東日本電信電話株式会社(NTT東日本)は、製造・物流現場で、マネージドローカル5Gサービス「ギガらく5G」を有効活用するための日本初の実証を自社施設にて開始した。また、この実証は、2023年5月24日~26日に開催されている「ワイヤレスジャパン 2023」の同社ブースで実演デモとして公開している(6月に開催される「Interop Tokyo 2023」でも展示をおこなう予定)。
この実証は、製造・物流現場で、工程変更がおこなわれても柔軟性の高いワイヤレス環境で即時に対応できることが利点。異なるロボットや機器類を無線環境で一元管理することもポイントとなっている。
なお、「ギガらく5G」とは、NTT東日本が提供する本格的な5Gスタンドアローン機能と、事前の手続きから設計・構築・運用までのトータルITO(ITアウトソーシング)をワンパッケージにして、手頃な料金で提供するローカル5Gサービスの商品名称。
製造・物流現場において、複数の機器を「ギガらく5G」で接続して制御
NTT東日本が実施した実証は、製造・物流現場において、「搬送と検品工程」をおこなうロボットなどの複数の機器類と「ギガらく5G」が正常に接続できるかを検証するもの。異なる複数の機器を接続して「製造実行ソフトウェア」によって各種機器類の一元管理をおこなえれば、「ギガらく5G」を使って製造・物流工程に柔軟性と即時性を実現できる、としている。
同社は「製造・物流工程において、ローカル5G環境下で複数の機器を連動させて、柔軟かつ迅速な工程変更をめざす」という点において「国内初」の実証となったとしている。
5G無線通信のケーブルレス環境で工程変更に伴う業務を改善
現代の製造・物流業種においては、さまざまな情勢・状況変化に対応すべく、工程変更が頻繁に行われている。変更の際に現場にとって大きな負担となっているのが、各工程を構成する機器類を繋ぐ「膨大な有線ケーブルの配線・配策」や、それに伴う「配管の新設・撤去」、システム全体の正常性確認等だ。
この実証では5G無線通信のマネージドローカル5Gサービス「ギガらく5G」を活用することで、工程変更にかかわる「ケーブルの配線・配策負担」等にかかる工数や作業を低減することが狙いだ。製造・物流業界における生産性の向上や人手不足の解決に寄与することをめざすとともに、将来的には「ギガらく5G」を活用した製造・物流業界向けの新たなDXソリューションの可能性を見出す、としている。
実証内容、2つのポイント
以下2点の取り組みを自社施設にて実施し、製造・物流工程の変更における工数削減効果等の検証を行う。
1).製造・物流現場の各種機器類におけるギガらく5G対応
2).ギガらく5Gを通じた製造実行ソフトウェアによる各種機器類の一元管理
1).製造・物流現場の各種機器類におけるギガらく5G対応
製造・物流現場において、特に自動化が推進される「搬送・検品工程」を担う機器類(無人搬送車(AMR/AGV)やAIによる外観検査等)を無線通信で制御する。各種機器メーカーと協力し、「ギガらく5G」との接続検証を実施。いずれの機器も無線で動作させることで、フレキシブルな工程変更の実現が可能となる。
「ワイヤレスジャパン 2023」の展示デモでは「ギガらく5G」に接続したAMRを制御し、アームでコンテナをつかみ、AIによる検品のセクションにそれを搬送する様子が実演された。
■デモ展示の動画
なお、実証では下記のように、自動搬送車、AMR搬送システム、手作業工程ボタン、AI検品システムの接続がおこなわれている。
実証機器類のイメージ
製造・物流工程におけるギガらく5G対応検証機器一覧と協力企業名
1.建屋間自動搬送車(株式会社eve autonomy「eve auto」)
建屋間の無人搬送車
2.AMR搬送システム(Industry Alpha株式会社「Akatsuki」)
製造物流ライン間での無人搬送車
3.手作業工程ボタン(Industry Alpha株式会社)
手作業工程の着工・完工・非常停止通知
4.AI検品システム(ブレインズテクノロジー株式会社「Impulse」)
AIカメラによる製品外観の自動検査
会場でも機器類は展示され、説明員に詳細を聞くことができる。
2).ローカル5Gと製造実行ソフトウェアで各種機器類を一元管理
製造物流ライン上の各種機器類の連動においては、機器ごとに仕様が異なり、機器に応じた調整を実施することが一般的となっているが、「ギガらく5G」で全ての機器類を無線収容した環境では、全ての機器を一元的にソフトウェア上で管理・調整が可能となることが期待される。
そこで、この実証では製造実行ソフトウェア(MES)上に、ギガらく5G上で動作する全機器の制御・状態監視信号を入出力するAPI機能や、これら機器制御・状態監視信号を最新状態で保持するデータベース機能、ローコードソフトウェア(Node-RED)によるシステム動作を可視化し、ソフトを改変しやすい保守開発環境を設けて可用性を検証。
この取り組みにより、製造物流現場において、生産管理や品質向上のため製造工程変更が求められる時に、柔軟性・即時性の高い現場改善を可能とする。
会場では製造実行ソフトウェアも展示され、説明を受けることができる。
ワイヤレスジャパン 2023