キヤノンと日本IBMが芸術・芸能分野で協業 ボリュメトリックビデオ技術を活用した能楽「葵上」を公開

キヤノン株式会社と日本アイ・ビー・エム株式会社は、芸術・芸能分野においてボリュメトリックビデオ技術を活用した新たな価値の創出に向けて、2021年7月2日より協業を開始することを発表した。


ボリュメトリックビデオ技術と協業について

ボリュメトリックビデオ技術は空間全体を3Dデータ化する技術で、コンピューターの中に作り上げられたバーチャル空間内のあらゆるアングルから映像を生成できる。キヤノンでは2019年のラグビー国際大会などのスポーツ分野での活用からはじまり、2020年7月にはキヤノンの川崎事業所内に「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」を開設し、エンターテインメント分野にも活用の幅を広げている。

今回の協業では両社が持つ技術や製品、ネットワークを組み合わせ、芸術・芸能分野において、ボリュメトリックビデオ技術の活用とその幅広い可能性を知ってもらう機会を提供することで、芸術・芸能関連事業者や視聴者に向けて新たな価値の創出・拡大を目指す。

具体的にはキヤノンは撮影とほぼ同時に高精細な映像を生成するボリュメトリックビデオ技術により、新たな映像制作手法や視聴体験の提供とともに、映像による貴重な芸術文化の伝承に寄与する。日本IBMは芸術領域における知見と経験を生かし、芸術・芸能関連事業者に向けた戦略策定や実行支援などコンサルティング・サービスを提供し、芸術・芸能分野のデジタルトランスフォーメーションを推進する。また、並列計算専用サーバーと広帯域ストレージを組み合わせた高品質・高速かつ安全な映像データ処理・配信などの技術サポートを提供することで、ボリュメトリックビデオ技術を活用したサービス価値の向上に取り組む。


宝生会監修の能楽「葵上」のボリュメトリック映像を公開

協業の第一弾として、公益社団法人 宝生会監修の能楽「葵上」(あおいのうえ)のボリュメトリック映像を本日公開。ディレクターを務めた宝生流お家元・宝生和英氏の思い描く、能楽堂の舞台と精神世界とを行き来するイメージを巧みに表現している。

宝生会監修能楽「葵上」

「葵上」ボリュメトリック映像(画像はキャプチャ)

「葵上」ボリュメトリック映像イメージ

同映像の制作でキヤノンは実在する能楽堂をスキャン計測した3DCGや、ダイナミックな背景CGアニメーションの制作に加え、能楽師のパフォーマンスを「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」でキャプチャし、全体を統合する映像生成までをワンストップで行った。

「葵上」ボリュメトリック映像(画像はキャプチャ)

「葵上」ボリュメトリック映像(画像はキャプチャ)

日本IBMは先進の並列計算専用サーバー「IBM Power System AC922」と広帯域ストレージ「IBM Elastic Storage System」を組み合わせた高速インフラの構築や技術支援により、リアルタイムの映像描写に必要な応答性能を実現した。

キヤノンと日本IBMは協業により、芸術・芸能分野における新たな価値創出を図るとともに、ボリュメトリックビデオ技術の活用分野の拡大を目指していく。


ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎について

キヤノンの「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」は、演者の一連の動きを全方位撮影できるスタジオ。100台超の4Kカメラで撮影され3Dデータ化された演技はコンピューターの中に作り上げられたバーチャル空間内で再現され、あらゆるアングルから見ることができるため、新たな映像表現や演出が可能。撮影と自由自在なカメラワークを検討する編集工程を分離できるため、ワークフロー全体の時間短縮にも寄与する。

画像は「ボリュメトリックビデオ」ホームページより引用

スタジオはキヤノンの川崎事業所で2020年7月に稼働を開始し、これまで音楽番組やバラエティ番組、ドキュメンタリー番組、テレビ CM、プロモーション映像、伝統芸能の「歌舞伎」や「能」とのコラボレーションなど多数の実績を積んできた。 また、ボリュメトリックビデオをリアルタイムに生成できる機能を生かして、アーティストによる音楽やパフォーマンスのライブ配信においても新しい映像体験の提供を行っている。

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山田 航也

横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。

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