NTTとNTTデータグループは、イギリスおよびアメリカ国内においてNTTグループ保有のデータセンター間をIOWN APNで接続する実証を行った。
本実証では約100km離れたデータセンター間をIOWN APNで接続し、データセンター間の通信を1ミリ秒以下の低遅延で実現した。これは、同一のデータセンターと同等の統合ITインフラとして機能するものであり、分散型リアルタイムAI分析や金融分野への適用可能性を示すもの。
今後は顧客を交えたビジネス実証を計画しており、海外でのIOWN APNを活用したデータセンタービジネスの早期展開をめざすとしている。
1:IOWN APNを活用したデータセンタービジネスのグローバル展開に向けて
昨今では二酸化炭素排出量の制限、用地不足などを理由に、都市部でのデータセンター建設が困難となっている地域が多く、郊外にデータセンターを建設せざるを得ないケースがある。地理的に離れたデータセンター間を接続する場合、データセンター間通信における遅延が非常に大きくなってしまうため、顧客の低遅延で接続するというニーズに応えられないという課題がある。
このような環境において、データセンター間接続にIOWN APNを活用することで、都市部のデータセンターと郊外のデータセンターをまるで同一のデータセンターであるかのように活用できる統合ITインフラの構築が可能となる。それにより、リアルタイムAI分析や金融分野など低遅延性が強く求められるユースケースにおいても、顧客のニーズを満たすことができる。さらに、IOWN APNではダークファイバを新設することなく波長追加による接続回線のご提供ができるため、顧客のサービス申込みから接続回線のご提供までの時間を大幅に短縮することが可能であり、顧客の要望に迅速に応えることができる。
日本国外において、NTTデータグループのデータセンター間をIOWN APNで接続して統合ITインフラを提供するにあたり、現地の複数のダークファイバ事業者との連携が必要となる。ダークファイバ事業者ごとに提供される光ファイバの特性等が異なるため、それらの特性等に応じてネットワークを設計・運用することが必要となる。ファイバ敷設状況、遅延・遅延ゆらぎなどの情報を収集することで、日本国外においてもNTTデータグループのデータセンター間をIOWN APNで接続した統合ITインフラを提供することが可能となる。
2:実証実験の概要
イギリスではへメル ヘムステッドのHH2とダゲナムのLON1の2つのデータセンター、アメリカではアッシュバーンのVA1とVA3の2つのデータセンターをNEC社製のAPN機器で接続し、両データセンター間の往復遅延および遅延ゆらぎの測定を行った。
実証実験の結果、400Gbpsの通信において両データセンターを1ミリ秒未満の遅延、1マイクロ秒未満の遅延ゆらぎで接続できた。イギリスでは、本実証と同程度の距離があるデータセンター間通信における遅延が2ミリ秒を超える。また、一般的なレイヤ2スイッチにより構成された従来のネットワークでは数マイクロ秒から数十マイクロ秒の遅延ゆらぎが発生する。
大手クラウド事業者では同一のデータセンターとして扱える条件が2ミリ秒以内と規定されており、今回の計測により一般的なクラウドアプリケーションで想定されている遅延・遅延ゆらぎを大幅に下回る結果を確認できた。
イギリス | 遅延:0.893ミリ秒 / 遅延ゆらぎ:0.035マイクロ秒 |
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アメリカ | 遅延:0.062ミリ秒 / 遅延ゆらぎ:0.045マイクロ秒 |
この結果から、エンタープライズユーザーに対しては、リアルタイムAI分析処理や金融分野における郊外型データセンターとして、海外においてもNTTデータグループのデータセンターが活用されることが期待できる。また、海外においても、クラウド事業者に対しては、都市部と同一拠点相当のデータセンターとして、NTTデータグループのデータセンターが活用されることが期待できる。
3:今後の展開
NTTおよびNTTデータグループは、世界各地の事業部門とともに、早期のビジネスの立ち上げをめざし、金融分野をはじめ分散データセンターのユースケースとなる分野における顧客との共同実証の実施を検討している。実際の業務に求められる要件を、IOWN APN接続による分散データセンターで十分に満たせることを、顧客とともに確認していくとしている。
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