ティアフォー/川崎重工/KDDI/損保ジャパン/小田急/公園財団 自動配送ロボットの公道配送実証 西新宿で5Gと高精度測位を活用

ティアフォー、川崎重工業、KDDI、損害保険ジャパン、小田急電鉄、ホテル小田急(ハイアット リージェンシー 東京)、公園財団の7企業・団体は、西新宿エリアにて、自動配送ロボットが5Gを活用して公道を走行し、ラストワンマイルの配送を行う実証実験を実施していることを発表した。期間は2022年1月22日から2022年2月10日まで。
5Gを使って公道で配送ロボットが自動走行(遠隔管理)を行う実証実験は国内初としている。

横断歩道を渡る自動配送ロボットと、遠隔監視システムの操作(右) ©損害保険ジャパン


イアット リージェンシー 東京から「眺望のもり」まで料理を配送

走行ルートはKDDI新宿ビル付近から東京都庁第二本庁舎付近まで(約300-500m)の往復で一日数回走行している。また、2022年1月22日(土)には、ハイアット リージェンシー 東京(ホテル小田急)を出発し、新宿中央公園「眺望のもり」付近までホテルサービスの飲食物を配送。安定した自動走行により、荷崩れなく配送することができたという。

ハイアット リージェンシー 東京で料理を用意 ©損害保険ジャパン

自動搬送ロボットに積み込み ©損害保険ジャパン

ハイアット リージェンシー 東京を出発(実証実験のため、保安員がロボットに付き添う) ©損害保険ジャパン

新宿中央公園「眺望のもり」付近に到着 ©損害保険ジャパン

荷物を受け取り配達完了 ©損害保険ジャパン

体験した人からは、温かいまたは冷たい飲食物が配送できるとより魅力アップにつながることや、飲食物以外の重たい荷物の配送や、人が出入りしづらい場所への配送に役立つなど今後のユースケース拡大につながる意見があったとした。

体験者の声 ©損害保険ジャパン
西新宿の未来のライフスタイルを体感した利用者の声から
配送中にもお届け物が荷崩れしていないことに驚いた。
ロボットは表情もあって小さい子も怖からずに接することができる。
スピード感もありつつ、人が来るところでは一時停止するなど、思った以上の機能性がある。
こういったサービスが増え気軽にできるようになると大変うれしい。
ロボットの未来を感じる体験ができた。
コロナ禍においては、人と接触がないこのようなサービスは安心。
ロボットは当初期待してよりもコンパクトで色々な場面で適用できそう。
災害時の配送など、有事の支援時での利活用にも可能性を感じた。


遠隔操作・監視、コンタクトセンター、災害時を想定した運用

2022年2月3日以降の期間には、将来の自動配送ロボットの社会実装シーンを見据え、自動配送ロボットの自律走行を遠隔地で監視・操作する実証を行ったり、災害時のロボットの運用や避難場所のアナウンスなど、より効率性・可用性が高く安全な配送の実現を目指した実験も行われている。

自動配送ロボットの自律走行を遠隔地で監視・操作、コンタクトセンターの業務想定、災害時の対応(損保ジャパン) ©損害保険ジャパン


自動搬送ロボットは川崎重工業製、自動運転ソフトウェア「Autoware」搭載

自動搬送ロボットは川崎重工業製。オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を搭載する。遠隔監視に対応した自律運転機能を装備し、最大積載量は約30キロ、荷室に宅配便80サイズの荷物が6~7個積める想定となっている。





高精度な位置測位ができるPPP-RTK方式をテスト(KDDI)

自動配送ロボットでは5G通信のほか、高精度な位置測位ができるPPP-RTK方式がKDDIによって試された。この技術は従来からあるGPSが数メートルの誤差があるのに対して、数センチメートル級の少数誤差で自己位置を測位することができるもの。実践の結果、ロボットがより正確に走行ルートを移動できることが確認できた。


通常のGPSでは(右)道路にそって左側を走行し続けることは難しいが、高精度な位置測位が可能なPPP-RTKでは往路・復路ともに左側を通行することができる ※PPP-RTK方式の高精度測位について https://news.kddi.com/kddi/corporate/newsrelease/2021/07/19/5262.html


自動配送ロボット専用保険サービスへの布石(損保ジャパン)

自動配送ロボットが実際に普及するためには、万が一の事故やトラブルに備えたサポートや保険が必要だ。今回の実証実験では、その点を損保ジャパンが担当。自動配送ロボットにかかる自動運転リスクアセスメントを確認したり、同社の自動車保険用ロードアシスタンス「プライムアシスタンス」と連携したロボット運行の見守りサービスの検討、災害時情報サービスの提供などを実施した。将来の自動配送ロボット専用保険の商品化への礎となるだろう。

自動走行時に地震等の災害が発生、ロボットと遠隔監視センター、コンタクトセンターが連携 ©損害保険ジャパン

コンタクトセンターにより、避難場所のアナウンスと誘導 ©損害保険ジャパン

©損害保険ジャパン

©損害保険ジャパン

■動画

©損害保険ジャパン


参加した各社の役割


ティアフォー

・実証実験計画の策定
・オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」を活用した自動運転システムの開発・提供
・自動配送ロボットを運行するために必要な運行管理システムなどの開発・提供
・自動配送ロボットの自動走行オペレーションの遂行
・実証実験に関わる高精度3次元地図の提供


川崎重工

・自動配送ロボットの開発・提供
・自動配送ロボットの公道走行許認可取得に必要なハードの設計・改造
・自動配送ロボットのハードの改修・点検整備対応


KDDI

・自動配送ロボット運行に関わる 5G/4G LTE 通信ネットワークの構築、提供
・高精度位置測位システムの構築、提供


損保ジャパン

・自動配送ロボット運行にかかる自動運転リスクアセスメント
・自動配送ロボット専用保険の提供
・プライムアシスタンス*7 と連携した見守りサービスの検討、災害時情報サービスの提供


小田急電鉄

・ユースケース検証における実証実験の企画・調整やサービス利用者様との各種調整
・公園財団(新宿中央公園)との連携・調整


ホテル小田急

・ユースケース検証における実証実験フィールドの提供
・実証実験における飲食物等ホテルサービスの準備・提供


公園財団

・ユースケース検証における実証実験フィールド利用における各種調整



西新宿はスマート東京 5Gの重点整備エリア

超高齢社会を迎える日本では、高齢者人口の増加やドライバー不足などが社会課題となっており、ラストワンマイル配送のさらなる効率化が求められている。また、西新宿エリアは「スマート東京」の先行実施エリアであり、「TOKYO Data Highway 基本戦略」における5Gの重点整備エリアのひとつに設定されている。
この実証実験は、東京都内において5Gを活用したサービス事業の早期実用化を促進することを目的に、西新宿エリアの事業者と連携して実施している。地域活性化のためのシナリオの立案や自動配送ロボットを活用した新しいサービスの検証、ラストワンマイルを取り巻く社会課題の解決を目指す。



今後の社会実装の重要なステップに

今回、リーダーシップをとったティアフォーの取締役COO 田中大輔氏は総括として、事業面、運用面、技術面と、3つの解決課題を掲げ、これらの洞察は今後の社会実装の重要なステップとなる、と語った。


事業面での課題解決
事業エコノミクス実現のための収益モデルの構築
運用コストの飛躍的な低減
各種サービスとの連携・連動による付加価値向上

運用面での課題解決
関係各所とのより効率的な調整の仕組みの導入
より積極的なマーケティング

技術面での課題解決
より複雑なシナリオを実現する機能性の向上
より多くのロボットを運用できる拡張性の向上
さらなる安全の追及

そして田中氏は「実装のカギは力を結集させて取り組みを継続させること」と締めくくった。

【報道関係者向け発表会 登壇者】
株式会社ティアフォー 取締役COO 田中大輔氏
川崎重工業株式会社 社長直轄プロジェクト本部 近未来モビリティ総括部 システム開発部 部長 矢木 誠一郎氏
小田急電鉄株式会社 新宿プロジェクト推進部 プロジェクトマネジャー 中江 徹氏
KDDI株式会社 事業創造本部 次世代基盤整備室長 泉川 晴紀氏
損害保険ジャパン株式会社 リテール商品業務部長 平野 貴之氏

ABOUT THE AUTHOR / 

神崎 洋治

神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。

PR

連載・コラム