2022年3月6日(日)、Vtuber「シマハイイロギツネ」による「リアルごあいさつ会」が新宿マルイ アネックスで開催され、多くのファンが集まった。このイベントでは、アスラテックの先進ロボット制御技術「V-Sido」(ブシドー)を搭載した遠隔操作で動くロボット「シマハイロボ」が導入された。
いつもの二次元の「シマハイ」はベレー帽とツインテールの髪型だが、今回のロボ化ではフードとお下げ髪のスタイルで登場した。
ロボットはVtuberと動きをリンクし、細やかな力制御によって安全に人と触れあえる機能を持つ。「V-Sido」はアスラテックのロボット制御技術で、横浜の動く実物大ガンダムでも使用されている。
ロボになったVtuberとファンが直接ふれあえるイベントに
ファンの視点で見ると、従来のVtuberとの交流イベントは、Vtuberと画面モニター越しで交流するものだったが、ロボットを導入することにより、そこに実在し、「Vtuber本人と直接ふれあえる」貴重なイベントとなった。
シマハイロボの精巧な動きに驚きの声
イベントは15時と16時の会が用意され、それぞれ55名が参加した。新宿マルイ アネックス開店時にチケット(整理券)が配布され、わずか8分で予定枚数の配布が終了した。
会場にはVtuberの明るく元気な声が響き、参加者はシマハイロボの精巧な動きに驚き、写真を撮り、握手や会話を楽しんだ。
■動画 Vtuberシマハイイロギツネのリアルごあいさつ会
■動画 子ども達との出会い、お別れのご挨拶
大好きなポーズは「威嚇」(シマハイロボ)
イベント終了後、シマハイロボが報道関係者からの質問に回答する「囲み取材」が行われた。
ロボティクス技術では難しい「腕を組む」ポーズをしたり、そのほか、威嚇、ガッツポーズ、おでこを触るポーズなど、動きの滑らかさと豊富な動きのバリエーションを披露した。一番好きなポーズは威嚇のポーズ。
普段はVtuberとして番組を一方向から配信していて、シマハイの姿で交流する機会がなかなかなかった。稀少な機会があったとしてもファンとはモニター越しに交流してきたが、今回シマハイロボになってやってきた。皆さんがシマハイロボを見たときの衝撃的なリアクションを感じるし、握手ができて、参加者の皆さんの手の力もフィードバックで感じることができる、もはやロボ(だけ)でいいんじゃないか、「皆さんを驚かしてやったぜ、みしし(笑)」と語った。
シマハイロボは遠隔操作のマスタースレーブ方式で動作しているが、ロボット側がサーボモータ等で受ける「力覚」情報が操作側にフィードバックされるしくみになっている。それがシマハイの「握手やハグを感触として感じられることが、配信とリアルふれあい会の明確な違い」というコメントに繋がっている。
将来、ロボでやってみたいことを聞かれると「歌って踊ったり、料理を作ったり、ファンの皆さんと一緒にできるレクリエーションイベントをやってみたいという野望がありましゅ」と笑った。
また、ファンへのひと言については「普段は”けものフレンズ”の”シマハイイロギツネ”で配信活動していますので、このロボの記事を見て興味を持ってくれた方がいらしたら、ぜひ配信を見にアクセスしてくれたら嬉しい、よろしくにゃ」と答えた。
■動画 シマハイロボ 特別インタビュー
https://www.youtube.com/channel/UCMpw36mXEu3SLsqdrJxUKNA
吉崎航氏に聞く 「シマハイロボ」開発のきっかけとポイント
ロボット制御ソフトウェア「V-Sido」の開発者で、アスラテックの技術開発部チーフロボットクリエイターの吉崎航氏に、今回のプロジェクトについて聞いた。
編集部
「けものフレンズVぷろじぇくと」に「シマハイロボ」を提供することになったきっかけを教えてください
吉崎氏
もともとは遠隔操作ロボット「ねこずきん」を開発して、個人のTwitterアカウントで動画を公開していました。「ねこずきん」には、人とインタラクションできる「バイラテラル」(二方向)な技術を導入していて「それを使ってファンとロボットがコミュニケーションをとれるんじゃないだろうか」と配信していたところ、今回のふれあいイベントのオファーを頂きました。
アスラテックの「V-Sido」は、本体のサイズに関わらず、様々なロボット制御で活用できるソフトウェア技術です。そのユースケースのひとつして紹介したいと思い、「シマハイロボ」を開発することになりました。
下の動画が「ねこずきん」。遠隔操作の様子も確認できる。
■【V-Sido】211128 ねこずきんロボットを作ってみた
編集部
全長4mの水道橋重工「クラタス」や、全長18mの横浜「動く実物大ガンダム」などの巨大ロボットと同じ制御技術がベースになっていますね
吉崎氏
同じ「V-Sido」を使っています。その場でなめらかな動きを自動で生成する技術と、ロボット側の情報をリアルタイムでオペレータにフィードバックする技術、それらを組み合わせることによって、「シマハイロボ」のように触れあえて、ファンとオペレータが実際にロボットを通して触れあえる体験が実現できます。
編集部
オペレータは簡単にロボットを遠隔操作できるものなのでしょうか
吉崎氏
「V-Sido」には自然な人間らしい動きを自動生成する機能が備わっています。そのため、遠隔操作に慣れていない方が操作しても、滑らかなロボットの動きを実現することができます。
しかし、誰が操作しても同じ動きになるというものではなく、操作者の動きの特徴を表現するように配慮しています。Vtuberの方の、それぞれ独特な動きやポーズをロボットができるだけ忠実に表現するように開発しています。
編集部
最後に、今回の「シマハイロボ」のポイントを教えてください
吉崎氏
硬いロボットにとって腕を胸の前で組むのは意外と難しいのです。力でロボット自身を壊してしまわないように自動的に制御するしくみを導入して、キャラクターのもつ性格をポーズで性格に表現できる工夫をしています。
また、何より先ほども触れた「バイラテラル」というテーマを重視し、ロボット制御うんぬんというよりも、このような「ふれあいイベント」でご活用頂けたという点の方が一番のポイントだと思っています。
5人目のVtuberとなる「ダイアウルフ」も登場
現在、好評配信中のケープペンギン、フンボルトペンギン、シマハイイロギツネ、コヨーテに続き5人目のVtuberとなるダイアウルフの情報を解禁された。初回配信は3月19日(土)19:00開始が予定されている。
なお、バーチャルアイドルONLINEライブフェスの第3弾『Life Like a Live!3』(えるすりー3)に「けものフレンズVぷろじぇくと」からフンボルトペンギン、シマハイイロギツネ、コヨーテが出演することも決定している。
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神崎 洋治神崎洋治(こうざきようじ) TRISEC International,Inc.代表 「Pepperの衝撃! パーソナルロボットが変える社会とビジネス」(日経BP社)や「人工知能がよ~くわかる本」(秀和システム)の著者。 デジタルカメラ、ロボット、AI、インターネット、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。教員免許所有。PC周辺機器メーカーで商品企画、広告、販促、イベント等の責任者を担当。インターネット黎明期に独立してシリコンバレーに渡米。アスキー特派員として海外のベンチャー企業や新製品、各種イベントを取材。日経パソコンや日経ベストPC、月刊アスキー等で連載を執筆したほか、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数(アマゾンの著者ページ)。