NTT コンクリート構造物の撮影画像から高精度に劣化を計測する技術を確立 インフラ設備点検の低コスト化の実現へ

道路、トンネル、橋梁、ダム等のコンクリート構造物は経年に伴い、「ひび割れ」「剥離」、コンクリート内部の鉄筋が腐食により表面に露出する「露筋」等の劣化が発生する。

昨今では社会インフラ設備の老朽化が進行しており、施設管理者は安心安全なインフラ設備の維持管理のために定期的な点検を行っているが、劣化の計測作業は点検員による現作業を必要とするため、専門の点検員不足という問題を抱えている。また、専用車両による計測は機材コストが高く、適用設備が限定されることなどより、簡易な機材で効率的に点検できる方法が必要とされている。

このような現状に対応すべく、日本電信電話株式会社(NTT)は、コンクリート構造物の撮影画像から構造物に発生した劣化を検出し、その大きさを自動的に計測できる技術を確立。実設備における検証の結果、誤差(メジャーで実測した劣化の長さ(cm)を基準とした際の本技術で計測した劣化の長さ(cm)の相対誤差)が10%未満の精度で劣化の大きさを計測できることを確認した。

同技術により、市販のデジタルカメラで構造物の画像を撮影することで劣化の大きさを自動計測できるため、現行のメジャーや専用車両を用いた計測作業が不要になり、点検稼働・コストの削減ができる。同社ではインフラ設備点検業務の高度化により、維持管理コスト増加等の社会課題の解決に貢献するとのことだ。

なお、この技術は「画像認識によるインフラ構造物の劣化自動判定技術」との展示名で、2023年5月17日(水)~18日(木)に開催予定の「つくばフォーラム2023」にて紹介される。
(※冒頭の画像:劣化計測技術の構造)



劣化計測技術の概要

市販のデジタルカメラで撮影したコンクリート構造物の画像から劣化の検出と計測を自動的にできる劣化計測技術を構築した。画像から劣化の実際のサイズ(実サイズ)を計測するためには、劣化の場所(画素領域)を検出することと、画像中の大きさを実サイズへ換算するための尺度(画像スケール ※単位:画素/cm)が必要だ。

●劣化検出技術:コンクリート構造物に発生する各種劣化(ひび割れ・剥離・露筋・漏水)の画素領域を検出することで画像における劣化の大きさを把握する。
●スケール推定技術:コンクリートの表面情報を用いて画像スケールを算出する。

図1は、コンクリート壁面の撮影画像から露筋の実サイズを計測する流れを示しています。劣化検出技術が検出した画像中の露筋の長さは100画素、スケール推定技術が推定した画像スケールは10画素/cm(撮影画像の10画素が実サイズの1 cm相当)す。これらの結果から、露筋の実サイズを10 cmとして計測する。

コンクリート壁面の撮影画像から露筋の実サイズを計測する流れを示している。劣化検出技術が検出した画像中の露筋の長さは100画素、スケール推定技術が推定した画像スケールは10画素/cm(撮影画像の10画素が実サイズの1 cm相当)。これらの結果から、露筋の実サイズを10cmとして計測する。




実設備における課題とスケール推定技術のポイント

コンクリート表面は骨材や空隙等により凹凸形状になっており、この凹凸の画像中における大きさを解析することで画像スケールを推定できる。しかし、実際のコンクリート構造物は屋外や地下に設置され壁面に汚れが付着しコンクリート表面情報が画像から失われるため画像スケールの推定精度が低下し、劣化の正確な計測が難しくなるとの課題がある。

通信用トンネルのコンクリート壁面

スケール推定技術は独自アルゴリズムによりコンクリート表面情報を解析することで一様に汚れが付着した構造物の画像からでも高精度に画像スケールを推定できる。高精度な画像スケールの推定には汚れが多く付着しコンクリート表面情報が失われた領域の除去が必要だが、汚れの程度は見た目ではわからないため、同技術は撮影画像を矩形領域に分割した後、特徴の異なる2つのAIを用いて矩形領域を解析することで汚れが少ない矩形領域のみを抽出し、画像全体のスケールを高精度に推定可能となる。

▼スケール推定技術の特長

1つ目のAI(推定AI 1)では、汚れが少ない矩形領域が入力された場合、正解の画像スケールに非常に近い値を推定できるが、汚れが多い矩形領域では推定値が正解から大きく離れる。2つ目のAI(推定AI 2)では、汚れの程度に関わらず正解の画像スケールに近い値を推定。これらのことから、スケール推定技術は2つのAIの値が近い場合は汚れが少なくスケール推定に適した領域、離れた場合は汚れが多くスケール推定に適さない領域として判断する。




スケール推定の検証と結果

通信用のトンネルを対象に市販のデジタルカメラで3000枚の画像を撮影し、スケール推定技術を用いた画像スケールの推定を行った。また、既往技術(MobileNetV2)による推定値と比較した。

スケール推定の検証結果:スケール推定技術を用いた場合、誤差※85.7%の精度で推定でき、既往技術の精度に対して約4割向上したことを確認した。また、バラツキ※9は5.8%であり、既往技術のバラツキに対して約4割抑制できることも確認できた。




劣化計測の検証と結果

通信用トンネルに発生した30本の露筋を対象に、劣化計測技術の性能検証を実施。劣化計測技術による露筋の計測値と既往技術を用いた計測値を現地でメジャー計測した実寸長と比較した。

露筋の長さ計測の検証結果

同技術により自動計測した露筋の実寸長さの平均の誤差1は9.4%、最大の誤差は17.8%だった。既往技術で発生した最大の誤差52.7%の露筋を本技術では誤差17.1%(約7割抑制)で計測でき、実設備において安定した精度で計測できることを確認した。この結果から、同技術による計測値は劣化の規模を把握できる精度であるため、実運用の補修要否や優先度の判断に活用できるといえる。



同技術の効果と今後の展開

同技術を用いることにより、市販のデジタルカメラでコンクリート構造物を撮影することで自動的に劣化を検出しその大きさを計測できるため、点検の効率化・機材コストの削減が可能。さらに画像認識による劣化の自動検出・計測により点検のスキルレス化が実現し、点検員不足を解消できる。また、同社は、点検時の足場設置工事等の削減や簡易な機材を用いることで省電力化が可能になり、環境負荷低減へ貢献するとしており、今後は、同技術を用いた通信インフラ点検だけでなく、道路、トンネル、橋梁等への活用を進めることで社会インフラ全体の維持管理におけるコスト増加や技術者の不足等の課題解決に貢献し、持続可能な社会の実現をめざすとのことだ。

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ロボスタ編集部

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