長距離3D-LiDARを使って滑走路の異常を確認!NECが南紀白浜エアポートで異物検知を行う実証実験へ その仕組み解説

空港における飛行機の安全と運航効率を確保するために、滑走路点検の一つである定時点検(主に路面の欠片などの異物検知が目的)は重要な業務だ。一方で、滑走路点検は職員が人手・目視によって行うことが多く、職員にかかる「見落としは許されない」という心理的ストレスを軽減させることが継続的な安全確保には重要となっており、さらに地方空港では限られた人員で多数の点検業務や保守業務を行なうため、デジタル技術を活用した業務の高度化および効率化が求められている。

そこで、日本電気株式会社(NEC)と株式会社南紀白浜エアポートは、南紀白浜空港における滑走路の点検業務の効率化や精度向上に向け、「長距離3D-LiDAR」を活用して滑走路上の異物検知を行う実証実験を4月から実施することを発表した。

両社は、2020年から様々なデジタル技術を活用し、滑走路の点検業務効率化、予防保全に取り組んでおり、具体的には、滑走路を走る点検車両のドライブレコーダーを活用した「くるみえ for Cities」による滑走路面の点検業務効率化や、衛星合成開口レーダを活用して空からの滑走路面の変動や空港周辺の建築物や木々などの障害物の検知に向けた取り組みを進めてきた。

今回、夜間時間帯での点検業務デジタル化に向けて、これまでの「蟻の目」(ドライブレコーダーによる狭域監視)と「鳥の目」(衛星合成開口レーダによる広域監視)による取り組みに加え、新たに「コウモリの目」(長距離3D-LiDARによる暗闇での監視)を用いた実証実験を開始し、これら3つの目によって空港維持管理業務のさらなる高度化・効率化を目指していく。




「長距離3D-LiDAR」について

「長距離3D-LiDAR」は、レーザー光を照射し物体からの反射光を捉えることでその物体までの距離を測定する技術である3D-LiDARに、同社が長年の光通信分野で培った光送受信技術である「長距離・大容量光送受信技術」と3D点群データ解析技術の2つのNEC独自技術を組み合わせたセンサシステムだ。同システムでは、通常の3D-LiDAR では200m前後の検知が、最長1kmの長距離で検知可能。さらに、レーザー光は暗闇でも測定可能なため、夜間時間帯の異物検知が可能となる。

NECと南紀白浜エアポートが目指す2030年の空港維持管理イメージ


LiDAR(Light Detection And Ranging)とは

LiDARとは、レーザー等の光を対象物に照射し、その反射光を捉えることで、その対象物までの距離や輝度を測定し、対象物の形状・輝度を読み取る技術だ。測定結果は3次元のx,y,zの点の集合からなる3次元の点群データとなり、対象物を可視化することができる。

■【動画】人に寄り添い心躍る暮らしを支える LiDAR 異常検知分析システム [NEC公式]




異物検知の仕組み

現在、滑走路の定時点検業務は1日2回滑走路全面を車両で往復し、職員が目視で異物が無いことを確認しており、今回、「長距離3D-LiDAR」を活用することにより、レーザー照射機器から1km圏内にある異物の位置や距離だけでなく、形状までが数センチ単位で立体的に管理端末の画面上に表示され確認することが可能となる。さらに、レーザー光により飛行機の運航が比較的少ない夜間時間帯での異物検知点検が可能となり、日中の時間帯を他の業務に割り当て可能。これらにより、職員の目視確認の省力化や確認作業時間の短縮化などの業務効率化、および検知精度の向上を評価・検証する。なお、1km先まで認識が可能なためレーザー照射機器1台当たりの対応範囲が広く、レーダ活用の検知システムに比べ機器の設置台数が減り、設置や運用などのトータルコストの削減も期待できる。

長距離3D-LiDARを活用した異物検知システムの概要

長距離3D-LiDARを活用した異物検知システムの利用イメージについて

また、航空機が安全に離着陸するために、空港周辺の一定の空間を障害物が無い状態にしておく必要があり、この空間の高さ制限を制限表面と呼び、航空法により制限表面よりも上の空間に建造物や植栽などの物件を設置することが原則として禁止されているため、今後は、制限表面監視にも「長距離3D-LiDAR」を活用し、目視確認の省力化、測定精度の向上を検討するなど、安全安心な空港施設の実現に向けてさらなる予防保全に取り組んでいくとのことだ。


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ロボスタ編集部

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