」で検品した結果をエビデンスとして添付することなどを見据え、「職人の眼」と「AIの眼」が当社のブランド品質を担保するような未来を実現していきたいと思っています。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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