NTTファシリティーズがデータセンターの冷却システムの検証施設の構築へ 生成AI時代の「チラーレス液冷空調」などを検証

NTTファシリティーズは、データセンターの冷却システムの検証施設として、「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」の構築を開始すると明らかにした。

完成は2025年4月を予定しており、生成AI向けデータセンターにおいて主流となる液冷サーバーを利用したデータセンターの効率的な冷却システムをはじめとした、多様な空調機器を業界に先駆け検証するとともに、さまざまなデータセンター向け空調機器の実機展示を行う。


生成AI対応のデータセンターはチラーレス液冷空調が主流に?

生成AIに対応するデータセンターでは、高性能・高発熱のGPUサーバーを効果的・効率的に冷却する仕組みが求められており、冷却液をサーバーに直接送り込み、コールドプレートで冷却する液冷方式サーバーの導入が今後進んでいくことが予想される。液冷方式サーバーの冷却システムは、サーバーへ冷却液を送り込むCDU(Coolant Distribution Unit)とCDUへ冷却液を供給する熱源機器の組み合わせにより構成される。

これに対し、現在のハイパースケール・データセンターは、排熱された空気を大量の水により冷却するチラーを用いた水冷方式が主流となっている。また、チラーはデータセンターの空調設備の中で最も消費電力が大きいという特徴があるが、液冷方式サーバーに供給する冷却液は空気を介さずに直接送り込むため、液体の温度を高く設定できる。このため、液冷方式サーバーの冷却システムではチラーを用いる必要がなくなり、消費電力を大きく低減することが可能である。

こうした背景から、生成AI対応のデータセンターはチラーを必要としない空調方式(チラーレス液冷空調)が今後普及していくと予想されている。チラーレス液冷空調の熱源機器として、夏季は冷却塔として運転し、冬季は散水せずに外気により冷却するドライクーラーとして運転することで、一年間を通じた消費電力および消費水量を低減するハイブリッドドライクーラーが期待されている。


チラーレス液冷空調システムなどを検証

NTTファシリティーズは、こうしたチラーレス液冷空調をはじめとしたデータセンター向け空調機器の性能検証や実機展示、技術者育成を目的として、NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)内に「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」を構築することとした。
「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」では模擬環境を構築し、NTTファシリティーズが取り扱う空調機器の性能検証や各種空調の不具合発生時の原因究明、構築・保守技術者の育成のほか、データセンター冷却用空調機の実機展示を行う。尚、完成は2025年4月を予定している。


「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」の概要


「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」にはNTTファシリティーズが取り扱う10種類の空調機器の実機を設置するとともに、AIデータセンターを想定した模擬負荷装置(空冷分420kW、液冷分216kW)を設置し、すべての空調機器が実際に運転できる環境を構築する。

Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)は、以下の3つのエリアから構成される。

1:データホールエリア

STULZ社製スキッド型CDU

データホールエリアに設置されたサーバラック架列には、CDUから供給する冷却液による液冷サーバーを模した模擬負荷装置の冷却(液冷方式)に加えて、さまざまな気流方式による冷却(空冷方式)を行うことが可能。
また、データホールエリア内には、小規模な生成AI用基板向けにパッケージ化された「スキッド型CDU」や高発熱のGPUを搭載したサーバーを冷却する「リアドア型空調機」を設置する。

2:空調機設置エリア

(左)水冷壁吹型空調機、(中央)水冷横吹型空調機、(右)外気冷房併用型空調機

空調機設置エリアには、当社パートナーのSTULZ社(本社:ドイツ)製の「水冷下吹型空調機」、「水冷壁吹型空調機」、「水冷横吹型空調機」および、直接外気冷房を併用可能な「外気冷房併用型空調機」が設置される。また、現在STULZ社と開発中の、当社が構想する「次世代型データセンター」に最適な日本市場向けCDUも設置される計画である。

また、空調機設置エリアには、データセンター構築・保守技術者の育成や、データセンター事業者様との共創の場としてラーニングエリアを設置する予定。


ラーニングエリアのイメージパース
3:熱源機器設置エリア

ハイブリッドドライクーラー

熱源機器設置エリアには、当社パートナーのSMARDT社が提供する最新型オイルフリー空冷チラー「AFシリーズ」(2025年以降国内販売開始予定)に加えて、CDUと共にチラーレス液冷空調用商材のコア商材として期待される、Evapco社製のハイブリッドドライクーラー「eco-ATWB-H」を設置する予定。

なお、データホールエリア、空調機設置エリア、熱源機器設置エリアに設置予定の空調機器は下記の通り。


設置予定の空調機器

今後の計画

「Products Engineering Hub for Data Center Cooling(仮称)」は、データセンターの構築や設計、施工をお考えのデータセンター事業者に対して多様な空調機器の実際に運転している様子をみることができるショールームとしても活用する予定。

また、構築後もNTTグループをはじめとしたデータセンター事業者様のニーズに応えるべく、継続的にリニューアルを行いながら、最先端の空調機器の運用の信頼性やさらなる省エネ性能向上に向けた検証を続けると共に、構築・保守技術者の育成を行っていく。

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ロボスタ編集部

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