アドビは、同社ソフト「Adobe Premiere Pro」における、ビデオ制作とプロダクションのワークフローを再考し、プロの編集者がハイペースなビデオ制作に追いつくために必要な、新しい生成AIイノベーション機能を2024年4月16日に先行公開した。
Adobe Premiere Proに今年登場する新しい生成AIツールにより、ユーザーはシーン内のオブジェクトの追加や削除、また、既存の映像クリップ拡張など、全てのビデオ編集作業を統合できるようになる。
これらの新しい編集ワークフローは、Adobe Fireflyモデルファミリーに加わる新しいビデオモデルによって強化される。同社は、イメージング、ビデオ、オーディオ、3Dなど深い専門知識が必要となるカテゴリーでAdobe Firefly AIモデルの開発を続けており、これらのモデルをAdobe Creative CloudとAdobe Expressで密接に統合していく。
また、「インタラクティブなフェードハンドル」、「クリップバッジ」、「新しいクリップカラーと波形デザイン」、「AI搭載のカテゴリのタグ付け」など、現在ベータ版で提供している Adobe Premiere ProのAIを活用したオーディオ機能を5月に一般提供開始することも同時に発表した。
■【動画】Generative AI in Premiere Pro powered by Adobe Firefly | Adobe Video(英語)
これからの進化の方向性
同社は、サードパーティの生成AIモデルをAdobe Premiere Proなどのアドビのアプリケーションに直接取り込むというビジョンを計画している。Adobe Creative Cloudには、常に豊富なパートナーとプラグインのエコシステムがあり、Adobe Premiere Proは、今後あらゆるワークフローに適合する最も柔軟で拡張可能なプロフェッショナルビデオツールとして進化していく。同社のユーザーは、次世代のエンターテインメントやメディアを制作・編集する際に、選択肢と無限の可能性を求めている。
そのため、今回紹介した内容としては、将来的にプロのビデオエディターがいかにしてAdobe Premiere Proに統合されたOpenAIとRunwayのビデオ生成モデルを活用し、プロジェクトで編集するためのBロールを生成することができるかを示し、またPika Labsで生成拡張ツールを使用して映像クリップの最後に数秒を追加する方法も紹介。Adobe Fireflyと様々なサードパーティモデルを搭載した新しい生成AI機能を提供することで、Adobe Premiere Proで日常的に使用するワークフローを離れることなく、さまざまな新機能へのアクセスを可能にする。
アドビ クリエイティブ製品グループ担当シニアバイスプレジデント Ashley Still氏
アドビは、ビデオ制作とプロダクションのワークフローのあらゆるステップを再考し、クリエイターが彼らのビジョンを実現するための新たなパワーと柔軟性を提供しています。生成AIとイノベーションをAdobe Premiere Proのワークフローの中核に深く組み込むことで、映像クリエイターが 作品制作に集中できるようにしつつ、日々直面する本当の課題を解決します。
Adobe Premiere ProにおけるジェネレーティブAIの未来
同社は、Adobe Fireflyの新しいビデオモデルにより強化された、今年後半にAdobe Premiere Proに登場する生成AIワークフローのテクノロジーを先行公開。さらに、序盤の「スニーク」では、プロの編集者が将来、Open AIやRunwayのビデオ生成モデルを活用してBロールを生成する方法や、Pika Labsと生成拡張ツールを使用して映像クリップの尺の最後に数秒映像フッテージを追加する方法を紹介している。
Generative Extend(生成拡張)
映像フレームをシームレスに追加してクリップを長くすることで、編集のタイミングを完璧に合わせたり、スムーズなトランジションを追加したりするのが簡単になる。この画期的な技術は、プロのエディターが毎日直面する一般的な問題を解決し、編集の微調整に必要な追加のメディアを作成したり、映像クリップを追加して音声のビートに合わせたり、トランジションをより適切にカバーしたりすることを可能にする。
Object Addition &Removal(オブジェクトの追加と削除)
動画内のオブジェクトを選択してトラッキングし、置き換えるだけで、不要なオブジェクトを削除したり、演者の衣装を変更したり、絵画や机の上の写実的な花などのセットの装飾をすばやく追加したりできる。
Text to Video(テキストから動画生成)
Adobe Premiere Pro内で直接、新しい映像を作成できる。プロンプトにテキストを入力するか、参照画像をアップロードするだけ。これらのクリップは、アイデア出しやストーリーボードの作成、実写映像を補強するためのBロールの作成に使用可能だ。
同社は、業界標準のツールとシームレスなワークフローを提供し、ユーザーがあらゆるプラットフォームのあらゆるソースからのあらゆる素材を使用して、ユーザーが想像するや否や即クリエイティブを作成できるようにすることを目指しており、Adobe Fireflyやその他の特殊なAIモデルに関わらず、アドビアプリケーション内から統合プロセスを可能な限りシームレスにするよう取り組んでいる。
責任あるイノベーションにコミットして独自のAIモデルを開発し、サードパーティのモデルを同社のアプリケーションに統合する際に、アドビの安全基準に一貫性が保たれるよう、AIが学習したことを適合する予定だ。
AIを活用したオーディオ機能がAdobe Premiere Proで一般提供を開始
いくつかのAdobe Premiere ProのAIを活用したオーディオ機能は現在ベータ版で提供されているが、5月から一般提供され、エディターがサウンドを正確にコントロールし、品質を向上させるために必要なすべてを提供する。最新機能は以下の通りだ。
インタラクティブなフェードハンドル
エディターは、クリップハンドルをドラッグするだけでオーディオフェードを作成できるため、カスタムオーディオトランジションをこれまで以上にすばやく作成できる。
オーディオカテゴリのタグ付けができる新しいエッセンシャルサウンドバッジ
AIがオーディオクリップを会話、ミュージック、効果音、環境音として自動的にタグ付けし、新しいアイコンを追加するので、エディターは作業に適したコントロールにワンクリックで即座にアクセス可能だ。
エフェクトバッジ
新しいビジュアルインジケーターにより、エフェクトがあるクリップを簡単に確認でき、新しいエフェクトをすばやく追加、また、シーケンスからエフェクト・パラメータを自動的に開くことができる。
タイムラインの波形のデザインも一新
新しく華やかな配色でシーケンスが読みやすくなり、波形はクリップのトラックの高さに応じてインテリジェントにサイズ変更される。また、不要なノイズを即座に除去し、録音状態の悪いダイアログクリップの品質を向上させる、AI搭載の「スピーチを強調」ツールは今年の2月から一般提供を開始している。
アドビ株式会社