慶應義塾大学は、CYBERDYNEの自立支援ロボット「装着型サイボーグ HAL」を活用した介護予防プログラムに関する共同研究の論文が「Experimental Gerontology」に掲載されたことを公表した。
共同研究によって、筋肉量の減少および筋力が低下する症状のサルコペニアに対し、装着型サイボーグ「HAL 腰タイプ」を用いた運動プログラムによって、通常歩行速度が33%増したことがわかり、短期間でサルコペニアの改善をもたらすことが明らかになった。(冒頭の画像:トレーニングの様子 論文より抜粋 © 2024 Saito et al. under the CC BY license)
神奈川県立がんセンター臨床研究所、慶應義塾大学、湘南ロボケアセンターの共同研究
神奈川県立保健福祉大学ヘルスイノベーション研究科は、未病コンセプトに基づいて、社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践している。
その一環として、神奈川県立保健福祉大学の成松宏人教授らが実施した、神奈川県立がんセンター臨床研究所、慶應義塾大学、湘南ロボケアセンター株式会社との自立支援ロボット「装着型サイボーグ HAL」を活用した介護予防プログラムに関する共同研究をおこなった。その論文がExperimental Gerontologyに掲載された。
筋肉量の減少および筋力が低下する症状であるサルコペニア
加齢により心身が疲れやすく弱った状態であるフレイルと、フレイルの原因となる筋肉量の減少および筋力が低下する症状であるサルコペニアは、高齢者において悪化するリスクが高くなることから、サルコペニアを改善するために効果的な運動介入を開発することが求められている。
そこでこの研究では、装着型サイボーグの「HAL 腰タイプ」に着目、これを用いた運動プログラムの効果を検証した。
通常歩行速度の変化量は平均で33%増に
フレイル、プレフレイルと診断された高齢者、79名を対象に、ランダム化比較試験を実施した。具体的には、5週間にわたり、「HAL 腰タイプ」を活用した運動プログラムに参加してもらい、どのように改善するかを検証した。 その結果、77名がプログラムを完了。「HAL 腰タイプ」を活用した実施群では、対照群と比較して、通常歩行速度の変化量が平均で33%増の+0.35 (0.04) m/秒と、統計学的に有意な改善が認められた。(()は標準誤差)
まとめ
「HAL 腰タイプ」を用いた5週間の運動プログラムは、短期間でサルコペニアの改善をもたらすことが明らかになり、要介護のリスクの高い高齢者にとって、地域において自立した生活を続ける有望な選択肢となる可能性が示された。
この記事を読んだ人におすすめ
- 自律移動ロボット「カチャカ」歯科診療所向けパッケージ「デンタルプラン」発売 治療器具等の無人搬送で歯科医院のニーズに対応
- 高齢者向け見守り服薬支援ロボット「FUKU助」スギ薬局の先端DX店舗に期間限定で体験展示
- 就労困難な人が分身ロボットで高齢者と会話 高齢者のQOL向上と障がい者の就労支援を実践 オリィ研究所とシューペルブリアン
- 「鈴鹿8耐」レースでアシストスーツが活躍 ガソリン補給などピット作業の負担軽減 イノフィス
- 埼玉県「令和6年度埼玉県ロボティクスセミナー 介護・福祉編」開催 「SAITAMAロボティクスセンター」整備と介護福祉ロボット開発支援に伴い
- 視覚障がい者向け自律型誘導ロボット「AIスーツケース」を大阪・関西万博で実証実験へ 万博特別モデルで運用 日本IBMなど
- 対話型AIキャラクターがシニア向け介護施設の入居者の話し相手に 長野県内7施設で実証実験を開始
- 高齢者施設で分身ロボット「OriHime」の操作や会話の実証実験を開始 高齢者が操作、遠隔社会参加の可能性と効果を検証
- デジタルヒューマンと生成AIで「感情推定」するアバターシステム 認知症予防や介護現場、医療や教育分野も視野に テックファーム