発達に特性がある子ども達の学習をIoT文具「しゅくだいやる気ペン」が支援 5大学1施設の専門家が共同研究
コクヨ株式会社は京都橘大学および大阪公立大学ほか3大学1施設の研究チームと共同で、発達に特性がある生活や学習に工夫が必要な子どもたちに対し、「しゅくだいやる気ペン」を用いた学習支援の研究を開始することを発表した。
研究背景
文部科学省の調査によると、公立の小中学校の通常の学級において、学習面または行動面で著しく困難を示す児童は6.5%、2018年の全国での不登校児童数を16万人と言われている。発達障がいへの理解や支援について、以前に比べ社会の関心は高まっているが、支援ニーズに供給が追いついていないのが現状。
また、学習支援の現場のみならず家庭においても同様の課題が存在する。学童期の児童が机に向かう習慣をつけるために、保護者や教育者は様々な工夫を施す。しかし様々な周囲の努力があるにも関わらず、家庭学習現場からは「取り掛かりまでに時間がかかる」、「持続して机に向かえない」、「運筆が不安定」など、様々な要因から子どもの学習習慣の獲得は容易ではない。
日々の努力を“見える化”する「しゅくだいやる気ペン」
「しゅくだいやる気ペン」は、いつもの鉛筆に取り付け、日々の努力を“見える化”するIoT文具で、利用者から「子どもが自ら机に向かうようになった」といった声を得ている。この「しゅくだいやる気ペン」を発達に特性のある子どもたちの学習習慣の獲得を支援している医療専門職のひとつで、“生活や学習のしやすさを提案する専門家”である作業療法士の先生が試用した際、顕著な成果を得た例があったため、今回、本格的な研究へと移行した。また、IoTデータや観察結果から、子どものタイプによって、やる気が引き出されるポイントが異なることも分かってきた。
今回の取り組みはIoT文具「しゅくだいやる気ペン」本来のミッションである親子のコミュニケーションを促す「日々の努力を“見える化”する」ことに加え、多様な子どもたちのタイプ別の学習支援方法を追求するという社会課題解決に積極的に貢献したいとの思いから生まれた新たなチャレンジとなる。
コクヨのIoT文具「しゅくだいやる気ペン」はスマートフォンアプリと連動して、子どもの日々の努力を「見える化」することで、学習への意欲を高めていくために開発された商品。センサー付きアタッチメントを鉛筆に取り付け、勉強への取り組みに応じて溜まった「やる気パワー」をスマホアプリに取り込んで見える化する。「かく⇔ほめる」の好循環を生み出すことで、親子のコミュニケーションを円滑にし、子どもが自発的に学習する習慣を促していく。2020年「第14回キッズデザイン賞」(子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門)を受賞した。
100名規模を対象に「しゅくだいやる気ペン」の有効性を検証
発達に特性がある子どもたちに対する学習支援ツールとしての「しゅくだいやる気ペン」の有効性を検証するため、研究チームは100名規模の対象者に対し、「しゅくだいやる気ペン」を使った家庭学習を行い、質的な変化を分析する班と、しゅくだいやる気ペンから得られるIoTデータを分析する班にわかれて研究を行う。2班は相互に連携を取りながら、2023年12月を目途に、研究成果をしゅくだいやる気ペンホームページおよび各学会にて発表する。
質の面では同ツールを教育現場における学習習慣獲得のための方策のひとつとして検討し、専門職(作業療法士)の視点から、同ツールの教育および療育現場での適応の方向性を示す。IoTデータの分析からは教育・療育の現場にフィードバックするサイクルを回すことで、子どもの個性に応じた学習習慣の獲得方法、家庭学習支援方法、やる気向上策等を見出していく。
京都橘大学 健康科学部 作業療法学科 川﨑 一平助教・原田 瞬助教
大阪公立大学医学部リハビリテーション学科(研究当時 大阪府立大学)中岡 和代講師
藍野大学 医療保健学部 作業療法学科 高畑 脩平助教
白鳳短期大学 リハビリテーション学専攻 作業療法学課程 福永 寿紀講師
大阪人間科学大学 保健医療学部 作業療法学科 西井 正樹教授
児童デイサービス施設 合同会社BASEともかな 高島 聡江 氏
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山田 航也横浜出身の1998年生まれ。現在はロボットスタートでアルバイトをしながらプログラムを学んでいる。好きなロボットは、AnkiやCOZMO、Sotaなどのコミュニケーションロボット。