ロボティズ、カメラ付きアームでボタンを押せる配送ロボット「GAEMI(ケミ)」を2023年夏から日本国内展開

韓国のロボット企業 ROBOTIS社の日本支店 株式会社ロボティズは、同社が開発した自律走行搬送ロボット「GAEMI(ケミ)」を日本国内でも2023年夏から本格展開すると発表した。東京ビッグサイトで2/7〜10日の日程で開催された「国際ホテル・レストラン・ショー HCJ2023」でブースを出展した。主にホテルへの導入を想定する。

主にホテルでの活用を想定


ROBOTISの屋内用自律走行搬送ロボット「「GAEMI(ケミ)」

「GAEMI(ケミ)」は移動台車にアームをつけた、いわゆる「モバイル・マニピュレーター」の一種。収納スペースは2段あり、事前に作成したマップに基づいて、一度のデリバリーで別々の2部屋までルームサービスを届けたり、ランドリーの回収・返却などが可能なロボットだ。


特徴はカメラ付きのアームとボタンが押せる「指」

アームの先にはステレオカメラと「指」がついている

特徴は無線通信による設備連携をせずにフロア間移動ができるところ。ステレオカメラ付きのアームを使って、エレベーターや自動ドアのボタンを物理的に押せる。ロボットは深層学習を使った画像認識技術のみでボタン位置を認識し、先端の指でボタンを押す。

事前にカメラで写真を撮影して学習させる必要はあるが、環境側にマーカー等の設置は不要。無線通信を使ったエレベーター連携のための追加工事も要らない。事前の学習は必要になるが「基本的にどのメーカーのエレベーターにも対応できる」という。

■動画

客室前に到着すると、その腕でドアをノックすることもできる。

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大きさは50cm × 50cm × 117cm。重さは70kg。連続稼働時間は15時間。充電ステーションへの自動復帰・自動充電が可能。

大きさは50cm × 50cm × 117cm。重さは70kg

韓国語、中国語、日本語、英語に対応している。

既に日本語にもローカライズされている。


開発にはROSを活用、韓国「変なホテル」他で活用中

シンプルな白黒デザイン

開発にはロボット用ミドルウェアの「ROS」が活用されている。まずは収集したデータを使ってシミュレーター上で確認し、実機に持っていき、現地で合わせ込んでいくことで、オーダーから学習・設置まで、およそ2週間で運用できる。ロボティズ日本支店の支店長・柴田善広氏と ROBOTISグローバル営業チームの日本担当 Peter Kim氏によれば「運用すればするほど、写真や動画を教師データとして収集することでより配送経路も効率化できる」とのこと。

既に韓国のホテルではサービスを開始しており、「変なホテル ソウル 明洞」などでも使われている。新型コロナ禍以降に増大した非対面ニーズに応えている。

■動画


エンドユーザーにはサブスクで提供、月10万円から

「国際ホテル・レストラン・ショー HCJ2023」ロボティズブース

「GAEMI(ケミ)」は、今後3年間で2,000台の出荷を目指している。Kim氏は「今年の7月に日本に進出して、色々なホテルに投入したい」と語った。日本以外にもアメリカ、カナダなどでも展開し、2023年末までで最大1,000台の展開を目指す。 海外への展開は今回の日本が初めて。

HCJでの反応は「思っていたよりも良かった」とのこと。一番多かった質問はやはりエレベーター連携についてで、これは韓国でも同じだそうだ。「エレベーターの種類関係なくできるかとよく聞かれる。エレベーターのボタンは会社ごとに違いますが可能です。エレベーターと連携しようと思ったら費用が数百万円必要になり、そこで話が止まって時間がかかってしまうことが韓国でも多い。『GAEMI』はロボットだけ投入すれば運用できる。学習させればどんなエレベーターでも乗れる」(Kim氏)

提供形態は売り切りではなくサブスクリプション。詳細は未定だが、予定では月に10万円で、メンテナンス費用も含む。韓国では、ROBOTIS が直接サブスクでエンドユーザーに導入しているが、日本国内では日本支社からシステムインテグレータに販売し、システムインテグレーターからサブスク提供とする予定。現在、システムインテグレータを募集中だという。

なおエレベーターにおける搬送ロボットと人との共存については、韓国では多くのケースではエレベーターにはロボットと人が一緒に乗っているとのこと。人が多い場合は混雑を検知してロボットは待つ機能もあるという。いっぽう「変なホテル ソウル 明洞」では、人とロボットの運用は分けているとのこと。「お客様のニーズに合わせている」とのことだった。

また現在は韓国国内のサーバーで運用しているが、今後、日本国内のサーバーを立てることも考えているとのこと。


アクチュエーター提供からサービスシステム全体の開発へ

「GAEMI(ケミ)」にも「DYNAMIXEL」が使われている

ロボティズは1999年に創業。ロボット用マイコン内蔵アクチュエータ「DYNAMIXEL(ダイナミクセル)」シリーズや、オープンソースの研究用プラットフォームロボットの販売で知られている。近年はデリバリーロボットなどサービスロボットのソフトウェア・ハードウェア開発にも力を入れている。システム提供できる会社として各国にアピールしたいと思っているという。

「GAEMI(ケミ)」が韓国外で公開されるのは今回が初めて。なお「GAEMI(ケミ)」は韓国語で「アリ」を意味する。「建物のなかで働きアリのように働く」という意味が込められている。

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森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。WEB:http://moriyama.com/ Twitter:https://twitter.com/kmoriyama 著書:ロボットパークは大さわぎ! (学研まんが科学ふしぎクエスト)が好評発売中!

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